表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公は脇役  作者: 乗ると酔う子
2/5

『主人公』が遭遇したりする陰口現場

 給食後の掃除が終わったばかりで人が少ない中、男子生徒たちが公然の陰口を叩く教室。主人公は読書に勤しんでいる。本に熱中している。夢中で小説を読み込んでいる。

 そんな主人公へ、唐突に陰口グループの一人が話しかけた。


「なあ、お前はアイツどう思うよ?」

 発言の内容も極端に説明に欠いていて、要領を得ない。相手に頓着していないというか、話を聞いていたことが前提に思える。

「誰だよ」主人公には〝アイツ〟がわからないらしい。読書中だからか反応は素気(すげ)ない。

木本(きもと)だよ」

 主人公は名前を出されてもわからなかったようで、やっと本から目を離し「……なんクラス?」と首をかしげた。

「同じクラス」「マジか」

 少し間をおいて、思い当たったというふうに目線を上げると「なんか挙動不審でコミュ症っぽいやつか。」と返す。こき下ろしたように思えるがおそらく他意はない。

「それな!」話しかけた一人は人差し指を立てながら、陰口グループは全員で大笑いした。主人公の論評はお気に召したようだ。

「ゲラゲラ笑うなよクソうるさい」と主人公が文句を挟むも、当然ながら陰口グループに気持ちを汲む気はない。むしろ「つれねえな~」などと絡む始末。

 廊下に〝木本〟本人がいるのをわかった上で悪口を言う連中なのだから、まあわかりきったことである。おふざけであり、女子ほど本気(ガチ)ではないものの、結構陰湿だ。


 それはさておき、主人公の読む小説はプロローグ終わりに差し掛かっていた。


『──そんな声が聞こえて、少年は静かに決意した。同級生が行き交う廊下で、自分を陰キャだと嘲笑(わら)う奴らを見返してやると!高校デビューして見返してやるんだからな━━━━っ!と、教室に背を向けて廊下を走り出した。今日が図書委員の当番であることを思い出したためだ。〔プロローグ末尾〕』


 ──なおタイトルは『いじメッ!』。

 おどろおどろしいタイトルのデザインと表紙絵のタッチが内容とミスマッチだ。

 昨日の帰りがけに購入したものであるが、主人公はいじめを本格的に鬱々と描写するものだと思っていたので、やたらとコメディチックで明るい内容は予想外もいいところ、驚愕に値した。

 ゆえに、裏表紙のあらすじを確認すべく本をひっくり返した。あらすじは店舗特典で見えなかったのも勘違いに拍車をかけたのだろう。

 ちなみに『廊下を走り出した』を読むと同時、廊下を走る足音と、それをからかいまじりに注意する声がしたものの、主人公の耳には入らなかった。


『同級生の心ない陰口で心に傷を負った主人公は高校デビューで名誉挽回をはかる!だが受験を目前にした主人公のコミュニケーション能力は、〝盟友〟(主人公談)にさえ馬鹿にされてしまうほどで…………!?〔裏表紙あらすじ〕』


 あらすじを見てなんとも微妙な顔をした。


 ついに主人公はあとがきまで確認し始めた。

 心境は大体、(この恐ろしく〝合ってない〟ポイントにふれてないかな……)といったところだろう。


 まずあとがきの冒頭には購読について感謝、処女作がどうたら、林──『いじメッ!』の主役だ──がコミュ症かはわかりかねます(笑)などと。

 次へ繰った。林が早くもヒロインといい雰囲気に……という文を読むことで、主人公の動きが止まる。数秒の間は凍りついたように固まっていた。前ページの(米印)と〝ネタバレ〟という言葉、警告などを見逃したようだ。


──キーンコーンカーンコーン……


 そして無情にもトドメを刺しにくるチャイム音。次の授業は移動教室だ。

 授業開始直前(ギリギリ)まで読んでいることができない。


 主人公はやにわにくたびれた表情でうなだれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ