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第5話 良い子、悪い子

 そして週末。駅裏の喫茶店エルム。

 冬子といつものお茶会。

 恵子が秀樹との睦み事の話しをすると、冬子は頭を抱えて激高した。


「もう、知らん。なんなの!? その最低男!」

「やめてよ。泣きそう」


「あたしだって泣きそうだよ。もう、ホント体大事にしなよ」

「トーコ、ごめん」


「もうさ、安心させてよぉ~。あんたのこと考えると仕事も進まなかったりすんだよ?」

「そっか」


「もう。……ハァ」

「…………」


「……ホント最低!」


 冬子がまた席を蹴って帰りそうな雰囲気になった。


 恵子は、また秀樹の評価が下がってしまう。本当は優しくて大人な人なのに、たった一つで評価が下がるなんて、自分の言い方が悪いんだろうな。と思い、必死に違う話題を考えた。


「そ、そいえばさ。ウチの部署の新人君。かくかくしかじか──」


 その話題になると冬子の目の色が変わった。


「へー! いいじゃん」

「いいって~。ホンキかどうかわかんないよ?」


「ホンキ。じゃない?」

「髪の色も、テゴマスのまっすーみたいだったのにさぁ~」


「すごいねぇ。愛の力を感じるじゃない」

「そぉーかなー?」


「自分のポリシー捨ててんでしょ? ましてや、アンタのその彼氏が入社以来言ってたのを聞かないで、アンタが言ったとたん聞くなんてさー」


 ポリシーと聞いてハッとした。

 そしてなるほどと思った。

 秀樹に言われても止めなかったことを、自分が言ったら止めた。


「うーん。そうだよねー」

「いずれにしろ、今の男よりずっとず~っといいわ」


「んー。だよね~」

「でも踏ん切りはつきません。っと」


「だってすっごい軽すぎんだよ? 女の子もモノ扱いするし」

「聞きましょう。」


 冬子はコーヒーを置いて前のめりになりマジメに聞く姿勢をとった。


「今まで付き合った人は0なんだって。でも、友達とも最後までいっちゃう感じ」

「まぁー、そういう人もいるよね?」


「話し方もすっごい軽いの。まだ10代って感じだよ。あんなんでいいのかなぁ?」

「ハイハイ」


「絶対、あたしだけじゃなく、他の人にだって言ってるって。そんでモノにした後は付き合ってませんでしたっていうつもりなのよ」

「そーでしょーかねー?」


「もう、大嫌いなタイプ。ガキすぎて。多分ヤリ目」

「つまり、エッチしたいだけっていう? そんなんで、そこまで変えるか??」


「なんにしろ、今の若者は怖い」

「いくつ違うの?」


「え? ふたつ」

「2コ下かい! もっと違うのかと思ってれば」


「でも、体感的にはもっと下!」

「知らん。そんなの!」


「ふふ」

「ふ。はは」


 冬子も笑いながら恵子の顔を見た。


「あのさー。無理やり悪いとこ探してない?」

「え?」


「ケイコは彼氏と継続しようと良いとこしか探してない。後輩君のは、恋に落ちないように悪いとこしか探してない。どう? 違う? 告白されてんでしょ? 気持ちはちょっとピクッとしてんじゃない? それに、ヤリ目っつったら、アンタの彼氏だって変わんないと思う。今までの話しからすると」

「……ア。ウン。……かも」


「それが問題よ。第三者の目で見て見りゃいいじゃん」


 話がまとまり、その日のお茶会は終わった。

 恵子は家に帰ってその話を思い出し、冷静に考えることにした。


「ホント、冬子の言う通り。図星。良いとこと悪いとこか。杉沢クンはホントにいい男だと思う。格好もいいし、男前。体格だっていい。身長なんて、びよーんて見上げる感じだもんね。トークも上手。黙ってても女の子は寄っていくと思う。一生懸命だし、誰からも好かれる。ヒデちゃんは……。すぐスネる。スネると長い。性欲が異常。独占欲が強い。優しいし、大人……。抱きしめられるとあったかい。……好き。……愛してる。奥さんと別れてくれるっていった。それなら待っていたい。ヒデちゃんと一緒に未来を歩きたい」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 次の日。会社。

 秀樹は休み中は家族と過ごさなくではいけない。

 休み明けで、はじめて秀樹と会う。

 普通の挨拶をして、席に着く。


 月曜なので、みんなぞろぞろと営業に出ていった。

 課長は会議。

 たまたまアポの時間が午後な恵子と秀樹で二人っきりとなっていた。


 内線が ポポポ となる。


 ディスプレイにうつる内線は「佐藤係長」。

 秀樹だった。


 恵子は何食わぬ顔で受話器をとった。


「はい。営業一課です」


 受話器と隣りから声がする。


「この前は無理やりでゴメン。反省してる」

「いえ、大丈夫です」


「今でも痛い?」

「……少しだけ」


「今日も行ってもいいかな?」

「はい。ですが、まだ例の件が終わってません」


「あ、生理? いいよ。行くだけでいいんだ」

「そうですか。わかりました」


「この前のつぐない。ね?」

「了解です。では、よろしくお願いします」


 カチャ。

 二人して受話器を置いた。


「ふふ」

「隣なのに内線?」


「まぁね」

「楽しみ」


「そっか」

「もうやめてよ?」


「はーい」

「んふふ」


「ゴメン。ゴメン」

「許してあげます!」


「やった!」


 恵子の胸の内は小躍りしたいくらいだった。

 イレギュラーな間髪入れずの訪問だ!

 今日は、夕食の献立を考えた。

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