表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

偽老人と運転手~探すの巻き~

カランカラン~!と小気味良い、鈴の音が“喫茶・ロビン”中に響いた。

店主の、マハン・ロビンは、「誰だ…?」と思い、ドアの方に向かった。



「お主は…。シュンではないか!どうなさった!?」



顎に白髪を生やし、頭にとんがり帽子を被った、老人が驚愕の目で俺を見た。

彼こそが、この店の店主で俺の幼馴染とやらだ。



「あははは……。ま、ちょっとね」

俺は苦笑いをして、詳しい事は容易に言わない。


「怪し過ぎますのぉ。こんな、下町(イーストエンド)(ワシ)(キッサ)に何の用ですか?」


店主は、老いた目を細め、シュンを観察した。


「誰も居ない…様だな。今から、閉店する事はできるか?」

「ん~。ま、出来ない事はないが…。そんな重要な事であるのなら、反対側にある、“小物店・マハン”の店主に相談すれば良いじゃないか」

「どっちもお前の店だろ?」

シュンは、呆れ顔で店主を見る。



彼らは、幼い頃から何時も一緒におり、相手の全てを知っている。

敵に回しては、いけないランキングは、お互いナンバーワンだろう。



「まあ…そうじゃがのぉ~。向こう側に、お前の良い相手になりそうな、(やつ)をおいてるんじゃがなー。どうする?」

「何がだ?」

鋭い目つきで、シュンはロビンを睨みつける。


その目は、



“さっさと、本題に入りたいんだけど??”



と言っているようだった。

しかしそんな目つきをロビンは全く気にせず、話を続ける。


「相手を変更するなら、今のうちだぞ~!」

「んだから、俺はお前が相手でいいんだよ…」

「こんな、年老いた爺さんでいいのか?」

「誰が爺さんだ。さっさと元に戻れや!」

「ちぇっー。メンドクサイノー」


彼は、ロビンは、階級を持っていない魔法使いだ。

故に自分の姿も変身できたりするのだ。



ーーーーーーーーーー


ーーーーー


ーー



と、まあ、他愛のない話を何度かして、ロビンは渋々、話を聞くことにした。


「で?本題って何じゃ?」

「……。お前さあ、そんな姿で老人の口調って、恥ずかしいって思わないわけ?」

「まーったく、思わんのぉ」

「あっそう!なら良い。


“魔法使いで、上級階級の者が、王子の命を狙っている”


という、実にくだらない噂を俺は耳にした。それで、何故か、王の命令によって、探すことになったんだけど。この噂、本当か嘘か、分かるか?」


ロビンは、考える仕草をして、シュンの目を真っ直ぐ見た。


「その噂を、知ってるかどうかも分からない相手に、よくそんな事が聞けるのお。結論から言わせてもらおうか。その噂は、《嘘》じゃぞ」


「やっぱりそうか。ならもう一度、一から探さないといけないか…」


あーあー!という諦めた雰囲気を漂わせているシュンとは別に、

ロビンはジッと物言いたげな目をしていた。


「シュン。その噂、《本当》と言ったら、どうするつもりだった?」


「んー。まあ、この下町(イーストエンド)から探すかな~」


「城内の誰にも言わずに?」


「勿論。報酬金を持っていかれたら困るからな…ってなんだ?噂は《本当》なのか??」


少し嬉しそうにするシュンとは別に、ロビンはまたもや難しい顔をした。


「ここはお前を信じるか…。


ああ。お前の察した通り、噂は《本当》だ。


ただし!間違いが有る」


「お前って、ホント、口軽いのか重いのか、分からないな…。

誤りって、どこに?」


「はああぁぁぁ。シュンは、王子に死んで欲しいのか?」


「どーでも良い」


と言うと、シュンの目は、一瞬死んだ魚の目のようになった。


「あ、アッサリしてるね。俺、お前のその性格、好きだぜ?」


「気持ち悪い。そして急に口調を変えるな。じゃあ、王子は死んでないってことか?」


「そうだ。そしてこれがお前に対しての、忠告兼アドバイスだ。


“年齢と見た目にに囚われるな”


お前なら、そんな事はないと思うけどね」


「精一杯、忠告兼アドバイスを活用させて頂くよ~!」


カランカラン~!と、“喫茶・ロビン”に鈴の音が響き、店内には、店主を除き誰も居なくなった。




「本当に、気をつけてよね…。


“神”よ…。我らの(あるじ)よ根源よ……。私の親友に、手加減して下さいよ。


王子、ちゃんと家に帰って下さいね…」




誰に言うわけでもなく、ロビンはそう、小さく呟いた。





ーーー


「うんうん!大分、仕事に慣れてきたね。この調子だと、今までの儲けより、約二倍になって(オレ)の生活も、楽になるかも…??うへへへっっ」


「き、気持ち悪い!ところで、もう人通りも少なくなってきたし、家に帰りませんか?」


王子は、(オレ)に向かって、丁寧語で話しかけてきた。


「んー。そうだね!じゃあ、帰りますか~。…よいしょっとー」


足元に置いてある、新品で丈夫なカゴを持ち上げた。その中には、十数個のマッチが入っている。


「あ……。仕事には慣れてきたけどあんまり今日は、売れなかったんだ…」


ポツリと(オレ)は、悔しく寂しく思い、そう呟いた。


その途端、王子(バカヤロ)は、「ひいっ!あ、え!?」と意味不明な単語を連発させた。

「どーしたの?」


(オレ)は精一杯、女の子のフリをする。


最近、素が出てきてるから、気を付けないといけなくなってしまったのだ。ったく。この王子(バカ)さえ、来なかったら、完璧な女子になれるのに…。


でも、と(オレ)は考える。


王子(こいつ)が、来なかったら、(オレ)は貧乏生活のままだったんだろうな~。





「しゅ、シュシュシュ…、シュン!?!?」




うるせえなぁ。汽車かよ、おめーは。


ってか、“シュン”って名前。どっかで聞いた事があるような…??



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ