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王様と侍女~悩みの巻き~

王が王子を探し出して約一週間後。

不吉な噂が下町では大量に流れていた。


ーーーーー



「ユリアン…。どうしよ。もうこのまま帰ってこないのかな。そんなに、息子はユリアンを奪われたことを根に持ってんのかなぁ」

王はしょぼん…としながら、自室で自分のメイドに聞いた。


「王…」


聞かれたメイドのユリアンは、呆れ顔でそう呟き、むすっとした顔で淡々と応えた。


「それは絶対に、ないと思いますよ。だって、王子が帰ってこないのは、あの下町(イーストエンド)にいる、結構可愛い女の子が気になっていたからじゃないですか。それに私は、あの変態クソ野郎馬鹿王子に好きになってもらいたくないですし、むしろ嫌いになってきてたら良いなと思ってましたし」


目が死んだ魚のようになり、闇が濃くなり始めた彼女を、王は慌てて喋るのを止めた。


「ゆ、ユリアン…??それは私の息子をバカにして…るよねぇ?ま、いいけど。はっきり、元側近(&世話人)の君の口から、彼の客観的な評価を得れて。はあぁぁ。帰って来たら、勉強させないと。あと、お嫁さん探しもね。じゃ、弱音はここまでにしようか。実は、君に聞きたいことが私にはいくつかあってね。えーっと……。


まず一つ目は、君の魔法使いのランクが“天女”というのは本当なのか。

二つ目は、本名は何ていう名なのか。

三つ目は、私の側室にならないか。


の三つだよ。一つずつ答えてくれると、私は助かるんだけど…」


彼の目は、彼女を凍てつかせた。そして、本当の真実を話さなければならないと、彼女の直感が激しく警報を流していた。


「は、い…。我が主人様。私は、わたしは…………」



ーーーーセミカ・ユリ・ナナト


『男みてぇな、名前してんな、お前』

『本当は、男だったりしてぇ。アハハハハっっっ!!』


女の子の下品な笑い声や、男の子の罵倒の言葉の数々…。

だれも、私の事なんて見てない。彼らが見ているのは、私の体の一部の“名前”だけ。

名前のせいで、私は幼少期から成人するまでいじめられていた。


成人してからの偽りの名前は“ユリアン・アシュハ”。


 可愛い名前にしようと試行錯誤して、私が決め、作った仮の名前だ。魔法使いは、成人になると自分が住んでいた土地から一度、出ないといけない。だから私は、このチャンスを気に名前を変えようと思っていた。


 しかし、親からもらった大切な名前は決して変えてはいけないと、魔法使いの師匠に成人の日に言われた。だからせめて、仮の名としてこの土地で、この新しい名前を使い続けると言われた。そして私はその言いつけを守ってきた。今まで、ずっと。


私は、魔法使いの下っ端だったが、つい最近、師匠が亡くなり、私は“天女”という素晴らしい地位をもらった。そして、師匠の“全て”を受け継いだ。


「ふーん。じゃあ、あの噂は君じゃないんだな?」

「噂…ですか?ごめんなさい。噂すら聞いたことがありません…」

「あ、良いんだよ。内容はこんな事だ。


『とある魔法使いのトップが、この国に居座りついている。その者は、王子を殺した』


っていうのだ。君は魔法使いだし、それなりの地位にいると聞いたからね。ちょっと気になってて。

違うなら良いんだよ。違うなら、ね?」

「王、私を疑っているのですか?私があの、殺すにも価値がないほどの王子を殺したんじゃないかって…!殺してません。証明が欲しいのであれば、シュンをここに呼んで下さい!!」

「シュンには、とうの昔に聞いた。君がこの城にまだ来てない時にね」

「なんで、私が来てないのに分かるんですか?おかしいですよ。シュンは、普通の運転手なのに…」

「ただの一般人の運転手を、私がお気に入りの人にすると思うか?」

その問いに、ユリアンは即答した。

「はい!」

「君は私をそんな人だと思ってたのか!?」

「もちろんです」

「ふんっ!いいよ、別に。どーせ、私は使用人たちの楽しそうな会話にもいれてくれないつまらない人間なんですよーだ。ふんっ!」

「子どもですね。幼稚園児ぐらいの…。で、シュンは一体何者なんですか?」

「あ、ああ彼?彼は、先のことが見通せる者だよ」


ーーーーー


彼が超能力者だと、誰が考えようか。

世界最後の、たった一人。唯一無二の、超能力者だと…。


国王の隠れスパイでもある彼は、今、一体何をしているのだろうか?


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