王女の侍女と国王の侍女~悪魔の微笑みの巻~
「あの輩は、いつになったら帰ってくるんだーーー!!!」
王子の侍女が、馬鹿にでかい声で城外に向かって叫んだ。
「ユリアン!またそんな事やって…。城の評判が落ちたらどうするの?貴女の責任になるよ。王子の身勝手な行動には、王女の召使の私達も呆れるわ。その行動については、国王も許してないよね。でも確か…、貴女とシュウについては許してたよね。良かったじゃない!死なずに済んで」
「ミカ…。嫌味を言いにきたのか、励ましにきたのかはっきりさせてよね~。はぁ」
開いた窓から離れ、長い廊下をとぼとぼ歩こうとしたユリアンを、ミカはガシッと捕まえ「貴女、今主人は居ないから暇…、だよねぇ?」と耳元で囁いた…。
「暇じゃないよ。今は、国王の侍女になったんだ」
「あら。じゃあ、あの王子には誰も召使がいないんじゃない…!?うふふ。これは…」
「何か悪巧みを考えるのなら、私を巻き込まないでよ。じゃあね。応接間に戻るわ」
そういうと、ユリアンはふっと消えた。
「そっかあー。貴女、魔法使いだたわねえ。私は、元剣士だけどー。さあって!悪巧み、開始しますか~。でも、その前に主人にこの計画を言わないと…ね~!」
うふふ~っと、ミカは不気味に笑って廊下をスキップしながら歩いて行った。
ーーー
「はあぁぁーー!!??」
「ひい。だから、僕は何もできないんだって!ずっと城に籠ってたし…。そういうのは、侍女たちがやってくれたし…」
「ぼんぼんも、好い加減にしとけよ?ああ?商売もできないとか、王様泣いちゃうよ」
「父上は…。僕の事なんて視界に入ってないよ」
「長男のクセに?」
「うん…」
「ふーん。ま、仕方ないわね。私の肩を掴んで…」
今私は、目の前の青年に対して心底うんざりした。
何で王子のくせに、商売できないわけよ。王子だからって…私は許さない。
「貴方に、一般教育をしてあげる。掴んだね」
ふっと視界が白くなるが、瞬時、街のど真ん中に着く。
「い、今のは【瞬間移動】…?僕の侍女も、魔法使いだよ。確か、“天女”っていうランキングだった気がする。最高ランキングの一つ下だったな。一番上は…」
「“神”…。でしょ?」
鋭い矢のような声が、彼の隣から聞こえ、王子はぶるるっと身震いした。
「そ、そうだったな。魔法使いはこの世で十人ぐらいしかいないから、珍しいね、君。でも何でそんなこと、一般人以下の君が知ってるの?」
「一昨日言った、【魔女】っていうの、訂正してくれるよね?それと、今の発言…」
「は、はいー!もちろんです!」
素直なのに、バカなんだよなあ~。
ーーー
「国王陛下のおなりだっ!静粛に、静粛にっっ!」
私はできる限り、大声で会場に響き渡るほどの声をだす。
「ユリアン。ありがとうね…」
王は耳元で囁いた。
王って、ミカみたいだな…。
「きょ、恐縮です…」
「ふふ。そんなに硬くならなくて、良いのに…。後で、私の部屋に来てね」
隣に立っている、王はこそりと言う。
「はっ!?何で?」
と言って、しまった!と私は思った。目の前にいる、貴族や大富豪たちはじろりと私を睨んできた…。
やばい。殺される。
王の命令は絶対なのに、それを愚弄する発言をしたからだろう。
「ぷっ。あはははっっ!全く、君ってやつは本当に面白いね…」
王が、爆笑しました。久しぶりな気がします…。
ああ、恥かしいっ!
顔を真っ赤にする私から彼は離れ、玉座にすとんと座る。
「さて、本題に入りますか~。私の王子を見かけたものはいるか?
あの王子のせいで、私の可愛い側近になった者が、困っているのだ。
見つけたものには賞金、及び私と友人になることを許そうか」