少女と王子~ベットの巻~
「おやすみなさい。何か変なことをしようとしたら、ブッ殺しますから…。王子だろうが貴族だろうかなんだろうが、容赦はしねえ。じゃあね?」
最後の方が、男の人のような言い方になり、目の前にいる青年はかなり引いていたが仕方が無い。というか、別に良い。
「ハ、はははい!分かりました。お、おやすみなさいぃ……」
めっちゃ引いていますねー。ええ。でも気にせず寝室に、GOー!
と一人意気込んでいたら、後ろからすごいデカイ声で「すみませんっ!」と叫ばれた。
どうやら、今度はこっちが驚く番のようだ。
「え、ええ!?どうしたんですか?」
私はドアノブを掴みながら後ろを振り返り、彼に聞く。
「見ず知らずの、しかも不審な僕を今晩、君の家に泊めて頂きありがとうございます!それと、君の夕飯を全部くださりありがとうございます。本当に、感謝の言葉しか出てきません。こんな僕でよければ、【魔女】と呼ばれている君と結婚してくだs」
「私を魔女呼ばわりしないでっ!あと、結婚とかあり得ないから!!!おやすみっ」
いきなり怒られ、しかも思い切りドアを閉められた彼は、ビクッッと肩を震わせた後すとんと椅子に腰掛けた。
「はあ。僕は、いつも大事なところで空回りするんだなー」
あいにくこの家の壁は、薄いので隣の部屋の声は丸聞こえなのだ。
だから、少女にもこの言葉は聞こえている。
「王子ってこと、言うか言わないか…。どうしようかなぁ。仮結婚ということにして、あの自己中最低くずブスから逃げたいんだけどな。はあーー!」
えー。マジで王子だったの?……仮結婚って!絶対嫌だし。結婚するなら、自分の好みの人じゃないと嫌だし。まあ、たしかにあの人は私の好みの顔で性格だけど、信頼が今は0にちかいしな。つかその女、お前にそっくりじゃんかよ。ブスなのは違うけどな?
「さてと、僕も寝るか…。ベットで寝ないのは、人生で初めてだなー」
悪かったな!ベットが二つなくて!!
「…ん。あの少女の匂いが微かにするソファー……」
きもい、キモイ!気持ち悪い!私も寝よっと。
ーーー
「のあああーー!!寝過ごしたあぁぁーーー!っと、違った…」
「五月蝿い!!部屋、狭いんだから叫ばないでよね。はい、朝ごはんだよ。さっさと食べて、家の城に帰ってよね?お・う・じ・さ・ま?」
しょ、正体ばれてる…!?
王子は少女の言葉にえらく動揺したようだ。