少女と王子?~金貨の巻~
高級そうな馬車の中に、一人の青年と召使いの女性が座っていた。青年は、ガラス窓に張り付いているが…。
唐突に、青年が「止まれっ!」と運転手に命令した。そして、指をさし
「あの人が、欲しい!!あれを僕の姫にしたい!」
と召使いに言い放った。
「はあ。ミシェン王子?何人目ですかねぇ。またそんな事を言って、彼女を悲しませるのでしょ?ならば、さっさと婚約者のハルカイ様と結婚してくださいよ」
「やだね。あんな、わがまま自己中ブスと結婚するなら、あの少女と結婚する方が良いね」
「わがままは、てめえも同じだろ(ぼそっ)。あの子の身にもなってみたらどうですか?下町から、急に一国の王子の嫁なんて、ストレスたまりますよ?かなり」
「ん?何かい?最初の方が聞こえなかったね。そんなにストレス溜まるかなー。よし、僕はここで降りるから、先に城に帰ってね。金は、貰ってくよ。じゃあね!」
彼は、理解不能と言わんばかりにほおけている召使いにそう言って去って行った。
去って行った後に、彼女の意識は戻った。
「は、はあぁぁーーー!?あのバカ自己中王子ーーー!!私が国王にぶっ殺されるわッ!」
「ユリアン、声がでかいよ。ぶっ殺されるのは、俺も同じなんだから…」
何時の間にか、発車していた車の運転手が“ユリアン”という名前の召使いに注意した。
「ああ、そっか。ならまだましか~。シュウは、国王から信頼されているしね。安心して良い分らないけど、一安心ってことね…。はぁ。何でバカ王子の召使いになっちゃったんだろう…」
“シュウ”と呼ばれた運転手は、苦笑した。
ーーー
「マッチはどうですかー!美少女が売っているマッチはいかがですか~!」
いつものように、少女とは思えないような声に大きさでマッチを売っていた。
「おい、そこの娘。僕の婚約者になってくれないか?」
それは、あるとてつもなく寒い日の昼下がり…。
私は、目の前にいるえらっそうな、青年を気違い者のように見ていた…。
おい、こいつ、今なんて言った?婚約者?
なに?巫山戯ているの?
「貴方は誰ですか?」
なるべく、女の子のように聞いてみる。
本当なら「おい、あんた誰だよ。知らねえ顔だな?」と言いたいが、流石にこの偉そうなバカ王子のような青年に言うのは気が引ける…‥。
「僕は、シュウ・ユリアンとでも名乗っておこうかな?」
怪しい男だ。信用ならないな。よし、マッチ箱を売ってから、逃げるか…。
「で、マッチ箱買うんですか?買わないのですか?」
「もちろん、買うよ。そのカバンの中に入っているマッチ、全て買うから…これで足りるかい?」
彼は、金貨を一つ渡し、カバンの中にあるマッチ箱を貰った。
ちなみにマッチ箱は一つ、銅貨一つで良いのだ。バックにあるマッチ箱の数は、十七個。つまり、銅貨十七個でいい。金貨は銅貨五十個と同じ。そう。だから、バカ王子が損をしたことになる…。
うひひひ!めっちゃ得したよ!
もはや、マッチ売りの少女の悲しい物語ではなくなってきている……。