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動植物神話体系―Eukaryotarum Mythologia―

蛇とりす

静かな森の中、可愛らしい鈴のような声がします。


「りすさんりすさん、遊びましょう」


声の主は、薄紫色のへびさんです。

まだ赤ちゃんのへびさんはお友達のりすさんを誘います。りすさんの住処は大きな木のうろです。

一生懸命木を登ってうろのふちまで来ました。首をかしげてりすさんを探します。


「へびさん、りすはここにいます」


りすさんは奥のどんぐり置き場から顔を出してへびさんに挨拶します。りすさんは珍しい桃色の毛並みを整えてへびさんの近くまで来ました。

りすさんはへびさんよりもずっとお姉さんです。よく遊びに来る赤ちゃんのへびさんのお世話をするのが好きです。


「りすさん、今日はどんな話をしてくれますか?」


りすさんはクリリとした目をへびさんに向けて笑いました。


「そうですね、りすのご主人様の話をしてあげます」


りすさんはへびさんを手招きして落ち葉のクッションに座らせます。まだ鱗が柔らかいへびさんの体が傷つかないように湿らせた特製クッションです。


「りすのご主人様はとても凛々しくて可愛らしくて美しい方です」

「とてもすばらしいかたなんですね」


自慢げに話すりすさんに、へびさんはキラキラした目を向けました。へびさんはとても素直な子です。


「そうです、りすはご主人様の素晴らしさをあまねく世界に伝えるために尽力しています……残念なことに、ご主人様は夜にしかお出でになりませんが」


りすさんはご主人様が大好きです。それはもう、全ての存在はご主人様のためにあると言わんばかりの親愛を向けています。


「おいら、りすさんのごしゅじんさまとお話

したいです」

「……それは、難しいですね。ご主人様はいつもあの方とばかり話していますもの」


りすさんは手元にあったどんぐりを撫で回しながら少し残念そうに言いました。


「あの方、とは誰のことですか」

「白く美しい黄金の方です」

「美しさに目が焼かれてしまうという、あの方ですか」

「そうです。ご主人様はあの方と同列だからこそ、不憫に思っているのでしょうが……」


言葉にはなりませんが、りすさんは物憂げに遠いところを見ています。

へびさんにはわかりませんでしたが、りすさんはもっとご主人様に構って欲しいと思っているのです。それなのに、いつも黄金の君のことばかり。へびさんにがっかりされなくないので、言葉にはしません。

へびさんはへびさんでりすさんの話を無邪気に待っています。


「とにかく、ご主人様は素晴らしいのです」


りすさんは気持ちを切り替えようと、話を打ち切りました。へびさんには綺麗なものだけ見て育って欲しいのです。ほんの少しの苦さを呑み込んで、りすさんは笑いました。


「りすさんのごしゅじんさまはすごいんだな」

「ええ、それがわかればよいのです」


へびさんはりすさんの気持ちには気づかなかったようです。うねうねと、りすさんの周りを這いずり回ります。


「りすさん、りすさん、お腹減った」


へびさんは何かを期待するかのようにキラキラした目をりすさんに向けます。りすさんは苦笑いをしながら、どんぐりを渡しました。

ぱくっとひと呑みしたへびさんはウトウトと夢の中に引き込まれていきました。

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