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勇者召還の無双魔王  作者: 織田 伊央華
第一章「帰還の魔王」
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第6話「彼女は紳士・・・そう、アノ」

お待たせしました。今回は今から外出しないといけないのでここで区切りが良く、投稿することになりました。文字数は4500ほどです。

2016年12月28日修正-行間の修正-

 彩奈の不意な申し出により町を案内してもらうことになった叶斗達。


 寮を出た叶斗達は正門から出て町へと足を運んでいた。


「そう言えば、ここって地下なのに様々な全国チェーンが出店してるよな」


 現在も某Mマークが目印のファストフード店の看板を視界に収めながら叶斗は呟く。


「そうですね。バベルには複数の企業体という裏の顔もありますのでその企業に参加している会社や事業所を中心にこの町は形成してます」


 片側二車線のメインストリート。両側にはブランド店も多数並んでおりその一つの店に彩奈の勧めにより入ることにした。


「まずは叶斗さんの方から揃えたいと思いまして」


 なぜここかと聞いたところそう返事を返した彩奈はてきぱきと店員さんと話をして準備をしている。


「のう叶斗よ、ここの服なかなかに質が良いのう」


 紅華は近くにあった服を手に取り手触りを確認していた。叶斗達がいた異世界は服などといった産業のレベルはそれほど高くなく、また魔物が主に暮らしていたので知能の低い種族も多くいた。そのことから衣食住に関しては日本と結構な差があり紅華が感心するのも納得できる。


「まあこっちの世界じゃまだ高いのがあるな。これはそこそこのブランドだが値段は安いほうだ」


 意外とおしゃれ好きの母に休日の度に荷物持ちとして連れまわされ、いつのまにか要らない知識を身に着けていた叶斗はつらい昔の記憶を思い出す。


「そうか、これほどの質で安いとな」


 ほう、とここ一番の驚きを見せる紅華。そこに彩奈が返ってくる。


「とりあえずひとセット店員さんにお願いしましたのであちらにお願いできますか?」


 そう言って指すのは試着室だ。服はただ見ただけでは買えない。叶斗もまた向こうでの半年で身長や体格も少しではあるが変わっているだろう。


「わかった」


 短くそう言うと叶斗は店員が待つ店の端の方に移動した。





「おー似合っておるぞ」


 数十分後。何度かの着脱の後ようやく彩奈と店員のOKが出た叶斗は多少疲れた表情をして店を出た。元々異世界の魔王スタイルだった叶斗は今はカジュアルな服装に変わっている。その場で買い、着て帰ることになったのだ。主に紅華が気に入ったため。


 服装としては少し黒いジーパンと濃い赤のTシャツ、そしてその上から襟付きの長袖シャツを羽織り、一番上には薄めの白のパーカーを羽織っている。


「意外と白が似合うのう。向こうでは殆ど黒一色じゃったし」


 そういう紅華は自分の買い物ではないのにとても満足そうにしている。


「確かによくお似合いですよ」


 確かに自分でのもいままでの服装は多少中二病感は感じていたのだ。その為服装を変えることは特に抵抗を感じなかったが一番上の白のパーカーは抵抗があった。元々黒が好きでインドア派だった叶斗。そのため持っている服はほとんどが黒を基調としたものだったためここまで白い服を着たことが無かったのだ。


「うむ、髪の色と相まって綺麗にバランスが取れておる」


 さすがじゃのと店員なのか彩奈なのかわからないが選んだ人間を褒めている紅華。その表情は最近でも上位を争うほどの笑顔だ。


「では次は紅華さんの番ですね」


「なんじゃ?妾のぶんも買ってくれるのか?」


「ていうか紅華って普通の服着れるの?」


「うむ、この服は妾の魔素から生成されておる。じゃから恐らく着ようと思えば着れると思うのじゃ」


 そういい確認の視線を向けてくる紅華。


「じゃ試してみるか」


 そっけない返事を返しつつも叶斗は紅華の着物以外の姿を見たことが無い。いつもは刀の状態か、今現在の黒の着物かのどちらかだった。先ほど紅華が言った通り紅華自身の魔素で生成されている為一度刀に戻り、再度人型に戻ると新たに生成される。その為汚れることも擦れることもないのだ。その為興味がないと言ったらウソになる叶斗。


「では紅華さんの服ですね」


 そういう彩奈は笑顔を浮かべ、案内を開始する。





 三人が足を踏み入れたのは先ほどの店から10軒ほど隣のお店だった。そこは先ほどと同じような庶民向けのリーズナブルな値段で人気の子供服ブランド。そのことをブランド名を見た瞬間に気づいた叶斗は密かに苦笑をこぼす。


「ではすこしお待ちくださいね」


 先ほどと同じように彩奈は奥に行き店員と何やら話している。そんな光景を眺めていると紅華が近くにあった衣服を手に取り物色を始めた。どうやら先ほどもだったがこの世界の服には興味があるようだ。


「なにか気に入りそうなものはあるか?」


 買い物に付き合う彼氏のように、または夫婦のような問いかけをする叶斗。第三者から見れば親子に見えるかもしれない。


「うむ、サイズ的には申し分ないがいかんせん子供っぽいようじゃが・・・・」


 子供用の洋服店なので大人の女性用の衣類に比べ多少見劣りする。しかし可愛らしい衣服も多数おいてありそこは気に入っている様子だ。


「お前の身長じゃ、大人用は着れないだろ?」


「それもそうなんじゃが・・・」


 なにか納得がいかないようで、しかし次々と手にとっては戻していく紅華。そうこうしているうちに彩奈が戻って来た。


「紅華さん、店員さんに頼みましたので奥の試着室にお願いできます?」


 叶斗達の元に戻ってきた彩奈の腕にはすでに数着の洋服が抱えられていた。


「うむ、案内してくれ」


 そう言い紅華は彩奈に案内され店の奥へと消えて行った。





 何分ほど経過しただろう。暇になった叶斗が貸与された端末でバベルの施設の場所や内容を見ているとき事件は起こった。


「キャー!!!!」


 悲鳴、ではなくよくアイドルなどのコンサートでよく聞くような黄色い悲鳴。それが店の中に響く。そしてその声の主に心当たりがある叶斗は何事かと思い店の奥に行く。


 するとそこには信じられない光景が広がっていた。


 場所は試着室。その中に立っているのは紅華であり、試着してできてきたのか扉は開いており、フリフリのフリルがついた丈の短いドレスを着用している。普段着ではなかったのかという叶斗の思考もその下にいる一人の人間により停止させられた。


「なっ、なんじゃいったい!いきなり抱き付くでないわ!」


 その言葉通り抱き付いたのであろう彩奈が口からよだれを垂らした残念な格好で紅華に踏まれていた。


 しかし彼女はたくましかった。


「えへっ、えへっ、だって可愛いのが仕方がないじゃないですか!こんなにも可愛いものを抱かないでどうするんですか!あぁもう辛抱たまらん!」


 まるでどこかのエロおやじのごとく突如変貌した彩奈は目を充血させゾンビのように紅華に迫る。


 当の紅華も可愛いと褒められることは慣れていないせいか最初は顔を赤らめていたが直後の言葉によって顔をひきつらせた。


「か、叶斗よ。こいつは正気なのか?」


 手をわきわきしながら迫る彩奈を足蹴にすることで何とか撃退している紅華は問いかける。


「うーん、まあ正気といえば正気なんだろう。たぶんこっち(・・・)が彼女の本質だろう、俗にいう紳士だな、変態の」


 通常であればとても美人な顔立ちの上に絶妙なプロポーションをもつ少女が少女、幼女を襲っているのは微笑ましい状況なのかもしれない。ただし口からはよだれを垂らし、目は血走り、中年エロおやじのように指をわきわきしていなければ、だが。


「まあ、それはいいとして」


「よくないわっ!妾の貞操がピンチなんじゃぞ?」


「それより服は何着か決めたのか?」


 まるで猫の首根っこを掴むように彩奈を捕まえ紅華から仕方なく引きはがす叶斗。


「う、うむ。殆ど絞れてはおるのじゃが・・・」


 そういう紅華の視線は試着室内部のハンガーラックに掛けれられている複数の服に向けられる。一着は黒を基調とした甚平のような服で表面にはハートが小さくプリントされ可愛らしいものだ。その下にも何着か見えている。


「何着だ?」


「3着じゃが」


「じゃ全部買ってやるよ」


「ふぇ?よっ、よいのか?」


 考えてもいなかったのか、思いもよらぬ攻撃を受けたような顔をする紅華。


「かまわん。お前には大分世話になってるしな」


 そう言い思いだすのは向こうの世界での生活。短いとはゆえ半年以上も向こうで生活し、紅華との生活も優に3か月を超えている。


 徐々に嬉しさからか、または違う要因かはわからないが紅華のほほが染まっていく。


「あ、ありがとう」


 短く、だが小さく放たれた言葉はしっかりと叶斗の聴覚にまで届いた。それを満足そうにうなずくとまだ暴れている彩奈を引きずり会計を済ませて外に出た。紅華の服装は叶斗の時と違い元の着物スタイルに戻っている。お会計の際に複数の小さな布がささっと紛れ込んでいたが叶斗は気づかぬふりをした。


 紅華が元の服装に戻ったためかようやく理性を取り戻した彩奈は乱れていた服装を店を出る前までに完璧に戻していた。


「で、ではお次は雑貨屋さんに行きましょうか」


 そうやって何事もなかったかのように取り繕う彩奈に強烈な嫌悪の視線を向ける紅華。それに冷や汗を額から流していたことは彩奈の自業自得だろう。




 その後雑貨屋で細やかな生活必需品を何個か買い、両手を紙袋でいっぱいにした3人は昼食をとることにした。


 3人が入ったのは明るい雰囲気のイタリアンのお店。勧めたのはもちろん彩奈だ。


「ここのお店はパスタがおいしんですよ。特にカルボナーラとナポリタンがおすすめですね」


 そんなことをいいながら自分はすぐにナポリタンを頼んだ彩奈。


 初めての飲食店になる紅華はまずメニューが読めない。


「むう、なんと書いてあるのか解らんではないか」


 とぼやきながら叶斗に尋ねている。


「これはどんな料理じゃ?」


 問われたのはオムライスだ。


「んー、説明は難しいからとりあえず好きなの頼んでみたら?」


 そう言って答えるのが面倒くさいのか適当にあしらう叶斗。結局紅華の注文が決まったのは5分後だった。




「なかなかに美味しかったぞ」


 そう膨れたお腹をぽんぽんと叩く紅華の姿は見た目相応の年齢に見える。


「お前家の時も思ったがよく喰うな。結局三人前ぺろりといきやがって」


 そう、最初に注文したオムライスだけでは足りず、その後にカルボナーラとピザを平らげ、それでもまだ食べれると豪語しているのだ。これにはさすがの叶斗もあきれるしかない。


 元々むこうの世界では紅華はほとんど刀の姿であり、その時は基本的に食事を必要としない。それは空気中にある魔素を自動的に取り込むからであり、それが食事のようになっていたのだ。その為昨日の葛城家での食事っぷりは門下生も顎を外す勢いで驚いていた。


「まあ妾は育ちざかりじゃやからの」


「何年目の育ちざかりだか・・・」


 短いため息を吐きながらも満足そうな表情の紅華を見て仕方がないとばかりに表情を崩す叶斗。そんな二人を少し遠巻きに見ながら彩奈が問いかけた。


「いまさらなんですが、お二人はどういった関係なんですか?」


 彩奈も詳しくは聞いていないのだろう。もともとが機密も多いバベル。その中には公表できないような能力を持った者などもおおく在籍している。その為基本的に生徒会の上層部か運営の管理機構の方でしか情報が回ることが無い。だから彩奈が知っていなくても当たり前なのだが、それを叶斗達が知るはずもない。


「本当に今更だな」


 そう言う叶斗は仕方ないと語り始めた。

 


次回叶斗達の過去編、とまではいきません(いずれは・・)がちょっとしたなれそめのお話をしたいと思います。

では明日の更新まで今しばらくお待ちください。

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