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勇者召還の無双魔王  作者: 織田 伊央華
第一章「帰還の魔王」
4/37

第4話「入学試験」

お待たせいたしました。7800字ほどです。

2016年12月28日修正-行間の修正-


 その空間はまるで体育館を想像できるほどに広かった。


 目の前の扉を開け、中に入った二人が最初に見たのはそんな空間だった。


 数十メートル四方の空間で天上は高く優に10メートルはあるだろう。地面は特殊な樹脂で覆われているのかコンクリートのような色をしておきながらそれのような硬さはなく、強く踏み込むとアスファルトのような粘りがある。


 壁一面には何か魔法陣を刻印されたような模様が刻んであり、同じような模様は天井にも見える。

 そんな空間に一人の姿が見える。


 身長は160センチほどでスレンダーな体格。しかしつくところにはしっかりと肉が付いた健康そうな体をした一人の少女。明るいライトブラウンの長髪をうしろで一つにまとめ、ポニーテイルにしている。


 長めにそろえられた前髪の下にはとても整った顔があり、モデルや女優と言われても遜色のないほどの美貌を見せている。部類と指定は可愛いというより美人という方がしっくりとくる。


 そんな少女が一人部屋の中央に立っていた。


「いらっしゃい」


 入って来た叶斗達を一目見ると軽く微笑みそう言った。凛と響き、透き通るような音色の声は自然と聴覚に届いてくる。


「ここは入学試験の会場でいいのか?」


 10人中10人が見とれるであろう美貌の少女を一瞥しただけで興味なさげにそう尋ねる叶斗の視線はすでに別のところに移っている。


「ええ、あってるわ。私が今回あなた達の試験監督を務める草薙(くさなぎ) (しずく)よ」


 祐樹と同じ服装をした少女は無関心な叶斗の態度に微塵も反応せずにそう言った。


「おぬしも生徒会とやらの人間かの?」


「ええ、生徒会長という立場を預からせていただいてるわ」


 そう答える少女は興味深そうに紅華を見つめている。恐らくその姿からは想像しにくい口調で話したからだろう。


「ほう、ではおぬしが最強(・・・・・・)なのかの?」


 雫の返事を聞いた瞬間に雰囲気が変わる紅華。放たれたオーラは明らかに好戦的なものであり、瞳は爛々と輝いている。


「その認識はいささか問題があるとは思うけど、そうね、そう受け取ってもらっても差しさわりないわ」


 先ほどから普通に立っているだけだが一切隙のない雫。それをあえて挑発した紅華は満足そうにうなずく。


「だそうじゃ、叶斗よどちらが先にやるのかの?」


 向けられた視線はすでに決まっているかのような威圧が放たれている。まるで散歩に行きたい犬のようにそわそわしている。


 そんな紅華の様子を見るまでもなく知っている叶斗は小さなため息をつきつつ返事を返す。


「お前からでいいよ。最初は観戦でもしておくさ」


 そう言うと数歩後ろに下がった。


 そのようなやり取りを少し遠くから観察していた雫は最初の相手が紅華であると判断した。


「ではあなたからね。お名前は何というのかしら?」


 先ほど全く変わらない姿勢のままで尋ねる雫。しかしその瞳は先ほどとは違い鋭さを増している。


「名は“紅華(べにか)”」


「そう紅華さんね。試験の方法はどうする?近、中、遠すべて大丈夫だけど」


「妾は近接戦を好む」


「了解したわ。では近接戦ね、武器はどうするかしら。別にこちらで用意してもいいのだけど」


 と手ぶらの紅華の方をちらりと見てから言葉を発する。


「よい、自前のがある」


「そう、ならいいわ。ではルールを説明するわね」


 そう言うと右手を掲げ、その手に持っていたカードを操作する。それは運転手が持っていたカード酷似しているがその能力は違うようだ。


「試験方法は近接戦闘で一撃相手に当てた時点で終了。ああ、あと怪我については心配しなくていいわ。この部屋全体には再生魔法の魔法陣が刻まれているの。余程の即死出ない限り死ぬことは無いわ」


 でも痛みはあるわよ?と短く付け加え、改めて紅華を見る。


「構わぬ、それに一撃を受けるつもりはないのでな」


 それを準備完了の合図だと受け取った雫はいつの間にか背負っていた剣を引き抜く。


「では始めようかしら。そちらから打ち込んできなさい」


 先ほどとは比べられない威圧を放つ雫。それは美貌と相成り、とても冷たさを感じるものだ。


「ほう、先鋒をゆずるのか。では遠慮なく」


 感心したような口ぶりの直後、紅華の姿が消えた。


 いや、消えるほどのスピードで移動したのだ。10メートルほどの距離。それは僅か一瞬の間に駆け抜けた紅華は雫に肉薄し、手を伸ばせば届くほどの距離にいる。


 常人であれば反応できるはずのないスピードと距離。気づいたときにはすでに視界内に肉薄しており、その直後には容赦のない攻撃が襲う。


 しかし最強と言った雫がそれに反応できない訳がない。


 多少は驚いたのであろう、微かに広がった瞳は揺れている。しかし動揺はそれだけだった。


 自らの懐に入り込んだ紅華に即座に反応し、バックステップを取ると同時に隙間にねじ込むように自らの剣を立てにした。直後に襲う強烈な衝撃と金属どうしがぶつかり合うような音。


 押し込まれる力と衝撃をそのまま後退に利用し、一度距離を取る雫。


「・・・早くて重いわね」


 感心するような言動とは真逆にその瞳は真剣さを増してゆく。


「ほう、今のに反応するか」


 そういう紅華は一撃で満足したのか追撃をしていない。それを簡単に許す雫ではないが、少し拍子抜けしたのも事実だ。


「それにしてもエモノが見えないわね。先ほどの攻撃、どうなっているのかしら?」


 先ほど受けた衝撃で雫が持つ剣は少し刃が欠けていた。


「なに、すぐにわかるわ」


 そう言うと再び紅華の姿がかすむ。それほどの速度で再び雫に向かって踏み込んだ。狙うのは先ほどと同じように雫の胴体。だが攻撃方法は先ほどとは違っていた。


―一つ試してみるかの―


 その思考と同時に再び不可視の刃が雫に肉薄する。


 雫は先ほどと同じように剣で受け止める体制に入る。しかし次の瞬間強烈な悪寒が雫を襲った。それは今までに何度か経験した事がある一種の勘とも呼べる肉体の反応。


 次の瞬間雫は本能に任せるがまま受け止めるようにしていた剣を前に押し出すように(・・・・・・・・・)自分の体を後ろへ押し出した。


 次の瞬間、その悪寒の正体がわかる。


 スルリと伸びた紅華の不可視の斬撃。それが雫が持っていた剣とその場所を含め、空間を切り裂いた。それは剣も同じ対象であり、綺麗な断面をもって見事に両断されていた。


「ほう、気づいたか」


 まるで試すかのような一撃。それを受け取った雫は額から流れる汗を無視し、再び紅華を見つめる。


「急造とはゆえかなりの硬度を持っていたはずなのけれど」


 綺麗に両断された剣を一目、ため息をつくように吐き出した雫。その表情は獲物を失ってもの微塵も変化していない。


「うむ、妾の力も分かったとは思うが、まだ続けるのかのう?」


 満足したような紅華の言葉。それを受け取った雫は一瞬の思考で考えをまとめる。


「いいわ。いまので終了としましょう。そうね、あなたの技術はすでに私と同等かそれを越えているわ。間違いなくAクラスの配属になるでしょう」


 そう言うと地面に転がっていた二つに分離した剣を回収する。


「一ついいかしら?」


 剣を拾い、再度は断面を確認した雫はその切れ味に舌を巻く。


「なんじゃ?」


 問いかけられる言葉。それは戦いの最中に浮かんだ疑問だった。


「あなた、人ではないの?いえ、別にそれが悪いとかではなくて、単純な興味よ」


 紅華の外見と口調。そして先ほどの戦闘による高い能力の露呈は雫に疑問を浮かばせるのに十分だった。


「そうじゃの。妾は人間ではない」


 そう言うと一瞬紅華に光が纏わりつく。次の瞬間鋭い金属音と共に一振りの刀が地面に突き刺さった。


 長さは1.4メートルほどで全身を漆黒で包み込んだかのような黒刀。その刀身は光を吸収するほどに黒く、鍔のない柄には複雑な模様が刻まれている。


「・・・刀、だったのね」


 多少の驚きを見せながらもそれ以上の動揺を見せない。それは雫のプライドなのか、それとも生徒会長としての矜持なのかはわからない。


『そうじゃ、妾は妖刀。名前は叶斗がつけてくれた』


 直接頭に響くような紅華の声。それは念話能力のようなものだ。


「擬人化する妖刀なんて見たことが無かったから驚いたわ」


 地面に突き立ったままの紅華に軽く視線をむけつつ雫は呟く。


『そう言う割には対して驚いているようには見えんが』


「これでも驚いているのよ」


 肩をすくめながらそう言う雫。その表情は先ほどと変わらず誰が見ても殆ど気づくことは無いだろう。それほどに彼女の表情の変化は小さいものだった。


「そうかのう」


 多少疑問の表情を浮かべながら元の姿に戻った紅華はちらりと叶斗の方に視線を投げる。


 投げられた視線に軽く肩をすくめるだけで返事を返した叶斗を確認すると同じく紅華も納得したように笑みを浮かべる。


「まあよいわ。それじゃ次は叶斗かのう」


 そう言うと叶斗がいた部屋の端までとことこと歩いて行く。その足取りは先ほどまでと違いとても可愛らしく、揺れる着物の裾の下からは綺麗な白い肌が覗いている。


「じゃ交代だな」


 一言短く呟くと叶斗は紅華と入れ替わるように前へと進みだした。


 一歩一歩は紅華と比べ大きく、すぐに先ほどまで対峙していた場所まで到達する。すると壁に寄りかかるように待機していた紅華がふと思い出したかのように口を開いた。


「そうじゃ、雫よ」


 投げ掛ける言葉の先はいつの間にか手ぶらになっていた雫だ。


「なに?」


 次の試験に向けて準備をしようとしていた矢先の問い。


「一つ忠告しておこう。叶斗とは全力(・・)で相手をした方が良いぞ」


 暗に先ほどの戦闘は全力ではなかったから、今度は本気で対峙しろと言っているのだ。それは負けた雫が先ほどはあえて全力を出さなかった、という事を把握しており、またその能力も殆どわかっているという暗喩でもある。


「そうね、ご忠告ありがたく受け取っておくわ」


 さすがにこの言葉は雫のプライドに傷をつけたのか、にこやかな笑顔の後ろに般若のような揺らめきが見える。そんな雫を満足そうに眺めた紅華は口の橋を吊り上げながらも頷きを返す。


 そんな二人のやり取りを眺めていた叶斗は紅華と同じように10メートルほどの感覚を開けて雫と対峙した。


「それじゃ、貴方の戦闘のスタイルを教えて頂戴」


「紅華と同じ近接でいいよ」


 あまり興味が無いように返事を返す叶斗。そんな様子の目の前の少年に多少の嫌悪感を感じながらも雫は頷く。


「じゃそれでいいわね」


「・・・・始めるぞ?」


 頷くと同時に先ほどと同じような剣をいつの間にか取り出していた雫に突如不可視の威圧が放たれる。それは今までに感じたことが無いほどの圧力。不意にではあったがそのまるで嵐のような威圧の中額から一気に汗を噴き出させながら雫は一歩下がった。


「ほう、叶斗の威圧でそれだけしか反応しないとは・・・」


 少し離れたところから感心するような紅華の声。しかしそんな声に反応できるほど雫に余裕はなかった。

 まるで獰猛な肉食獣に睨まれた小動物のような感覚にさらされ、雫は瞬時判断する。


―やらないと殺られる―


 自然の理、異世界で嫌というほど目の前で見て、感じてきた感覚を瞬時に思いだし、雫はすぐさま剣を捨てた(・・・)。


「・・・ほう」


 最初に反応したのは叶斗だった。


 目の前でいきなり自らの得物を捨てた雫は次の瞬間左の腰の付け根に手を伸ばす。


 するとそこからまるで生える(・・・)ように一本の剣が現れた。

 

その剣は先ほどの剣とは違い輝くような眩い光を放ち、柄についている装飾品は華美にならず、かといって貧相ではないほどの丁度良いバランスを取っている。


 まるで物語に出てくるような聖剣のような眩い輝きと威圧を放ちながら抜き放たれた剣は雫の手の中で脈動している。


「・・・本気で行くわよ」


 この問いは相手を傷つける可能性があることを示唆している。


 直後雫は消えた。


 先ほどの紅華以上の加速力。まるで爆発するかのような急激な加速をもって目の前の敵へと肉薄する。相手は未だに何も持っていない。


 異世界の戦闘経験により無手を警戒することは体が覚えている。拳闘士のように拳で人を軽く殺すことが出来る者もいるのだ。雫は目の前の少年も恐らく同じ部類であると考えている。


 だからこそ容赦はしない。


 目の前から放たれる威圧は雫に最大限の警鐘を鳴らしている。それは


―まるで最後に倒した魔王のような覇気ね―


 直後手に握った自分の相棒を振り下ろした。しかしその斬撃は予想していたどの手段でもなく


「・・・冗談でしょ?」


 その場から一歩も動かない叶斗の左手、それも人差し指と中指の二本の指によって受け止められていた。


 警戒の数値をさらに跳ね上げながら雫は咄嗟に剣をひねり、無理やり拘束を解くとバックステップによし距離を取る。


 警戒していた追撃が無い事に不信感を抱きながらももう一度目の前の少年の全体を視界に入れる。


 すると先ほど受け止めていた左手の二本の指から煙が上がっていた。


「まさか」


 その光景は異世界で何度も見てきた光景。自らが持つ浄化の聖剣は魔物の持つ魔素に反応し、その浄化能力を発動させる。それは魔王などの強大な敵にも作用し、重大な被害を相手の肉体に与えるものだ。


 だからこそ、いま目の前の少年の指から煙が上がっていることに驚きを隠せない。なぜならばそれはその少年が勇者や普通の人間ではなく、魔物か魔族など体内に魔素を持っているという事実に他ならないからだ。


 召還された人間は例外もなく全員が勇者としての能力を保有する。その能力に個人差はあれど、変わることは絶対にありえない。それは1世紀以上続いているこの勇者召還管理機構が証明している。だからこそ、今目の前で起こっていることが信じられなかった。


「・・・・あなた、魔族なの?」


 恐る恐る距離を取りながらの問い。しかし少年の方はそんな問いは興味がないとでもいうように返事を返す。


「それがどうした?召還された先がたまたま魔王城で魔王として召還されたことが何か問題か?」


 その問いにすべてがつながる。


 なぜ自分の浄化の聖剣が反応したのか、そして恐ろしいほどの覇気。


 それはひとつの結論をもって判断できた。


「驚いたわ、まさか魔王が帰還しているなんて」


 その直後に雫の瞳から色が消えた。


「叶斗!」


 直後に紅華から声が飛ぶ。


 その声に?を浮かべながら叶斗は見た。先ほどとまでは打って変わって静かに波打つような波動。それが右側から迫っていることに。


「ふっ!」


 短い声と共に空気を切り裂くように斬撃が叶斗を襲う。それはまるで一撃必殺のような強烈な攻撃。まるで魔王そのものを消し飛ばすかのような一撃を雫は放った。


 全力の一撃。


 しかしそれが結果を生じさせることはなかった。


 激しいまでの衝撃と金属音。それは一撃が何かによって受け止められた証拠であり、攻撃が失敗したことを物語っている。


 だが目の前で生じた現象に雫は瞳を揺らすことになる。


「痛てぇじゃねぇか」


 雫の聖剣を受け止めたのは叶斗。それも右手の甲であり、なにも付けていない素手だった。


「冗談!」


 苦しい表情を浮かべながらも雫はその場から再度斬撃を仕掛ける。


 下段からの斬撃。


 サイドからの横なぎ。


 時間にして数秒の時間。その中で数十でも百にでも届きそうなスピードで斬撃が追加されていく。


 しかしその悉くを先ほどと同じように素手ではじく叶斗。


「おいおい、いきなり結構な攻めじゃねぇか。まるで俺を殺したいように見えるが」


 そう、すべての斬撃が急所を狙っての攻撃なのだ。しかもご丁寧に浄化の能力を最大限に発動させた状態で、だ。


 もちろん叶斗も無傷とは言えない。受け止めている素手からは煙が上がり、その肌を赤く焼いている。


「・・・その通りよ。魔王は殺さないといけないの」


 冷たい声でそう言う雫。その瞳には先ほどと違い憎悪の感情が浮かんでいる。


「お前の昔に何が有ったかは知らん。聞くつもりもないが、関係ない者を問答無用に殺そうとするのは頂けない」


 そう言うと叶斗は雫に対し、攻撃の意思を示す。それは先ほどまで放っていた覇気とは別のものだ。


「うっ」


 その波動を受けた雫は一瞬で後退する。


 それは叶斗から放たれる禍々しいほどの殺気。いままでに感じたことが無いほどの濃密な殺気は雫に自らの死を錯覚させるほどに濃いものだった。


 しかしそんな殺気でもなんとか意識を保っている雫。それは地面にポツリと浮かぶ赤い斑点のおかげだったか。

「自傷で意識を保ったか、見上げる根性じゃの」


 解説をしたのは若干あきれ気味の紅華。傍で何度も叶斗の戦闘を見て、一緒に戦ってきた彼女にとってこの波動はとても心地よいものだ。そしてその心地よいものによって対峙した敵がどのようになったのかは数えきれないほど見てきている。


 目の前で唇を噛み切り、赤い血を滴らせている雫は紅華に興味を与えるのに十分すぎた。


「まず一つ勘違いしているかもしれないが、俺は人類と敵対するつもりもない。まあ向こうから敵意を向けられれば別だがな」


 がくがくと足を震わせながらも気丈に立つ雫に向けて叶斗はさらに続ける。


「俺の敵になるというのであれば容赦しないが、俺もこちら(・・・)で殺したくはない」


 そう言う叶斗の瞳には先ほどとは違う興味の色が見える。


「・・・・な、なにが目的?」


 ようやく紡がれた言葉はかき消える寸前の小ささを持っていた。しかし、その問いかけの相手には十分に届く。


「別に、勧誘に来た香ってやつの口車に乗っただけだ。すこしほかの召喚者にも興味があったしな」


「・・・あなた、魔王なのよ?

 それは組織として、そして彼女自身としての拒絶の意思。しかし目の前の魔王には痛くもかゆくもないものだった。


「それがどうした?魔王だとしても元人間であり、お前たちと同じ帰還者だ。人権がどうたらとかは言わないがせめて対等には扱ってほしいものだ」


 そう言うと叶斗は殺気をひっこめ、最初に会った時と同じようにただの少年のように戻る。


「・・・そうね。何事にも初めてはある・・・」


 自分の中で一度折り合いをつけたようだが、雫の表情は硬い。それは彼女の過去に何かがあり、魔王を強く憎むという事に発展しているのは目で見るよりも明らかだった。しかし叶斗はそれ以上聞くことはしない。


「わかったわ。あなたの入学を特別に認めましょう」


 ただし、と雫は続ける。


「私たち勇者にとって魔王は敵であり、倒すべき対象よ。バベル内での行動の自由は保障するけど、監視がつくことは仕方がないと理解しなさい」


 いつの間にか止めていた震えを自らの体を抱くように抑えた雫は冷たい視線を向けそう言い放つ。


「まあ仕方ないわな。でも敵意を向けられたか遠慮なく対処するからな」


 その言葉に多少眉を曲げながら雫は返答する。


「そんな自分の力量を図れない愚か者ならしょうがないわね。できると殺さないでもらうと生徒会としては助かるのだけど」


「相手次第だな」


 その返事に深いため息をはきながら雫はこめかみを抑える。


「全く、今日はなんて厄日なの。敵であるはずの魔王が入学してくるわ、それが私よりも圧倒的に強いだなんて・・・冗談もほどほどにしてもらいたいわ」


 そう言いながら雫は懐から二枚のカードを取り出した。


「はい、これがあなた達の学生証よ。これにお金などのクレジット機能も付いているから無くさないように」


 そう言うと雫は聖剣を虚空になおすかのように消し、再度叶斗たちに視線を向ける。


「では案内の者がくるまでここで待機していて下さい」


 くるりと方向を変え、背中を向け去ってゆく雫。叶斗達が最後に見たのは頭を抱え、深いため息を破棄ながら部屋から出ていく彼女の姿だった。



いやはや、生徒会長の苦労は並大抵ではないですね、

私も生徒会に所属したことがありますがあの時は忙しかった・・・


それよりも最近というか先日親知らずを抜いてきまして、いまおたふくかぜのようにほほが腫れて食事もまともに取れない状態です(泣き)

 そんな状態にも負けずに頑張って書くぞー

では第5話の更新まで今しばらくお待ちください。

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