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デッド・サンライズ  作者: 青蓮
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第二話 異常な日焼け

 すぐには何も起こらなくても、後々重大な事が出てくるのはよくある話です。

 そして往々にして、そういう場合の方が深刻な事態になるものです。

 しかし、皮膚ガンや白内障は減らなかった。

 むしろひどい日焼けの患者が増えて、皮膚科の病院は大にぎわいになった。

 マイケルの美しい妻も、庭に出ると次の日は化粧ののりが悪くなると言って、家に閉じこもっているようになった。

 しかし幼い娘は、そうはいかなかった。

 幼い子供は家の中でじっとしてなどいられないものだ。

 保育園でできた友達と夕方になるまで外で遊びまわって、くたくたに疲れて帰って来る。そんな日は必ず、夜になって風呂に入ると、肌が熱をもって妙にたるんでいた。

 そのうえ、あまり食欲がなくなってうつらうつらしていた。

 次の日には良くなるのであまり気にしていなかったが、最近はうとうとしている時間が長くなってきたような気がする。

 マイケルはあまり外で遊ばないようにと注意したが、幼い娘は聞かなかった。

 そしてある日、炎天下で帽子もかぶらずに遊び歩いて、救急車で運ばれたのだ。

 病院で娘の姿を見て、マイケルは絶句した。

 日光に当たった娘の肌は無残にただれて、黄色い滲出液にまみれていたのだ。

「ああ、何てこと!!」

 妻はその場で卒倒した。

 無理もない、大事な一人娘の容姿がこんなになってしまったのだから。

「頼む、娘を助けてくれ!」

 マイケルも思わず医師の手を握った。

 しかし、医師はうんざりしたようにマイケルの手を払った。

「そうおっしゃいますがね……私どもにも原因がよく分からんのですよ」

 マイケルは耳を疑った。

「日焼けじゃないのか!?」

「日焼けだとは思いますがね……これは普通の日焼けじゃない。

 娘さんの肌は、壊死を起こしています。つまり組織が死んでいるのです。特別に日光に弱い方なら話は別ですが、普通の人が一日でこうなる事は今までにない事です。

 何らかの原因で、光線過敏症を起こしていると考えるのが妥当でしょう。

 薬を飲んだとか食べ物が変わったとか、何か心当たりは?」

 逆に質問されて、マイケルは言葉につまってしまった。

 医師の言っていることは正しい。

 確かに一日外で遊んだくらいでは、普通あんなにはならないだろう。

「分かりません」

 マイケルは消え入りそうな声で答えた。

 自分がきっかけに気付けなかったのに、初めて娘を診る医師に原因がすぐ分かる訳がない。マイケルは科学者として、自責の念すら覚えた。

 医師はそんなマイケルを慰めるように言った。

「原因は分かりませんが、医師として最善は尽くしますよ。

 それにね、原因が分かる日も遠くはないでしょう。

 実は、娘さんのような患者が最近多いんですよ。世界中のいろいろな地域から、同じような症例が報告されています。世界中の多くの医師が、この病の原因を突き止めようとしているのです。

 ですから、原因が分かるまで、どうかご辛抱ください」

 マイケルは何も言い返せず、病院を後にした。


 家に帰って妻をベッドに寝かせると、マイケルは一人自室にこもった。

 医師から言われた言葉には、気にかかる部分がいくつもあった。

(娘さんのような患者が最近多い……?

 世界中のいろいろな地域から、同じような症例が報告されている……?)

 マイケルは医学が専門ではないが、それでも科学者の立場からは分かる。世界中で特定の疾患が同時に増えるということは、環境の変化によるものではないのか。

 思えば、ここ最近よく原因不明の光線過敏症の記事を新聞で目にしていた。

 ただ、今の幸せを楽しむ事に夢中で関心を持たなかっただけだ。

(調べなければ……!!)

 マイケルはすぐさまパソコンを立ち上げ、インターネットで情報を集め始めた。

 そうすると……出るわ出るわ、全世界から普通ではない日焼けの報告が上がっていた。何とかしてくれと助けを求める訴えには、患者の画像が添えられているものもあった。

 目をそむけたくなるような悲惨な姿……しかし、目をそらすことはできなかった。

 娘にそっくりな症状だ……。

 そしてその下には、アンブロシアとの関連を疑う一文があった。

(まさか、アンブロシアが……!!)

 マイケルは眩暈を覚えるほどショックを受けた。

 考えてみれば、この異常な日焼けはアンブロシアの使用が始まってからの事だ。

 なぜ気付かなかったのか……それを考えてマイケルは気付いた。インターネットにはアンブロシアとの関連を疑う一文があったが、新聞やテレビの報道には一切なかった。

 これでは、関心をもって調べなければ気付かないはずだ。

 マイケルは嫌な予感を覚えた。

 まさか、すでに情報統制が行われているのでは……?

「ケリーに連絡を!」

 マイケルはすぐさま電話をとった。


 アンブロシアに非常に近い位置にあって、マイケルとは腹を割って話し合える友人のケリー……彼と連絡がついたのは、翌日の夕刻だった。

「悪い、仕事が忙しくてな」

 マイケルは耳を疑った。

 アンブロシアで多大な利益を出してから、オリンポス社の研究者たちには莫大な給与と余るほどの休日が与えられたはずだ。

 そのケリーが、忙しいとは……。

「やはり、アンブロシアで何かあったな?」

 マイケルが問い詰めると、ケリーはややあって重い口を開いた。

「今から話す事、外部の人間には絶対に漏らすなよ。

 漏らしたら命の保障はないぞ」

 やっぱりか……マイケルは腹立たしさを覚えながらも、聞き耳を立てた。

 ケリーが言うには、アンブロシアと異常な日焼けの関連は数年前から指摘されていたらしい。だがオリンポス社が全力で握りつぶしてきたので、公にはされなかった。

 しかし最近、悠長に様子見という訳にもいかなくなってきたという。

「おまえは知らないと思うが、今世界ではもっと大変なことが起こっている。

 食人病の発生だ」

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