氷の世界
ユーリ視点です!
「きゃあああぁあぁ、イヤ!イヤぁぁ!っあああぁぁあぁ!」
森に入り目的の里の付近に着いた時、聞き覚えのある声が森を木霊した。
叫びに対して、僕はルーチェとチェルシーを見ると2人はうんと頷いたので未だに叫んでる声に向かって走る。
ルーチェはさっき見せてもらったが防御魔法と言うのが使える。どうやら一つ一つ里で伝わっているエルフの力が違うらしく、ルーチェは結界と守りに特化した里の者みたいだ。チェルシーも獣付きの暴走を抑える為に渡していた、自分の魔力吸収のネックレスを外す許可はしている。
獣付きは魔力が高まると扱えきれずに意識がなくなり暴れだすとチェルシーといて分かった。
2人はどの道、邪神を仕留める所を見られたくなかったから不本意だが2人を置いて急いだ。
声がだんだん近づいて目にしたのは7人のエルフが倒れており、1人のエルフが邪神と呼ばれるバケモノ相手に戦っている。
そして、少し離れた場所でさっきまで一緒だった、リーサが上半身だけのナタリーを抱きしめて大粒の涙を流している。
…あぁ、間に合わなかった。
いつもそうだ。《・・・・・・》守る決心をしても守れない。生まれ変わってもまた僕は繰り返すのか?あれ?また?なぜそう浮かんだんだ?
分からない。
リーサの腕に抱えられているナタリーを見る。
心が冷えていく。
この怒りは抑えきれない。
もう、抑えなくて良いよね?
真っ白な世界に変わった森、溢れる魔力により、凍ってしまったようだ。
邪神はこちらを警戒しながらエルフから距離を置く。
しかし、もう意味ない事だ。
邪神の方に手をかざして一言呟くと鋭利な氷の塊が現れ、僕は無言で邪神へ放つ。
3つ程貫通させたら動かなくなった。
形が残っているのも目障りなので邪神を凍らせ、砕いた。
殺ると呆気なかった。
ただ、虚しさしか残らない。
「にぃ様!大丈夫でしたか?」
「ナー!」
周りを見て、チェルシーは近づき、ルーチェはナタリー達の姿を見て目を見開き、不安そうに見てくる。
「にぃ様、間に合わなかったのですね」
「あぁ…」
リーサはナタリーを抱えたまま、ただ涙を流すだけだ。
「ユーにぃ、ナーはそせいダメ?」
「そせい?蘇生か…時間もそれ程たってないから可能なのか?魔法自体はあるけど禁忌とされているし、やった事はないからな」
「にぃ様、私の存在も禁忌とされます。獣付きである私を救ってくれました。ナタリーさんも救えませんか?」
「なら、出来るだけやってみようか」
周りに5人も死んでるんだけど、2人はまだまだ分かってなさそうだね。
簡単に話すと正直、呪文なんてないんだよね。何かを明確にする為にあるようなものだから。炎の生まれ方、水の本質などの自然現象も含めて、この世界の人々が説明出来るかと言えばノーである。方程式や法則などは科学の分野であり、魔法が基本であるこの世界には根付かない。だから真理を求める事を目標にしている魔法師はいつまでも達成できない。科学と魔法があわせればとんでもない事になっていたと思う。話はずれたが魔法の発動は理解してからでないと無理である。だから異世界の記憶を持っている僕は魔法を呼吸するように発動ができるのだ。勇者は異世界から来るから魔法を使える者はこ世界の人々より強いのはその為だ。火の起こり方など知らなくても向こうの世界にはありふれていた。ソレをイメージするだけでもかなりの強さへ変わる。より炎の起こし方、本質、あり方そして、災害など理解したら更に力は強くなる。明確なイメージと知識が魔法の強さへ繋がる。この世界の皆が名前や呪文を唱えるのは本質などの自然現象の説明が出来ないのでイメージを膨らませるためだ。
そして、魂がまだこの世に存在を確認取れたら蘇生出来る。ただ、その蘇生する者を知らないと難しい。
何も言わなくても念じるだけで僕の魔法は完成する。
ただ、後の5人は蘇生出来る確率は低い。1度失敗したら2度目は出来ない。
方法はあるが気がのらない。
後、蘇生術はリヴァイヴァルと命名しとくか。今の魔法も勇者から命名された物ばかりだし。
「リヴァイヴァルの魔法を行うにあたって、一つ問題があるんだ。ナタリーさんは知っているけど、周りの5人は知らない。だから、出来る可能性は低い」
そう伝えると片腕が取れているエルフの女性が近づいてくる。
「本当にできるのですか⁉︎出来るのであれば、私スフィアを持ってます!仲間と撮ったモノなのでソレで少しでも見たら助かる可能性は出ますか?」
「スフィア⁉︎出来る出来る!スフィアって出回りはあるけど不明なメモリーストーンだよね!どこで手に入れたの?」
「アレは私達、エルフの里で作ってます。…とコレです!」
「そうなんだ!いや〜知らなかったよ!ありがとう。ええっと」
「私はメルメルです」
「メルメルさん、ありがとう!初めてスフィアを見たよ。魔力を込めたら見れるんだっけ?…っお!出た!立体映像なんだ。へ〜、凄い技術だなぁ」
スフィアに見とれてしまい、すっかり忘れていた。
「メルメルさん、痛そうだね、ハイヒール」
「私はだいじょー、…へ?」
突然、失った腕が現れたらびっくりしちゃうか。
「体の損失を治しただけだからきにしないで、それより、スフィア初めて見たけどまだあるの?」
「はい、あ、あります」
しどろもどろになるメルメルさん。なんでだろう?
「また今度見せてね!」
「はい、里に来ていただければ何時でも良いですよ」
よし!スフィアをコレから研究しよ!あわよくば戴けないかな?
…とそろそろリーサに抱きつかれて慰めているチェルシーを助けないと。
「ありがとう。君のおかげで助かった。…その、仲間は本当に生き返るのか?」
人は死んだら、マナを放出するのだが、何故かは昔から仮説が立てられ、未だにお偉いさんは研究している。神殿からしたら人は大地に還っていると言うし、他にもあげたらキリがない。それに失われた魔法に蘇生魔法があるのは余り知られてない。蘇生魔法は神のみ出来ると言われていたからだ。出来ない事はないが膨大な魔力が必要だ。普通の魔法使いには出来ないから廃れ消えていった魔法である。
さて、本題に入ろう、僕達はオドがメインであるがマナも扱える。オドとマナは大差ないのだと考えて、死ぬ事により、何らかの変化が起こり、マナになり放出する。ココまでは良い。ちょっと脇道に逸れるけど、精霊ってマナのエネルギー体だよね?ちゃんとコミュニケーション取れる。立派な情報体だ。で、話を戻すけど…あっ、仮説だけどね、オドは情報を蓄えるエネルギー、マナは情報が詰まっているエネルギーと言う考えが出来る。その何らかの変化で変わったマナは情報が詰まっていると仮説をたててだけど僕はソレを魂だと考えている。その魂を使い、蘇生魔法が可能になるんじゃないかな?原理はなんとなくだけどその情報が分からないからマナも分からない。だからこの魔法は自分の知っている者にしか効かないんだと思う。魔法自体は理論が正しければ必ず発動するけどその対象が今回の不安要素だ。知らないから情報が分からないが一番ダメなのだ。
「…ふむ、難しいのだな」
アレ?分からないかな?
見渡すとマイシスターもキョトンとしている。
う〜ん、やはり科学を知らないと説明難しいのかな?
魔法って意外に曖昧なわりに天才肌じゃないと難しい所があるからね。僕みたいな凡人は知識を知らないと無理だ。
「まぁ、見ていてください!」
そう言って、イメージを膨らませる。
エルフの女性で何故か関西弁だったナタリーを含め、6人のイメージを周りに同調させると体からマナらしきエネルギー体が現れた。
そのエネルギー体に魔法を行う。するとそれぞれの体に光が包まれる。アレはヒールみたいだな。確かに死ぬ攻撃を食らったのだから損失を治さないと。しかし、死んだら損失は治り辛い。多分、細胞とかなんたらとコレも科学の領域だ。
しばらくすると、周りのエルフ達が咳込んだり、起き上がり、目を丸くしていた。
しかし、ナタリーが起きない。流石に心配になり、ナタリーを抱え、ハイヒールをかけた。
しかし、まだ起きない。
…失敗したのか?
ちょっと焦ってしまい、揺さぶる。
「ナタリー、ナタリー起きろ、起きてくれ!ナタリー!」
うっと呻き声が聞こえ安心した。
「ナタリー!もう大丈夫だから目を開けてみろ!」
やっと、目が覚めたようだ。
ナタリーも安心した顔をしたのだからコレで良かった。
「ナタリー!本当に良かったわ」
後ろからリーサの声がした。
本当に良かったという雰囲気が伝わってくる。
ナタリーは急に抱きついてくる。
びっくりした!ナタリーはエルフだから凄く綺麗だからドギマギしちゃうね。
でも死にかけたんだ。
嬉しくて抱きついちゃうのも仕方ないね。
後ろからの殺気に苦笑するしかない。
するとナタリーが徐々に近づいてき…え⁉︎
急だったから固まってしまった。
ナタリーとカチっと歯が当たったが柔らかい唇で頭が真っ白になった。
この場が凍った。
…まぁ、物理的にも凍ってるんだけどね!
唇が離れるとナタリーはエヘヘっと笑う。
「これ、ウチのファーストキスやで♪」
「…お、おぅ」
はい、ありがとうございます!でも困惑してしまった。
何が起こっている!
ナタリーを見る。
綺麗だけどナタリーはちょっと幼い。
リーサが170センチ位に対してナタリーは150センチないかも知れない。綺麗だけど可愛いって雰囲気でリーサみたいにツンとした美人で色気むんむんじゃない。
お兄ちゃんにキスしちゃった♪てへって感じにしか見えない。
「ナタリー?」
「リーサ、ウチが弱くてあんたを守れんかった。周りは凍っておるしココは冥界やろ?ユーリが居るのが分からへんけど」
「ナタリー殿、落ち着いて聞いてくれ」
「ん?なんやセリオン」
「実はみんな生きていて、そこのヒューマンが助けてくれたんだ。だから、その…ナタリー殿は生きているのだ」
ナタリーはポカンとしていたけど徐々に顔が真っ赤になり、
「アカーン!これアカンやつや!どうする!どうする?いや、コレは詰みや…もう死にたい」
さっきまで死んでいたのだからその冗談は洒落にならないよ。
「ぼ、僕も初めてだったし、ナタリーみたいな可愛い子が初めてで嬉しいよ」
ナタリーが頭抱えて恥ずかしがっていたのでフォロー。
しかし、どうやら逆効果だったみたいだ。
「ソーヤ、ココデ…ミナヲ…ヤレバイインヤ」
目がすわってる。
コレはまずい!
腰にある剣でナタリーの暴走を回避する。
「全て忘れろー!」
パキンっと音がなる。
「僕の…剣が…」
真っ二つに折れてしまった…
「あっ、えっと」
真っ二つに壊してようやくナタリーは大人しくなった。
「ごめんなさい」
場の雰囲気が気まずくなっていくのはなんでだろう。
「その、良いかな?」
急に知らない声が聞こえる。
「楽しそうな所、すまんの。皆、ちょっと付いてきてもらって良いかな?」
「パパ!」
リーサは嬉しそうに声をあげた。
え?リーサのお父さん?