リーサ 後編
色々付け足していたら遅れちゃいました(´;ω;`)
宿に着いたのですが初めて泊まるのでココはナタリーに任せましょう。
ナタリーはエルフの里が交流が少なくなった後でも街に行ったりしていたはずですので。
私が喋らないのでナタリーは獣人の女性に声をかけました。
「なぁなぁ、うちら今日泊まる宿探しとるねん。ココが良いって聞いて来たんやけど空いてる?」
「あぁ、空いているさ。何泊泊まるんだい?」
「一応、2泊にしとこうかなー。まだ予定が決まっとらんけど追加ありやんな?」
「泊まる分には構わないさ。ココはどの種族も泊まれる宿で通っていても客は少ないからね」
そこで獣人の女性はニコッと笑い八重歯を見せました。
私達もつられて笑い緊張が無くなるのが分かりますわ。やはり、初めての街で宿に泊まるのだけでも気持ちが高まりますね。
「良かったわ〜。断られたらまたユーリに宿を聞きに行かなあかんかったな」
「えぇ、彼の居場所を探すのもまた面倒ですもの」
「⁉︎…あんたら、ユーリ様と知り合いかぃ?」
「「……さま?」」
「あんたら、ユーリ様の事知らないのかい?」
コクコク頷くと宿の女性は話し始めました。
3ヶ月前に急に来た、ヒューマンである銀色の髪の少年と獣人族である銀色の髪の少女が拉致されたり、売られたりと様々な理由で居なくなった獣人族を何十人も連れてこの国に来たらしいです。こっそり帰って来たらしく、門番を掻い潜りバレずに身元に送り届け、一部の獣人族は喜んだそうですが戻って来た事でまた獣人族の仲間がもっと被害を受ける可能性を考えたそうですが彼等はその少年の言葉を聞いて疑ったそうです。
「この辺りの盗賊や闇ギルドが崩壊したらしいからもう大丈夫だよ」
それに戻って来た獣人族やヒューマンもそれに賛同して頷いたのでひとまず保留にしたのですが次の日、街に号外が流れ、長年街の治安を害していた複数のコミュニティーが消滅していたのだと。その後、少年に感謝と忠誠を誓おうと沢山の獣人族が押しかけたが忠誠の代わりにヒューマンには秘密にする事と獣人族の少女は彼の妹として共にしており、その妹とこの街で仲良くしてほしいと逆に頼まれたそうです。
それ以降、獣人族は陰で少年を獣人族の英雄として慕っており、実際に何があったのかは当事者の獣人族と少年しか知らないらしい。
ヒューマンは逆に少年がやったなんて思っていなく国の兵が成した事に祭り上げており、事実上、少年の要求通りになったそうです。
宿の御飯を食べ、3階まで行き奥の部屋が私達の借りた場所になり早く寝床にナタリーと共に戻った後、お互い意図せず会話がユーリの話になりました。
「獣人族の少女を妹として扱うのはヒューマンとしては珍しいのでしょうか?」
「う〜ん、いない事は無いやろうけど世間的に言えばかなり珍しいと思うで。獣人族は今でこそ扱いは良くなったが初めは奴隷扱いが当たり前だったらしいからな。ヒューマンは見栄と支配力が強いから同等に扱ったら意気地なしとか辺りに見えるんちゃうかな?」
「ユーリは力を知られるのが嫌がっている節が見えるのですがそれでも獣人族を助けたのは何故かしら」
「ウチが聞いてもはぐらかしていたし、他のギルドのリーダーやギルマスっちゅうのにも変に関わらない様にしていたから合ってると思うで。多分やけど、獣人族を助ける事によって自分の妹の安全を確保したんやないかな?獣人族は基本はヒューマンより身体能力は高いからなー、自分がいない時の安全をココに来る前から確保してココに居座った。ますます分からん奴やな」
そう言ってナタリーはベッドに倒れこみゲームをし始めたので私も話を止めて、1時間だけしようかなっと思いました。
朝起きると外が煩いのが気になり、「昨日徹夜でタイムアタックしてたんで堪忍してや〜」と言うナタリーを無理やり叩き起し、下に降りると宿の女性が険しい顔をしてます。
「どうやら、昨日の大きな依頼は失敗したらしいさ。黄昏旅団の団長は瀕死、エトワールの団長は片足奪われ、2人がやられて逃げる様に戻ってきたらしいさ。コレはマズイことになったね」
私達も緊張が走ります。
「あの二つのギルドが王族の兵士の抑止欲になっていたからウチらに何も無かったけどコレからココの国も居づらくなるのかね」
「すまんな、ウチらが余計な依頼を頼んだから…」
「それは違うさ。邪神が現れたならこっちに来る可能性があるからこの事は遅かれ早かれなっていた事だから気にする事はないさ」
「ありがとな。ちょっとウチらはでかけてくるわ」
「あぁ、行ってらっしゃい」
急いでギルドに着くと異様な雰囲気が私達を包みました。
「コレは居づらいですわね」
「ウチらに向けるのが殺気じゃないだけ、ココの皆はまともやなぁ。しかし、あの兵士はうちらへ殺気を向けてるんやけどなんでかな」
様子を見ようと話しを耳にしたら予想外の内容でびっくりです。
「どうして、討伐依頼を中止なんだ!俺たちはまだ殺れる!リーダーの仇を取らないと気が収まらねぇ」
「コレは王直々の勅命である。それに貴様ら傭兵崩れで勝てるはずがなかろう」
そう言い、見下す兵士達と即発しそうな冒険者達、私は思わず割り込みました。
「今回は私達の問題を依頼しました。しかし、彼等は自由を武器に私達の問題を助けてくださりました。そんな彼等を侮辱するのは検討違いですわ!貴方方は私達の問題を聞く事すらせずに逃げた臆病ものではありませんーきぁっ⁉︎」
急に腹部に衝撃が来ました。
コレは殴られたのですね。
立とうにも力が入らないです。
「ふん、森の疫病神め!来たと思ったら面倒事を押し付け、自分等で解決出来ないグズめ」
後ろに戦う気配を感じ、手で牽制して私は言いますわ。
「わ、私はどう言われても構いません。しかし、里の皆の侮辱は許しませんわ!これ以上はヒューマンの良い方に申し訳ありませんの。私は貴方と違って一人でも邪神に立ち向かいます!」
そう言って兵士達を睨みます。
「嬢ちゃん良く言った!俺たち、黄昏旅団のメンバーはリーダーの仇を取るまでやるぜ!」
「俺たちエトワールも忘れるな。団長が片足やられてるんだ。ならこっちは両足捥いでやらなゃいけないだろ?」
ココのギルドの方々は少なく共、私が聞いていたヒューマンではないみたいで涙が出てきそうです。
エルフと同じ、仲間を想いやる事が出来る。目の前の方々より余程素晴らしいですわ。
「なら貴様らは仮に帰ってきても処刑だからな。それを考えながらやりな!依頼を受けた奴は《・・・・・・・》覚悟しとけよ」
やはり、兵士はニヤニヤと言うのを止めません。
「おぃおぃ、近衛兵さんよぉ、うちの仲間を虐めないでくれないか?」
「団長!何故いるんですか!」
「あぁ、暇だったから病院抜け出した。ちゃんと松葉杖を使っているから大丈夫だ」
「そう言う訳ではないです」
「そんな事はいいだろう。それより依頼中止の理由はなんだか教えてくれるかい?」
「汚らしいエルフの依頼なんか受けるのがまちがー」
「はっきり言ったらどうだい?怖いと」
「貴様、今の発言撤回するのなら今だぞ?」
「ならどうして、王は人前に出ない?祭り事で見せる魔法も兵にやらすし、コレらを推測すると王は一つの仮説が生まれる。それを貴様らが想像できたなら俺の話はあたりだよな?」
「くだらん、取り敢えず、王への侮辱は罪だ。おら!」
そう言うなり兵士はシリウスさんを殴りつけ、踏みつけ踏みつけ続けます。
私達は他の兵士の牽制で動きが取れない。
また何もできないままです。
悔しい…
「あれ?何揉めているのだろうね?」
ふと、緊張感ある一触即発の場で間抜けだ声を出したのはユーリでした。
「にぃ様、倒れているのはシリウス様ですよ!」
「本当だね。足が無くなったって聞いたけど大丈夫ですか?」
流石に緊張感のないユーリにたえして、苦笑するシリウスさん。
「足が無くて不便だよ。こいつらに遅れを取るくらい大変だ」
「にぃ様、にぃ様、シリウス様はこの間、私が襲われた時に助けてくださったのです。にぃ様の力で治りませんか?」
「シリウスさんに助けてもらったの?それは大きな借りだね。いや〜、シリウスさんが妹がお世話になりましたね」
「貴様、何しに……」
「うん、黙っててくれるかな?今シリウスさんと話しているんだからね?」
そう言うと兵士は後ずさり、結果的にシリウスさんから離す事に成功ですわ。
「チェルシー、すまないがポーチからアレを取ってくれないか?」
そう言うとシリウスの前に立ったユーリに妹ーチェルシーに手持ちのポーチから腕輪を取り出し渡しました。
「シリウスさん、運が良いですよ。コレは2つしかない貴重品なのですが1つは最近使っちゃって無くなったのですがコレがあれば安心です」
そう言い、腕にはめると一言「ハイヒール」と言うと突如シリウスさんの足がはえるように再生され、無かった足がまた戻りました。
そして、腕輪はカシャっと音がなると無残にも砕け散りました。
その光景に誰もが絶句、治されたシリウスさんは当事者だから更にびっくりしているはずです。
この光景に驚かないチェルシーと呼ばれる妹位でしょう。
だって、魔法はあるが魔法を使える者はいないとされているのがこの世界なのであるから。
魔法を使うには魔術、魔方陣などを込める媒介にアーカイブする必要があるのです。
ヒールは現在使い手は居るが数は少なく、ハイヒールは神話の時代に消えた魔法の一つ。故に異質な存在と認識するしかない。