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episode17 ※強制イベント


生徒会長立候補締め切りも差し迫った頃、休み時間に突然花巻先輩に呼び出された。

花巻先輩は終始目をキリッと吊り上げていて怒っているかと思ったが、購買部に連行された後はジュースを奢ってくれた。


「ありがとうございます。花巻先輩、優しい…」


「別に、優しかないわよ」


…前回会った時の激怒っぷりを目の当たりにしていたわけで、先輩の顔色を伺ってちょっとドギマギしてしまう。とりあえず今は怒ってはなさそうだ。


「えーと、き、桐谷先輩は…元気ですか?」


「なんで私に聞くのよ。あんたの方が分かるでしょ、盟友なんだから」


い、言えない…。

桐谷先輩を一方的に拒否してからは、接触しないように拒否っているとか言えない。


すごく感じの悪い酷い事を言ってしまった。そして、仲直りする気はない。

そう覚悟しているのに、SNSのメッセージは溜まっていくしたまに偶然遭遇すると、声をかけてくれる。返信もしないし、逃げるけど。


(『君が好きだよ。本当に』)


あの時の先輩の声と眼差しを思い出すと落ち着かない。桐谷先輩の事だから、猫とかアーケードゲームとかコーヒーとかと同じカテゴリにある【好き】なのだろうとは思うけど、それでも他人から真っ直ぐに与えられる好意は居心地が悪い。怖くて、苦手だ。なんの隠し立ても打算もない純粋な気持ちだろうから余計に。私がうつくしくないものばかりで出来ている事を思い出させる。

好き、なんか言われてしまうと、自分が誰も、好き、ではないと思い知らされる。



花巻先輩はサラッサラの長い髪をかきあげた。シャンプーのいい匂いが香った。


「私は決めたから」


凛とした態度で言い放つ。


「生徒会長に立候補するから」


堂々と宣言した花巻先輩に、素直に感心して頷いた。


「頑張って下さい!私、応援します!」


つい元気を振り絞ってテンション高めに声を張り上げた私に、何故か花巻先輩がくすくす笑っていた。


「違うわよ」


「え…?」


な、何が?私何か勘違いしてました?


「あんたが応援する相手は、私じゃない」


悪戯の成功した子供みたいに、小さく笑い続けながら花巻先輩は答えた。


「だ、誰を…」


同学年で生徒会長に立候補するような人は見当たらない。


「そんなの一人しかいないじゃない」


花巻先輩と視線を合わせて、思い浮かんだ人物は確かに一人しかいなかった。


「…無理じゃないですか。あの人、出ないって決心しているみたいだから。一度決めた事を簡単に取り消してくれるような人じゃないですよ、桐谷先輩は。分かっていると思いますけど」


そうね、と花巻先輩は平然と相槌をうった。


「でも、あんたが出させるのよ。そうするしかないの、これは絶対」


いや、あの、何で私?

私、諸事情により桐谷先輩に接触するのは大変憚られる状況にあるんですけど。


「ジュース、今奢ったでしょ」


「お金なら返しますよ!」


「だめ。可愛い後輩からお金なんか受け取れないわ」


いや、今まさに可愛い後輩を利用しようとしてますよね?


「とにかく、頼んだわよ。タイムリミットは今週中なんだから。なんとか奴をその気にさせて立候補させなさいよ」


そう言い放って、花巻先輩は悠然と購買部をあとにしていってしまった。


「えぇぇ〜…」


なぜ、私ってこんな役回りばっかりなの…?

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