episode11 剥がすと顕れる
まさかのエロ回。
嫌な予感した人は多分その勘は正しいと思われますので、一ヶ月後新章になった時にまたお越し下さい。
動物の鳴き声のようだ。
吐息とも呼べない激しい呼吸音がお互いから漏れ出る。
もう隠しても何の意味もないのに、相手に自分を悟られるのが苦手なのだ。共通して二人とも。
「っはぁ…やば…」
頭だけ妙に冴えていて、自分が今尋常じゃない状態なのが分かる。
ちょっと離れては、食いつかれる。実際、食まれている。もぐもぐ咀嚼されている。
たらり、と熱い液体が溢れる。異常状態な私はそれを反射的に自分の舌で受け取って、足りないと歯列を叩いて挿れてもらう。開いたら、もうやることは一つで、ぐちゃぐちゃにまぐわうだけ。
もう止めないと。もう止めないと。
分かっている。これはおかしい。私でも分かる。
これ以上は下手すると死んじゃう。それくらいのハードさ。
まったく異なって生まれ落ちた人間同士の唇と唇をくっつけようとして、でも当たり前だが全くぴったり接合するなんて有り得なくて。焦れて、怒って、仕方ないから貪り合う。
そういう世にも不毛で愚かしい行為。それがこれ、キス。
「あっつ…」
キスを続けながらもがくようにブレザー脱ぎ捨てる男、猿河氏。
無理矢理脱ぐから、ばっつんと大きな音をたててボタンが弾けたが、それを探そうとする様子もみせない。それどころかボタン取れたのすら気付いてないのかもしれない。
ネクタイを引きちぎるように緩め、ワイシャツも破る勢いで胸元まで開ける。もごもごと私の上で、私の舌を噛みながら。
ふーっ、ふーっ、と相手の荒い鼻息が顔中にかかる。
いつものお高くとまった余裕な姿はまったく消えたしまったような野獣っぷり。
猿河氏―――、猿河修司君とは恋人でもなんでもない。
別にお互い好きだというわけでもない。
猿河氏は絶世の美青年だとは思うし容姿は好きだけど、こんな真似をしたいなど思ったことは一回もない。
だけどどうしてこうなった。
私はといえば。
第二理科室の机の上に仰向けになって片方靴脱げた脚で、自分に伸し掛っている男の腰を掴んでるとか。
いい加減私狂ってしまったんじゃないんだろうか。これはもうビッチと言われても反論出来ない。ビッチ呼ばわりしてるのは、キスに夢中になっている猿河氏だけだけど。
だからこんなことは間違ってもやっちゃいけなかった。
私の信条にも反する、禁忌中の禁忌。
ああ、でも。
「ふっ…ふぁ、う、」
脳味噌とろける。いや、既にどろっどろ。
もう、なにも、かんがえられない。




