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episode29 泥濘


私の正義は既に定まっている。


迷ってばかりで自分の意思がない私はもういない。

それは明確に私の道だ。だって他には道は無い。


その零も結局は私を見捨てた。この世にたったひとりの双子の片割れなのに、彼女は私を捨てて逃げた。また戻って私を連れ出してくれるのかと思えば、そうではない。ただ、私の力だけ目当てなのだ。


どうして私は選ばれない。なんでこの世界に必要とされていない私が残ってしまうのか。


私は天使になったのに。

あんなに憧れてなりたかった天使様は、実際にはひどく利己的で血生臭い。幼い頃に見た零は確かに穢れの知らない綺麗な天使のように見えたのに。私は零みたいになれない。


寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。


胸にあいた孔は塞がるどころか広がっていく。もう埋める術なんかない。この巨大な孔はいつか私を飲み込んでしまうに違いない。自分の幸福はもうずっと前に諦めた。傲慢で貪欲な醜い私は罰を受けなければならない。


訳の分からない理不尽な力を行使できる私は、本当は他人なんかどうでもいい。救いたいと思ったのは、好かれたいだけ必要にされたいだけ。利己的な私は本当に皆を救えないと分かってしまった。


ああ、だけど私にもたったひとつ持っているものがある。

ただひとつの正義、信念。貫くべき意思。

それを妨害するものは排除することも厭わない。それで立ち止まる段階ではない。もはや私は進まなければならない。


(私がこの世界を変えないと)


他に誰も変えてくれないから、私がそうするしかない。私は天使だから。

羽根はもう重くなって汚れてしまって碌に動かない。両足は泥々のぬかるみに沈んでいくようだ。



「天使様、たすけてください」


縋ってくるたくさんの人の手を握り、ひどい罪悪感に襲われる。

私に救いを求めたって、まがい物の私には何にもできないのに。かわいそうに。利用されて。


必ず報いを受ける。いつか膨大な代償を払わなくてはいけない。

破滅は近い。そんな事当たり前すぎて笑えてくる。

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