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episode28 確変

悲しいことに、全ては想定どおりだった。

矛盾しているけれど、うまくいって欲しくはなかった。あの子が本当にあの忌々しい力があるなんて目の当たりしたくはなかった。

ごめんね。それを言える相手はいない。

だからせめてもの償いとして、無駄にはしない。彼女が苦しんだ痛みの分だけ、現状を改善する。そして、全てのことに決着をつける。





「おっどろいた…これが111番の力か…」


キャシーは難なく世界が一巡したことに気づいた。

人造人間ゆえに、能力の効きが悪いのだ。それが厄介でもあるけど。


もさもさと頭を掻いて、何気なく私の頭を鷲掴んで持ち上げた。ティッシュ箱でも持ち上げるみたいにお手軽に。


「どういうつもりだ。モモ、お前は一体なにを企んでいる?111番にみすみす能力に目覚めさせるなど、作戦にはなかったはずだ」


大きさにして、ゆうに2メートルはある巨人に、頭を握りしめられたら、私は簡単に死ぬだろう。そしてこの男は、肉でできたロボットのような生き物だ。組織の意思なら何だってする。


能力者(ブレイカー)は、肉親間で能力の干渉ができる。同じ能力者同士なら、それ以上に力の吸い取りができる。だからお前を連れてきた。しかし、俺の指令を聞かず勝手に動くなら、これ以上この作戦に参加させる訳にはいかない」


「…」


「まぁ、ペケが回復しなければ強制送還することもできないがな。それまでお前が力を使えない程度に傷を負わせて動きを封じればいい」


一巡前と変わらず横たわったままのペケは、寝ているのか気絶しているのか分からない。


「この世界の時間は、歪みを増している。この世は何重何億も重なりあっていて、少しずつ違ったり何もかも違ったりする。例え世界が別でも、無限重なる世界にも影響するんだ。この状況を作り出した111番目の能力者(ブレイカー)を消さねばならない」


覚えているな、と空中でぶん回される。


私たちは、別の世界からこの世界にきた。111番目の能力者の情報を得て。

111番目に見つかった能力者、鬼丸 哀を排除しに。


人とは異なる、しかも強大な能力を持った者は、能力者(ブレイカー)と呼ばれる。

文字通り、世界を破壊するほどの力があるからだ。

私たちがいた世界は、この能力者の力を利用して、あらゆる世界の危機を防いでいる。それを率いているのが、私が所属する組織。

組織は、能力者を発見次第すぐに捕獲し管理する。そして、世界を維持するための駒にする。

能力者は、その瞬間一切の自由も人権も認められなくなる。戸籍も名前すら消えてしまう。番号かコードネームでしか呼ばれない。例えば、私は100番目の能力者だから『百』で、『モモ』と呼ばれている。

それが、不幸せと組織にいる一般人はいうが、そんなことはない。なぜなら、能力者として目覚めた時から、もう人並みには生きられないことを思い知るからだ。組織では、誰も傷付けずに誰にも好奇の目で見られずにいられる。それだけでも、私たちにとっては必要な場所なのだ。


「この作戦の目的は、111番の捕獲。それが叶わないなら、痕跡も残さず殺す。それは、覚えているな?」


組織にまだ知られていない能力者の力の暴走は、よくある話だ。能力は、本人の精神状況に影響する。不安定であればあるほど、その力は強大で自力で制御出来なくなる。

貴重な力ではあるので、組織に入るよう交渉するが、それが失敗すれば、世界の脅威になるから潰される。

111人の能力者が発見されてはいるが、存命しているのはその半分程度しかいないのはこのためだ。


「忘れてないわよ、ウスノロ。彼女の力の分析、彼女の情報の収集はしたわ。繰り返されたこの世界でより有利に動けるように」


別に、キャシーも組織も怖くなどない。命も惜しくない。




「現に、彼女の力の一部を手に入れた」




口にするより先に視界が真っ暗になる。

目を開ければ、キャシーの腕が届かない位置に自分がいた。奴が、目を見開く前に私はその場を去った。


組織や世界など、どうでもいい。私は私の目的の為に動くだけだ。


私は、この世界でやらなければならないことがある。

そのために、私はこの世界に戻ってきたのだと、やっと思い知った。

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