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[extra25 砕けた心]




(『君が好きだよ。本当に。鬼丸君に会えて良かったと思う』)




(『僕が君を好きでいる事を許してよ』)




(『好きだ。鬼丸、お前が好きだ』)





きっと、あなた達には分からないだろう。

決して手に入らないものを、わかっていてもなお恋い焦がれて仕方ないものを、鼻先で煌めきながら誘う光に手を伸ばし続けるしかない人間の気持ちが分からないだろう。そんな人間がいること自体、知りもしないだろう。


欲しかったのだ、特別な誰かを。ずっとずっと手に入れたかったのだ。

自分のためだけに与えられたものを、誰に憚られず使い潰すことを許して欲しかった。

私のひとつひとつの細胞まで全部何一つ残らず、誰かに捧げた後に残酷にいたぶられたいのだ。

このちっぽけな肉体を勝手に押し付ける代わりに、ひとひとりの愛を永久に搾取し続ける権利を奪いたいのだ。



私は歪んでいるだろうか?

この願いは、異常だろうか?



誰に非難されても、私は私の望みを変えられない。捨てても捨てても、抱いてしまう。

決して叶うことはないのに、願わずはいられない。私は屑だ。

仮に私が誰かを望めば、その人は確実に不幸になるのは分かっているのに。それでもひとりで生きることを完全に選択できない。

苦しいほどに寂しいのだ。孤独が恐ろしい。

胸に空いた穴はずっと大きく深くなり続けている。それはいつか私自身も飲み込んでしまうだろう。




(『あなたは、自分のためにだけ生きればいい』)



…本当に?

本当にそんなことができるの?それは許されていいことなのだろうか?



(『あなたは、嫌なことを強要されたり、したいことを妨げられていい存在じゃない。ひとに愛される権利がある、ひとを愛する権利だって。あなたは幸せになるべき人間なの』)


だってそれは、恋や愛と表現するにはあまりに重くて身勝手だ。

私の幸福のために、飢餓感を埋めるために、誰かの人生を踏みにじることになってもいいの?

そんなわけがない。


是、と誰かが答える。

それが誰か分からないけど、私は気にしなかった。


強烈な眠気とともに、自分がゆっくりと発狂していくのが分かった。

嗤っていた。嬉しくて。やっと、食物を喰むことを許された赤子みたいに。

解放的で、愉しく、泣きたいほどに幸福だった。

こんなに最高の気分で眠りに落ちていくのは初めてだった。





『おやすみ、哀。もう休んでいいんだよ』




誰かに額をキスされたような気がした。とても懐かしい感触と匂いがした。

もちろんそんなわけがないのはわかっているけれど。私は寝ぼけて、覚えてもいない誰かの名前を呼んだ。

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