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episode18 イビツサンカク


私の友達のハギっちが犬塚君にオチた。恋に。


ここ数日、改めてハギっちと犬塚君を観察してそう思う。気付くに至ったのは猿河氏の発言がきっかけだが、どうにもハギっちは分かりやすい方だと思う。






「それで、犬塚君がさ…」


彼の名前を出した途端に、ハギっちの顔が急に強張っていく。ぎこちなく歪む笑顔に私までなんだかどぎまぎしてしまう。


「…で、なに?犬塚が?」


「えーと……忘れちゃった!」


なによそれ、とハギっちが吹き出してなんとかその場が丸く収まった。ひとまず安心した。


ハギっちは、犬塚君を好きになってしまった事を認めたくないようだった。さらに、誰にも知られたくないようにも思う。

それは彼女の強気なキャラクターからかもしれないし、体育祭で犬塚君に反抗していた負い目があったからかもしれなかった。


個人的な意見としてはハギっちを応援している。頑張って欲しいと思う。


やっぱりハギっちは私の大事な友達だから。いい子だと思うから。意外と実は犬塚君に似合うと感じるから。

それだけだ。あとはもう、何もない。

だって私はきっぱりすっぱりフラれているし、二人について物申す権利なんかない。


だけど、なんでか胸の中がむずついて仕方がない。すごく気持ち悪い感覚だ。嫌だと思う自分なんかいない。そんなのが存在していたら私は私が許せない。立派な裏切りだ。

犬塚君の事なんかどうでもいい。そもそも、彼にとって私はそういうのに全く見られていないし、既にフラれているし。



「鬼丸、お前最近なんか変だぞ。どうかしたか?」


犬塚君は人の気持ちも知らずに呑気にしている。

意図的に距離感をはかっている私に、不思議に思っているようだ。天然か。天然キャラは桐谷先輩で間に合ってるんだよ、ばかやろう。

私のどろどろした感情になんか犬塚君は気付かない。


「あの、お弁当とか、もういいから。ていうか…」


栄養バランス完璧のお弁当を相変わらず犬塚君が持ってきてくれるが、そういうのが誤解のもとになるからやめて欲しい。自分勝手で申し訳ないが。


「ハギっちに作ってあげたらいいんじゃないかなー?ハギっち、スポーツやるしお昼は購買で済ませてるからかなり喜んで貰えると思うなぁ」


「あ?なんで萩原だよ。つーかあいつ俺が作った弁当なんか食わないだろ」


食わないだろキリッ、じゃない。

私の感情を知らないどころか、犬塚君はハギっちの心境の変化にすら気付いていないから事態は厄介だ。


「ていうか、鬼丸には拒否権ないからな。お前がもっとしっかりして自分で野菜摂取出来るようになったらやめてやる。つーか今日鍋やるからウチに来い。泊まっていいから」


だからさぁ…。

犬塚君は基本私に信用がない。私が、犬塚君の助けがなければ生きていけないように思っている節がある。

そういうの一番困るやつだから。何故に犬塚君が私を介護しなきゃならないのだ。私の事をペットだか妹だか思っているらしいが、あかの他人の君にそんな事をする義務はない。


ハギっちの私の信用の為にも、犬塚君に表面下で起こっている事を理解させなきゃいけない。歪な三角形ができあがる前に。

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