プロローグ
愛していると、好きだと言葉にして吐いてしまうのは簡単だけど
すごく大変なことだと私は思うのだ。
他人を慈しむのは、受け入れるのは、受け入れられるのは、一緒にいて幸せだと思うのは難しい。
私にはとてもできる気がしない。自分のことで精一杯で、気を回す余裕もない。
だから誰かを好きになんてなれないし、きっと誰も私を好きになれない。
誰かを愛せる人間は特別な人だ。もしくは私が他の人より決定的に劣っているのだ。
それに愛される価値もない。
グズで不器用。求められることを何一つ返せない。
私だけが知っている私は、とても醜い。
誰も私に近づかないで欲しい。
私を見つけないで欲しい。
この世に人間なんてごまんといる。私じゃなければいけないなんてことはないだろう。
大丈夫だから。私は一人で生きていける。
どんなものも欲しがらない。誰も傷つけたくない。何も壊したくない。
罰ならいくらでも受け入れる。
弱音も吐かない。
だから。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
また失敗してしまった。だからやり直します。
もうどうしたらいいのか分からないんです。
いくら謝っても足りない。歪ませてしまった世界に、あの人たちに。
ゆらゆらと波に攫われる。
私は目を閉じて、そして直ぐに眠ってしまうんだろう。
その僅か一瞬、いるのかいないのか分からない神様に祈るくらいしか出来ない。
どうかどうか、救ってください。
あの人たちを、あの人たちの未来を。