07 最終イベント?
私は先生に頼まれて、職員室から教室へプリントを運んでいた。
その時何やら話し声が聞こえたので見てみると、生徒会室の前である二人が話し合っていた。
私達の教室は廊下を挟んで生徒会室の隣なので、自然と見ることになる。
誰だと思ってよく見てみると、攻略キャラである三年生の戸根河龍次と一年生の佐野宮蓮がいた。
(何であの二人が…?)
あの二人が出会うためには、まず香里奈が一人ずつ会っていないとならない。
だけど香里奈がどちらかと会ったという場面を私は知らない。
(だったらどうしてこの場面が発生してるの? いくらなんでも早すぎる)
とりあえずその場から離れようと思って歩き出した時、足が滑って音をたてて派手に転んでしまった。
その瞬間、こっちに向かって走ってくる足音が二つ。
「おい、大丈夫か!?」
上から声が聞こえたので顔を上げてみると、目の前にしゃがんで私の安否を確認している戸根河龍次と、立ったままの状態で心配そうに私を見ている佐野宮蓮がいた。
さて、どうしようか。このままだと私は保健室に連れて行かれてしまうだろう。それはごめんだ。
となれば、すぐさまここを去るしかないだろう。
「大丈夫ですありがとうございますそれでは」
「待て」
私は息をしないで早口でお礼を言って去ろうとしたが、その前に龍次に腕を掴まれてしまった。
何だと思って振り向いて首を傾げると、とても真剣な目で私を見てきた。
「お前、さっきの話を聞いていたか?」
「さっきの、話……?」
「いや、聞いていないんだったらいいんだ。悪かった」
「はぁ……」
なんのことかわからずさらに首を傾げながら、いつの間にか拾ってくれていたプリントを受け取ってその場を去った。
そして同時に私の頭の中にゲームの内容が浮かんできた。
そうだ。さっきのは蓮が龍次に『生徒会の秘密』を話して、自分と真沙斗を生徒会に入れてほしいと頼んでいた場面だ。
思い出したのが今で良かった。でなければ返答に困っていたところだったから。
私はほっとして小さな溜め息をついた。
しかし、それと同時にやばいことをしたかもしれないと思った。
さっきの場面。あれがもし出会いイベントだったら、またしても佐渡山愛留奈にフラグがたってしまう可能性があるのだから。
そう、この時私は気づいていたかったのだ。
今までのは出来事は、まだ序章にすぎなかったことに――――。
次回、新章に突入します。