04 まさかの脇役イベント
一言で言うと、この状況は修羅場だ。
「ねぇねぇ、香里奈ちゃんは好きな人とかいるのー?」
「俺としては愛留奈さんも気になるんだけど」
「いてもいなくても私達の勝手です。はい、愛留奈ちゃん! あーん♪」
さっきの会話で香里奈に対するフラグがたった幸宏がニコニコと話しかけ、それに便乗するかのように拓磨が私に話しかけ、香里奈が適当に促しながら私に朝食を食べさせようとする。
それをただ黙って見ていることしか出来ない私は、とりあえず香里奈に朝食を食べさせてもらっていた。
そんな中、この状況に乱入してくる人物がいた。
「へぇ……何やら面白そうな会話をしてんじゃねーか。俺も混ぜろよ」
そう言いながら幸宏の隣にドカッと座ったのは美野原静悟。
こう言う修羅場や不穏な空気を見ると、どうしても乱入してニヤニヤしながら見ていたいというのが彼の主張であり、彼の性格でもある。
そんなのもお構いなしに三人の会話はさらにヒートアップ。私は頭がすごく混乱してきた。
さすがにどうしようかと悩んでいると、いきなり何かが落ちたような音がした。
振り向いてみると、そこには食器を落としてしまった下級生の男子がいた。
それを好機と思った私は急いで彼の近くに行って食器を一緒に拾い、終わった瞬間食堂から逃げ出した。
『あーっ! 愛留奈ちゃんがどこかに逃げちゃったー!』
『香里奈ちゃん、どうなの? いるの?』
『ついでに愛留奈さんがいるかも教えてくれない?』
『ちょっと黙っててください! さっきからうるさいです!』
『やっぱり香里奈ちゃんは気が強いなぁ♪』
逃げている間にも香里奈が幸宏のフラグをたてていたが、そんなの構っていられない!
私は屋上へと続く階段を全力疾走した。
屋上について荒い息を整えながら、ゆっくりと屋上の扉を開けた。
そこには誰もいなくて私の貸切状態と言ってもおかしくない状況であり、周りを見渡しながらフェンスの近くに座った。
「……………」
私は空を見上げながらこれまでのことを振り返った。
一番最初の自己紹介。あれはゲーム通りに進んだ。
進んだからこそ、今こうして主人公の三宅香里奈と仲良くしていられている。
次に三宅香里奈が藍原拓磨と美野原静悟と出会うイベント。あれもゲーム通りだ。
しかし問題は、さっきの食堂での出来事だ。
三宅香里奈が風間幸宏と出会うのはまだ先だし、その場所も食堂ではない。
しかもその時は佐渡山愛留奈という人物はいなかった。ゲームでは香里奈が一人でいる時に出会うはずなのだ。
それに拓磨の態度もおかしい。
ゲームでは佐渡山愛留奈の情報を聞くことなどしなかったし、あんなに接近することもなかった。
なら、一体どこで選択を誤ってしまったんだ?
そう考えていると、私は何故かさっき食器を落としてしまっていた下級生を思い出した。
(そう言えば、どこかで見たような顔だったような気が……)
そこまで考えて、私は自分がどこにいるのかを思い出した。
私がいるのは屋上。
そしてこの時間帯は主人公と攻略キャラが出会う時間帯。
まずいと思ったがその時は既に遅し。
ギィ…と屋上の扉が開いた。
その人物を見て、私はさっきの食堂での出来事を思い出した。
そこにいたのは食堂で食器を落としてしまっていた、攻略キャラの一人である――米原真沙斗がいた。