03 ふとした疑問
「愛留奈ちゃん、おっはよー!」
ボフッ
そう言いながら私が寝ているベッドの毛布の上にダイブしてきたのは同じ部屋……正確に言うと、同じ家に住んでいる三宅香里奈。
彼女は幼い頃に両親をなくしたため、今までは親戚の家に居候していた。
それを(最初から知っていたが)聞いた私は、香里奈に私の家に来るように勧めた。
最初は遠慮していた香里奈だったが、とある人物の説得のおかげで私の家に居候している。
部屋は香里奈が「同じ部屋にさせて!」と言ってきたので、私の部屋で一緒に寝ている。
すると香里奈は毛布の上にダイブすることを習慣にすると決めたのか、朝に毎度このような行動に移っている。
最初はいきなりすぎでかなり苦しかったが、今はもう慣れてしまっている。
しかしどうしても慣れないのは、朝起きる時間が早いということ。
普通は学校に行く準備を含んだとしても7時半に起きれば大抵は間に合う。
ところが主人公は昔早く起きていたせいもあり、学校がある日は必ず6時に、学校がない日でも8時には起こしてくる。
佐渡山愛留奈というキャラは勿論のこと、前世の私も朝が苦手なため、いつもギリギリまで寝ていたいという衝動にかられる。
しかし今そう愚痴っていても仕方ない。さっさと起きて食堂に朝食を食べに行こう。
そう思った私は、急かす香里奈を適当に促して学校に行く準備をした。
朝の食堂は人があまりいない。
それもそうだろう。大抵の人はまだ寝ているか、部活によっては練習をしている。そのため、この時間に食堂を利用する人はとても少ない。
私は気分でメニューを決めて、いつもの定位置に座った。
しばらくしてから香里奈も私の方へ来て私の隣に座る。これも定位置となっている。
普通なら香里奈が一方的に私に話しかけてきて時間を過ごすのだが、今日は私の向かいの席に人が座った。
顔を上げてみるとこっちを見てニコニコ微笑んでいる、ゲームの攻略キャラがいた。
「僕もここで食べていいかな? 一人でって悲しいんだよねー」
「あ、はい。別に良いですけど……誰ですか?」
香里奈がバッサリそう言うと顔がさらに笑顔になった。
おお、早速フラグがたった。さすがは主人公。
「僕は風間幸宏。生徒会役員の三年生だよ♪」
そう、彼も攻略キャラであり、生徒会役員の一人だ。
しかし、おかしい。彼が主人公と出会うのはまだ先で、方法も食堂ではなかったはずだ。
だが気にしても仕方ないだろう。
絶好の機会なんだ。私はこの場から去って一人で食べるのが良いだろう。
そう思った私は音をたてないように立ち上がろうとしたが、それは後ろから来たある人物によって遮られた。
肩に何かが乗る感触。見てみるとそれは誰かの手だった。
「ねぇ、俺も一緒に食べていいかな?」
ゆっくり顔を上げると、そこには藍原拓磨がいた。
「あれ、拓磨君……どうして、愛留奈ちゃんの肩を掴んでるの?」
そう言って拓磨の手を振り払って私をギュッと抱きしめた。
おかしい。おかしすぎる。
こんな場面、ゲームでは全く無かったのに。
どうしてこのメンバーが、食堂で出会うんだ?
私は香里奈に抱きしめられた状態で、それだけを考えていた。