16 モンブランはお好きですか?
私が買ったモンブランをモグモグと食べいる時、皆は無言で私を見ていた。
その視線に気づいたので首を傾げつつも、やっぱりモンブランをモグモグと食べていた。
そんな空気に我慢出来なくなったのか、静悟は自分の頭を掻いてから私に話しかけた。
「お前、モンブランが好きなのか?」
「うん」
「……………あっそ」
ん? 今の返事、私らしくなかったか? 普段は『はい』とかだし。
それに香里奈と拓磨と静悟と真沙斗と蓮は顔を若干赤くしてるけど、どうしたんだろうか?
再び私が首を傾げると、それを見ていた龍次が溜め息をついた。
「佐渡山は鈍感なんだな……」
「拓磨達、大変だねぇ。頑張ってねぇ♪」
「???」
鈍感? 私が? どうして?
私はその理由を聞こうと思って龍次に話しかけようと身を乗り出すが、モンブランが視界に入ったので後で聞くことにした。
私は笑顔を隠さずにモンブランを口に含んだ。ん、美味しい。
すると拓磨が財布を持って席から立ち上がった。それと一緒に私に微笑む。
「そんなに美味しいなら、俺も買ってみようかな。愛留奈さんの顔、すごい綻んでるし」
「……もしかして、藍原君も好きなんですか? モンブランが」
「ん、好きな方ではあるよ」
「本当!? モンブランって、すごく美味しいよね♪」
拓磨の『モンブランが好き』という言葉を聞いて、私は思わず拓磨の手を握ってしまった。
その行動に驚いた拓磨は、目をパチクリさせている。
周りでそれを見ていた六人のうちの香里奈と静悟と真沙斗と蓮は動作が停止し、手に何かを持っていた人はそれを落としていた。
そこから更に遠くから視線を送るように見ていた龍次と幸宏は、溜め息をついたりこれから起こることを楽しみに待っていたりしていた。
そこから時が進んだかのようにして、香里奈と静悟と真沙斗と蓮が立ち上がった。
「わ、わわわ私も買ってみようかな! ほら、すごく美味しいみたいだしね!」
「お、俺は甘い物は苦手だけど、モンブランは平気だしな!」
「俺は最初からモンブランが好きですから」
「ぼ、僕も大好きですよ! も、モンブランが! 今買おうか悩んでたところだったんです!」
「私だって悩んでたもん!」
何故か取り繕うかのように次々と言葉を紡いでいく四人。
しかし紡いでいるうちにどんどんヒートアップしていき、最終的には拓磨も加わって言い争いへと発展した。
どうしてそんなことをしているのかわからなかったので、とりあえず首を傾げた。すると龍次が
「佐渡山、あいつらの気持ちを理解してやってくれ……」
と言い、私の知っている中では本日三度目の溜め息をついた。
しばらくして落ち着いたのか、最後は私と香里奈と拓磨と静悟と真沙斗と蓮でモンブランを買った。
うん、やっぱりモンブランは美味しいなぁ♪