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勘違い少女と主人公達のSTORY  作者: 沙由梨
第2章 狂い始めた物語
16/31

15 午前のテスト終了

「愛留奈ぁー! 話したかったよぉー!」


午前のテストが終わって昼休みになった途端、いきなり香里奈が抱きついてきた。


この時私は午前だけでもテストが終わったことの安堵感と疲労感から、避けることも身構えることも出来なかった。


「うっ……」


「やっぱり愛留奈サイコー! 皆がテストで良い点数取るために空気をビリビリさせてたから話しかけたくても話しかけられなかったから寂しかったよー!」


「朝、一緒に登校、したでしょ……うぐっ」


「朝『しか』会ってないんだよ! 愛留奈は寂しくなかったの!?」


まずい、首がかなり絞まってる。苦しい。下手したら死ぬ。


私は一生懸命に香里奈の体を叩くが、香里奈はそれに気づかずにさらに首を絞める。



まずい。これは本当にまずい。



そう思った時、苦しみから解放されたと同時に浮遊感があった。


後ろを向いてみると、そこには私を優しく抱きしめてニコリと微笑んでいる拓磨がいた。


「愛留奈さん、平気?」


「あ、はい。ありがとうございます」


「どういたしまして」


そう言うと、私を床にゆっくりと降ろした。


それを見ていた香里奈の顔が徐々に申し訳なさそうな顔になっていった。


香里奈は小走りで私の前に来ると、1度戸惑ってからさっきよりも私を優しく抱きしめた。


「ごめんね。私、愛留奈が苦しんでるのに気づかなくて……」


「大丈夫だよ。気にしないで。それよりもお昼、どうするの?」


「食堂で食べる!」


ガバッと香里奈は顔を思いきり上げた。


そして今度は私の前を歩きつつも、私の歩調に合わせてくれた。おぉ、ありがたい。


………ま、後ろにはいつも通り拓磨と静悟がいるわけだが。



この後さらに先輩ズ&後輩ズと合流し、いつも通り食堂で食べることになった。







「テスト、どうだった?」


お昼を食べていると、何となく出るだろうと予測していたテストの話を幸宏がくり出した。


周りを見てみると、人によって表情が違っていた。


そんな中、香里奈がフフンという効果音が付きそうなくらい体を反らし、腰に手を当てて言った。


「私は数学が特に出来ましたよ。なんたって、愛留奈に教えてもらいましたからね♪」


そう、ゲームでは苦手科目がない学年首席である香里奈が、現実では数学が全くと言っていいほど出来なかったのだ。


逆に私は前世で数学が出来ていたお陰か、今回数学の問題がスラスラと解けたのだ。


だから私と香里奈で勉強する時は私が香里奈に数学を教え、香里奈が私に他の教科を教えてもらった。


その方法で私もかなり良い点が取れてると思うし、香里奈も出来ない数学の分が上がるからまさに一石二鳥だ。


「へぇ、それじゃあ点数と順位に期待だね♪」


「……明日のテストのために、倍勉強するか……」


幸宏が笑顔でそう言い、拓磨の隣では静悟がブツブツ呟いていた。


私は再び食事を進めようと手を食器に伸ばした、その時だった。




「あ、見て! モンブランがメニューに追加されてる!」









――――ピクリ。




何処からか聞こえた声に、私は動きを止めた。


それを見ていた香里奈と生徒会役員は首を傾げながら私を見る。


そんなのもお構い無しに、私はものすごい速さで食堂のおばさんに聞いた。


「メニューにモンブランが追加されたって、本当ですか?」


「ああ、追加されたよ。食べるかい?」


「勿論です」


そう言って私はお金を払い、代わりにモンブランを受け取った。


私はそれを崩さないように気をつけながら、それでも素早く席に戻った。


そんな私を見て皆が呆然としているが、今の私にはそんなこと眼中になかった。



この時の私の眼中にはただ1つ、さっき買ったモンブランしかなかった。



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