14 秘密の暴露
三人称で、生徒会室の出来事です。
愛留奈と真沙斗が仲良く会話していた時、生徒会室では皆が香里奈に話しかけていた。
それもそうだろう。今まであんなに愛留奈に依存していた香里奈が、真沙斗と二人で話すことを許可したのだから。
しかしその問いに香里奈は首を傾げながら答えた。
「え、だって真沙斗君は愛留奈が好きみたいですし……。それに、愛留奈に恋人が出来たら私も嬉しいですから♪」
香里奈がそう言うと、五人は目を見開いた。
しかしすぐに笑顔になり、幸宏は香里奈に抱きついた。
「香里奈ちゃんえらい! さすがは僕のお嫁さんだよ!」
「ちょっ!? 私先輩の妻になるなんて一言も言ってないんですけど!? 離れてください!」
そんな香里奈と幸宏のやり取りが当たり前のようになっていくのを微笑ましく見ていた拓磨が、同じ様に微笑ましく見ていた龍次に小声で話しかけた。
「先輩、とりあえず香里奈ちゃんが『学園の秘密』を知っているとは思えないんですけど……」
「いや、知らなそうに見えて実は知っているという可能性も有り得る。やはり確かめるのが妥当だろう」
「でも、どうやって?」
「俺に任せてくださいよ」
すると話を聞いていた蓮がそう言った。
二人は一瞬蓮に訝しげな視線を送ったが、蓮が自信気な顔をしていたので任せることにした。
それを理解した蓮は二人にお辞儀をして、香里奈に話しかけた。
「香里奈先輩、こんな話を知っていますか?」
「どんな話?」
「とある学園に秘密がある、という話です」
蓮がそう言うと、香里奈は首を傾げて「知らない」と言った。
そんな香里奈に蓮は微笑みながら頷き、一度龍次達の方を見て、再び話を進めた。
「その学園には生徒会があるんです。しかしその話によると、その生徒会に秘密があるらしいんです。その生徒会役員、見た目は全員人間なんですが、本当の正体はすごいらしいんです」
「え、人間じゃないの?」
香里奈の問いに蓮は目を閉じながら首を横に振り、再び目を開いて答えた。
「その生徒会の正体は、実は『妖怪』なんだそうです」
蓮の言ったことに香里奈は目を見開き、龍次と拓磨と静悟と幸宏は顔をひきつらせた。
今蓮が言ったことは、龍次達の言う『学園の秘密』……つまり、龍次達の秘密だったのだ。
蓮が言った通り龍次達は人間ではなく、妖怪なのだ。
しかしそれを知っているのは生徒会役員のみである。龍次達が妖怪であることは、先生達にも隠しているのだ。
しかしそれと同時に、何故蓮がこの話を持ちかけたのかを理解した。
もし香里奈が秘密を知っているなら、今の話に何らかの反応を示すと蓮は考えたのだ。
だから蓮は自分達のことを、あえて『聞いた話』として香里奈に持ちかけた。
その瞬間、龍次達は一斉に香里奈の方を見た。
香里奈は目を見開いた状態で呆然としていたが、それが段々崩れていき、最終的には顔を輝かせた。
「妖怪なんですか! それは是非会ってみたいです! あ、でもやっぱり人間の姿だから意味ない? でも会えるなら会いたいなぁ♪」
その言葉に今度は龍次達が呆然としていた。
まさかこの話を聞いて怯えたり怖がったりすることもなく、逆に会いたいと言い出すとは思っていなかったからだ。
しかしその反面、心の中ではほっとしていた。
この様子からして、香里奈は秘密を知らないと思ったからだ。
「あ、そうだ! この話、愛留奈にも…」
「え!?」
「それは駄目だ! ほら、愛留奈さんは怖がるかもしれないし!」
香里奈が愛留奈にも話そうと言ったので、拓磨は慌てて禁止令を出した。
今回は香里奈だけだったから『作り話』として終わることが出来た。
しかし愛留奈は嫌なときは表情に出るが、こう言ったことについての反応は表情に出にくい。
だから後に話すことになったとしても、今はまだ早いと思ったのだ。
香里奈は最初は話したいと駄々をこねていたが、また生徒会室で勉強会をしても良いと言ったらなんとか納得してくれた。
そして最後は「愛留奈に会いたい!」という言葉を残して去っていった。
この時、五人が深い溜め息をついたのは言うまでもないだろう。