10 愛留奈と香里奈について
三人称です。
愛留奈と香里奈が帰った後、生徒会役員六人は残っていた。
二人が帰った後に役員達も帰るために準備をしていたのだが、龍次に呼び止められて残っていたのだ。
「そんで、何で残したんすか? 早く帰りたいング!」
「はいストップ。すみません、会長。ですが俺も静悟の意見に同意します。どうして残したんですか?」
「気にするな。そして残した理由…いや、議題は――
佐渡山愛留奈と三宅香里奈に『生徒会の秘密』を話すか話さないかについてだ」
龍次がそう言った瞬間……和やかな空気が一気に凍りついた。
龍次が言った意味、それは逆に言えば学園が残るかどうかを指しても過言ではないくらい大事であった。
だからこの事は生徒は勿論、先生でも複数の人間しか知らないのだ。
そんな事を、出会って数週間しか経っていない彼女達に話すかどうかを議題にしたのが驚きだったのだ。
この発言に誰もが呆然としていたが、最初に意識を覚醒させた真沙斗が聞いた。
「あの、どうして話そうなんて思ったんですか? 先輩達はその事に全く関わっていません。なのに、どうして?」
普通なら、真沙斗の疑問が最もだろう。
真沙斗と蓮だって秘密を知っていたり、関わっていたから生徒会に入っているのだ。
だけど全く関わっていない二人に秘密を明かすという理由が考えてもわからないのだ。
そんな五人に説明するようにわかりやすく話し始めた。
「確かに彼女達は全く関わっていない。入れない方が身のためでもあるだろう」
「だったらどうして……」
「俺が気になっているのは…佐渡山愛留奈なんだ」
「え、愛留奈さんが?」
「彼女はさっきも言った通り全く関わっていない。しかし、何かが他の生徒と違うんだ。生徒会に興味がない、というのもあるが……根本的な何かが違う気がするんだ。その点では、三宅香里奈も同じなんだが……」
龍次はそこまで言うと、愛留奈と香里奈のことを考え始めた。
龍次は今まで女子に興味が全くなかった。しかし、どうしても愛留奈と香里奈のことが気になって仕方ないのだ。
(くそっ、何が違うんだ? 女なんて誰も同じだと思っていたのに……。俺をこんなに悩ませる女なんて、あの二人が初めてだ)
ついにイライラが募り、龍次は机を思いきり叩いた。
それに驚いた拓磨と真沙斗が肩をビクッと震わせる。
結局この時の生徒会役員は、さっきの龍次の言葉が気になってしまっており、最終確認で見回りに来た先生に見つかった十時過ぎまで愛留奈と香里奈について考えていた。
そして同時刻、話のメインとなっていた愛留奈と香里奈は疲れがでたのかぐっすりと眠っていたのだった。