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俺は神だ!

作者: ひーらぎ

2012年1月14日お題バトル参加作品

制限時間:1時間

◇お題◇

大喜利、■野球■、■扉■、▲破壊▲、■創造■、■猫■、くるま、お菓子、飼育、■新聞■、カフェ、電話、膨張

(■内が使用お題、▲内が自分で出したお題です)

 俺はこの世界の神である。

 この広大なる宇宙の全ては俺が■創造■したものである。もちろん地球も、海も、大地も、植物も、動物も、ついにこの前人口70億人を突破した人間も、俺が創り出したものである。

 みんな仏教だのキリスト教だのイスラム教だのを信じているが、実にばかばかしい。崇めるなら全てを生み出した俺をこそ崇めるべきなのである。メッカの方角に礼拝なんかしている暇があったら俺を拝むべきである。初詣で賽銭箱に投げ入れる小銭だって俺に投げるべきである。

「たけし! 起きなさい! たけし! 今何時だと思ってんの! 遅刻するわよ!」

 一階で女がわめく声がした。俺は布団を頭からかぶり直し、部屋の■扉■に背を向ける形でごろりと寝返りをうった。

 枕元の目覚ましは7:30をさしている。神である俺の完璧な計算によれば、あと10分は布団の中で丸まっていられるはずなのである。それで充分高校には間に合う。階下で喚く女はどうにもせっかちでいけない。何事も余裕を持って取り組まなければ充実した生活は送れないというのに。

「たけし! 何やってんの! たけし!」

 しかし女があまりにもうるさいので、俺は仕方なく起き上がった。

 朝の冷たい空気が肌を刺す。冬をこんなにも寒い季節にしてしまった数億年前の自分を軽く呪いながら洗面所に向かった。



「たけし。ほら何ボーッとしてるの。早く食べなきゃベーコンエッグ冷めちゃうわよ」

 今この場において俺の母親である女は、エプロンに覆われたでっぷりとした腹を揺らしながら俺を急かした。16年前に聖母として選んだときはB90・W60・H95のハイパーマグナムボディだったが、神である俺の無謬なる目によると、今はB100・W80・H110は余裕だろう。

 こんなはずじゃなかった、と正直思わないでもない。

「ほら、トマトサラダも食べなさい。朝からちゃんとビタミン摂らないとって『ためすとバッテン』で言ってたわよ」

 さっきも言った通り俺は神である。

 それがなぜこんな宇宙の片隅で、一家庭の一高校生として生活しているのかは言えない。蒙昧なる人間には理解できない深遠にして遠大なる計画の一環と言っておこう。

「……母さん、この卵裏っかわ焦げてるよ」

「文句あるなら自分で作りなさいよ」

 何が言いたいかというとこれは仮の姿なのだ。母親にせかされながら裏側の焦げたベーコンエッグをつついているのは単に世をしのんでいるからに過ぎない。そのうちズバーッと目覚めてゴーッとなってガーッとなってババーンと世界に力を示すのだ。そのうち。

 苦い焦げの部分の食感と味を必死に無視しながら、俺は食卓の向こうのテレビに目をやった。

 昨日の■野球■の試合の結果がそろそろ終わる。俺の予想ではそろそろ、昨日ツイッターで話題になった事件が報じられるはずだった。

『昨夜未明オスマンプロダクションは、モデルの小島サユキさんが1月12日に、俳優の葉山マサルさんと入籍していたと発表しました……』

「小島サユキってあんたが好き好き言ってた子じゃない?」

 『セロリを残すな』とジェスチャーで示しながら母親が言った。

 好き好きとかそういう問題ではない。小島サユキはまさに現代のヴィーナスだ。おっと思わず他宗教の神の名を出してしまったがつまりはそのくらいビュデホーということだ。

 現代を生きる人間たちの中で最も美しい彼女は当然ながら神である俺とこそ結ばれるべきなのに、葉山マサル、つい最近月9でちょっとヒットしたばかりの三流役者がかっさらっていってしまった。万死に値する。そんなわけで今日は明け方近くまでタイムライン上のサユキクラスタと「葉山死ね」コールに励んでいたのだ。だから眠い。

「たけし。お前テレビもいいが、少しは■新聞■も読まないとだぞ」

 煙草をくゆらせながら言ったのは、今この場における俺の父親である。

「テレビのニュース程度じゃ世界で本当に何が起こってるかは分からないんだ。父さんなんか若い頃はな……」

 俺はトマトを口に突っ込み、父親の説教を受け流した。こうなるとこの男は長いのだ。

 サユキと葉山のニュースは案外軽く触れられただけで終わり、次は中東の宗教紛争に関するニュースに移り変わった。

 これについては、俺は興味がない。だいたい世界全てが俺を崇め奉り全財産を寄付する勢いで帰依すれば全て終わることなのに、いつまでも教えがどうだの信仰がどうだの父祖の地がどうだのと争ってる方が悪いのだ。

 全能である俺の力をもってすれば、紛争の原因になっている地を▲破壊▲して落ち着かせることなどたやすい。ちょっと念じれば空からレーザー的な光がやってきてバキューン、ジエンドだ。多分。3000年くらいやってないけどそうなる多分。こんなくだらない問題心底どうでもいいので放置しているだけだ。本当だ。

 サラダの皿に残ったセロリをどう処理しようか考えていると、飼い■猫■のエカチェリーナがにゃ~んと鳴きながら足元に寄ってきた。

 何かもらえると思ったらしい。テーブルの下からこっそりとセロリをちらつかせると、フンフンと匂いをかいでからプイッとそっぽを向いてしまった。どうして俺は猫を創造したとき主食をセロリにしなかったのだろう。




 母親の早く行きなさいコールに追い立てられて、15分後に俺は家を出た。セロリは結局迷ったあげくにブレザーのポケットに突っ込んだ。

「たけしー」

「あ、みのるじゃん。おはよ」

 校門まであと3分というところで、小学校からの親友の滝沢みのると出くわした。

「テスト勉強進んでる?」

「よゆー。ってか俺神だからさー、この世の全ては俺が創ったんだし、楽勝? みたいな?」

「あっはははは。お前あいっかわらず面白いなー」

 みのるは人に身をやつした神である俺の、この世界で唯一の理解者だ。その友誼に敬意と感謝を表して神であることを明かしたのが中1のときのこと、以来すばらしき友情を日々築きつづけている。

「しいて言えば日本史がビミョーかなー。さすがの神たる俺でもそんな細かいことまで覚えてねーし! みたいな!」

「あっはっはっはっはっは」

 俺は神である。この世に人の子として降臨して16年が経つ。

 ただの高校生に見えるがそれは仮の姿だ。今に本来の神たる力をズコバーンと発揮して、ドーンとズギャーンとババババーンと世界にこの力を示すのだ。

 その時が来るまでせいぜい平穏に幸福に生きるとしよう。

 え、その時っていつかって?

 ……ノーコメント。

お題バトルは10回以上やってますが、完結させられたのはたぶんこれで2回目か3回目くらいかもしれません。それくらい延長・途中提出の常習犯です。

見返すと色々粗も多いけどとりあえずは完結させられただけでホッとしてます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こういう野郎がわりと好きだったりします(笑)  さて、いつその力を発揮してくれるんだろうな??^^なんちゃって!  親友の滝沢くん、いいやつですね。たぶん。そうだと信じています。
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