05#三人目
「…誰?」
顔を上げた女は静かに聞いてきた。
白衣を纏い、髪は綺麗な黒髪のショートカットに男なら誰でも振り向きそうな整った顔立ち、白い肌。年は幹村さんと同じ位だろうか?一瞬その人の美貌に言葉が詰まってしまった…もう一度問われる、
「…誰?」
その声で俺は現実に戻された、
「あ、俺は…寺島 一樹っていいます。あなたも…その…えっと」
なぜか緊張してうまく喋れない。俺の代わりに幹村さんが尋ねた。
「僕は幹村 正です。あなたもここに閉じ込められたんですか?」
そう聞かれた女は小さいため息をついて
「そうみたいね…」
と一言。俺はさっきの体たらくを掻き消す様に名前を聞く。すると女は静かに返した。
「私の名前は工藤 冷。覚えなくてもいいわ…あなた達に名乗って貰って、私が名乗らないのは失礼だと思っただけだから…」
その答え方に俺の頭の中には全体的にすごく綺麗な人だけど、なんだかそれに比例するような冷たい印象が強く浮かんだ。この状況にも、あまり動じているようには見えない…。
午後9時になったらこの建物?は安全じゃなくなる、と伝えても
「…そうなの。」
としか答えなかった。
俺達はボイスレコーダーの事を聞いたが彼女は持っていないらしい。代わりに
「これならポケットに入っていたわ」
とルービックキューブのような物を取り出した。金属でできているようで一面は九つに分かれているがその一つ一つにアルファベットが一文字ずつ彫り込まれている。これも脱出に関係あるのだろうか?
工藤さんは
「私には必要ないから」
と俺達にそれを差し出す、俺達は少し考えたがそれぞれに渡された道具はきっと何か意味があると思い断った。工藤さんは
「そう。」
と呟き、ポケットにそれをしまう。
沈黙が流れる。
俺は考えていた、他にまだ閉じ込められた人がいるのだろうか?その人達を全員見つけて力を合わせないとここから出る事はできないのだろうか?考えれば考えるほど不安になってくる…。
思い出したように突然工藤さんが口を開く、
「そういえば…あなた達が入ってくる少し前…あなたと同じ年頃の男の子が入ってきたわ。」
そう言って俺を指差す。なんでそんな大事な事を早く言わなかったんだろう!この人は?時計を見ていた幹村さんも振り向く。
「確か名前はカイドウ…。右手に傷があったのは覚えているわ」
「えっ!?」
思いがけない台詞に俺は驚く。
カイドウ…右手の傷…俺には心当たりがあった。
読んで下さってありがとうございます!どーでもいい話ですが昨日作者は車をぶつけてしまいすごくブルーな1日を過ごしました↓でも友達の励ましがとても嬉しかったです;読者様からの感想も同じくらい嬉しいので宜しければお願いします。