02#謎の声
「ボイスレコーダー…?」
俺は見覚えのないその機械に一瞬ためらったが、恐る恐る上着のジャケットをあせくってみた。
ポケットから幹村が持っているのと全く一緒のボイスレコーダーと、磁針が二本ある方位磁針のようなものが出てきた。
もちろんどちらも自分の物ではない…
俺は幹村に視線を戻した
「…これは?」
幹村もわからないという顔をしている。
「方位磁針はわからないけど…ボイスレコーダーは、僕のには何も録音されていなかったんだ…」
それを聞いて改めて、自らの手に握られているボイスレコーダーを見つめた。
幹村も黙って見ている…
俺は静かに再生ボタンを押した。
『ジーーーーーー…』
三十秒ほど経過しただろうか何も聞こえてこない、もう消そうと思ったその時、ノイズと共に声が聞こえてきた。
『おはよう、寺島 一樹くん。君は今、君の全く知らない部屋に居るはずだ。その部屋は一つではない、いくつも同じような部屋が数え切れないほど連なっている…。だが、出口が無いわけではない、一つだけここから脱出する事のできる扉がある。君が持っている方位磁針がそこに導いてくれるだろう…』
そこでテープは切れた。
「………。」
二人ともしばらく黙っていた。
テープの声は恐らくボイスチェンジャーを使っているのだろう、男か女かもわからない。
方位磁針が導く!?意味が分からない!しかも方位磁針をよく見てみると磁針は二本ともピタッと止まっている、どう考えても壊れているとしか思えない!なんで俺の名前を知っているのかもわからない?どうして閉じ込められたんだ?
そんな事を考えていると、幹村が口を開いた。
「今、僕が持っていたレコーダーを改めて聴いてみたんだ、そしたら…」
幹村は多少青ざめながら続けた。
「とても小さい声で入っていたから気が付かなかったんだ…」
そう言いながら幹村は音量を最大にして流した。 『ジーーーーー』
やはり最初は何も聞こえない。しかし本当に最大音量なのかと思うほど、小さい声が途中から聞こえてきた。
『おはよう幹村 正くん。見覚えのない部屋が広がっているだろう…君のいる部屋はいくつも同じような部屋が連なっている。出口は一つだけだ、しかし君の持っている道具ではその出口を見つけるのは絶望的だ…早く仲間を見つける事だね。…あぁ言い忘れていたが午後9時を過ぎたると全ての部屋が安全に通れるとは限らない。仲間に会えることを祈っているよ…』
ここで声は途切れた。
…………
「安全に通れなくなる?どういう意味だ?しかも時計がないのに時間がわかる筈ないじゃないか!」
俺がイライラして壁を蹴飛ばすと、幹村が思い出したように言った。
「あ!時計ならあるよ!多分…これが僕の道具なんだろうね。」
そう言って幹村は腕を差し出した。手首には小さなデジタルの腕時計。
時刻はPM07:25を指していた…。
読んでいただきありがとうございます。小説は難しいというのを思い知らされている今日この頃です。
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