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少年、リージと私。

川で汚れを落とさせ、リュックの中に手を突っ込んで作り出したタオルとシャツ、ズボンを取り出す。

私のサイズだけど、まだ小さい少年なら着れるだろう。

…うん、目の前で全裸になられてもね、今更騒げないし…いいけどね。

「あの、洗ってきました」

「うん、はいタオル」

「あ、ありがとうございます」

「着替えも私のだけど、使って。下着は流石に貸せないけど」

自分の着替え設定だと、男性用下着なんてあるわけないしね。

「いえ、そんな、十分です。ありがとうございます、本当に」

「ん」

頷いて、微笑む。

すると少年は耳まで赤くなって、慌てて服を着出した。

お礼を言うのが、恥ずかしい年頃なのかしら?

「あの、僕の名前はリージです。あなたのお名前を聞いてもいいですか?」

「うん、私の名前は、ヒイラギ」

「ヒイラギ様は」

「いや、様付けはいらないよ?」

なんで様付け?と首を傾げつつ、断りを入れる。

「え、でも…えっとヒイラギ、さんは貴族の方ではないんですか?」

「なんで?」

「マジックポーションなんて凄いものを、僕なんかにポンとくれるし…身につけている物も高そうだし、タオルとかふわふわだし」

「うん、私の故郷では一般的な物だから、気にしないで」

「どちらからいらしたんですか?」

私は山の方を指さす。

「あっち、の方向から来たんだ。元は小さな島国出身でね、大陸に来たのは初めてだから、貴族どころかここのお金だって持ってない一文無しだよ?」

「聖域って入れませんよね」

「うん、だから迂回してね、村とか探してたんだ」

「なら僕、案内出来ますっ」

「よろしく頼める?」

「はいっ」



少年と手を繋ぎ、道を進む。

「この先に僕らの村、シントレーベがあります。聖域の麓の村なので、それなりに栄えてます。周辺に強い魔物が出現しないこともあって、初心者な冒険者には丁度いい土地で知られています」

「ふーん、ギルドはある?」

「はい、勿論。小さいですけどね」

「私でも登録できるかな?大陸出身じゃないけど」

「出来ますよ、文字が読み書き出来て犯罪者として手配されてなければ、誰でも登録は可能です。僕も一応ギルドの冒険者なんです」

と、少年の手が離れた。

「あ、ちょっと待ってて下さい」

「ん?」

「いえ、さっきの奴らに最初に襲われたのがこの辺りで、装備品とか採取した物とか落として…と、ありました」

ナイフとベルト、革袋を拾って少年は掲げ見せてくれた。

「そういえば、さっきの奴らとは知り合い?どうゆう状況で襲われたの?」

少年…いや、リージの表情は私の言葉に強張った。

「知り合いではないですけど、ギルドで見た覚えはあるので冒険者だと思います。僕は採取の依頼を受けて、今日はこの森にやってきました…そこをいきなり背後から、殴られて…最初は採取物の横取り目的かと思ったんですが……」

「ああ、うん、ごめん。もういいから」

震えるリージを抱きしめて頭を撫でる。

「ごめんね」

そう囁くと、リージの震えは止まった。

その代わり、また耳まで真っ赤になっていた。

「あ、あの、もう大丈夫です」

恥ずかしがってるリージは可愛かったが、私は友人ほど意地悪な性格ではないので、からかうことなく解放してあげた。


再び手を繋ぎ、村へと向かう。

一・二度、兔に角が生えたような生き物を見かけたが、襲いかかってくるような物はいなかった。

結構な距離を歩いたが、私に疲労は欠片もなかった。

神しゃま効果かもしれない。

リージも慣れているようだったが、襲われたり大泣きしたせいもあってか少し疲労が見えた。

「村まであと、どれくらいかな?」

「二十分くらいです」

「んー、それくらいなら村まで頑張って歩いて、休んだ方がいいかな?頑張れる?」

「え、あ、はいっ、僕なら平気ですっ」

…子供って、こんな可愛い生き物だったっけ?

友人の弟なんて、挨拶もろくにしない生き物で、すぐに私から逃げ出すし、友人によく遊ばれて癇癪を起している子供っぽい姿しか浮かばない。

うん、比べようもないか…あの友人の弟なんだし、その友人の私も警戒されているんだろう。……強く生きろよとしか言えない。

「リージは冒険者だっけ」

「はい。ランクはCです」

「ランク?」

「A、B、C、D、Fランクがありまして、Fの方がなり立てです」

「へぇ、Cランクなんだ?」

「はい、なり立てですけど」

少し嬉しそうに言う姿を見て、なるほどなぁと思う。ちゃんと子供らしいけど、長い間働いているせいでもあるだろう、どこかしっかりとした芯があるのだリージは。

「リージみたいな小さい子が冒険者になるって、大陸では普通なのかな?」

「あの…僕一応十四なんですけど」

「ん?うん、でも声変りもしてないでしょう?」

私のアルト声よりも、女の子っぽい声だものね。

「…別に珍しいってことはないです。村の中での依頼なら、子供のおこずかい稼ぎ程度の物もありますし。孤児院から出たばかりの十四・五の男の子なら、結構冒険者になる子は多いです」

「うん、でもリージの年でそのランクなのは、珍しいんじゃない?」

「…僕は三年前に両親を亡くして、あの村出身だし、両親の残してくれた財産もあったので、孤児院には入らずに独り立ちしたんです」

「………なるほど」

謝る必要はないだろうと判断して、代わりに頑張ったねと微笑んで見た。

リージはやっぱり恥ずかしくなったのか、また耳まで真っ赤になった。

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