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第一異世界人発見、初戦闘しました。

さて、改めて川の上を進むこと数十分。

何となく空気の濃度が、変わったように感じた。

気づけば水晶柱も、辺りには見当たらなくなっている。

「聖域を出たのかな…」

しばらくすると上流では滅多に無かった河原が点在するようになり、そしてその一つに道らしきものとつながっていることに気付いて、川の上から降りた。

道は大人二人分くらいの幅で、踏み固められた跡があった。

とりあえず水筒を一つ作り出して、川の水を汲む。

生水だけど聖域から流れてきているのだから、たぶん大丈夫だろう。

なんでもありな力はあるけど、乱用はなるべくしないようにしようと思う。

…うん、この装備とか色々、もう十分乱用しているみたいだけど。

「…これからこれから」

ケーキバイキングに行ってから帰ってくる途中の、友人のダイエット宣言のような口癖を口にしつつ、水筒をリュックに仕舞い道へと向かった。


森の中は綺麗だった。ハイキングに来ているみたいだなと思う…木の種類は見たことないものばかりだけど、ちょっと楓っぽい。

異世界じゃなく、異国を旅行しているみたいだ…そんな考えはすぐにかき消えた。

私は走り出していた。

人の怒鳴る声、争う気配。

何だか嫌な感じのする方へ。

だって、子供の声がした。

争いあってるのが大人同士だったら、私は気にしなかっただろう…でも、こんな森の中で、子供と言い争っている大人なんてろくなもんじゃない。

そして私は見た。

子供…と、いうか少年を押さえつけている大人達を。

具体的に言うと、少年の服は破かれ…大人達のうち一人は自分のズボンから性器を露出させようとしている最中で、少年は押さえつけている大人とは別の大人に口を手で塞がれ涙目で唸っていた。


初戦闘に躊躇いは無かった。


刀を握ったとたん、体が刀に付属させた効果で自然に動く。

あっという間に大人三人を切り捨てた…いや、峰打ちだけど。

私に向って声を上げさせる暇は、与えなかった。

変質者や強姦魔に情けは無用。

ドウッと倒れた三人に、襲われていた少年は目を丸くする。

打たれたのか頬が赤く腫れているが、美少年であった。

黒髪に青い目、肌色は褐色。

女の子っぽい雰囲気はないけど女顔で、大きくなったら色気のあるエキゾチックな美形になりそうである。

……確かにホモのロリコンに狙われそうな…と、悪いけれど納得してしまう。

それほど幼くはなさそうだが…十二・三だろうか。

「もう大丈夫だよ」

そう言って微笑むと、少年の表情はくしゃと歪んで私に抱きつき、大きな声を上げて泣き出した。

うん、友人が見たら羨ましがるであろう状況だな…と、思いつつ少年の背を撫でた。


少しして、泣きやんだ少年は、恥ずかしそうに私から身を放した。

助かってほっとして…泣いてしまったことが、恥ずかしいのだろう。

「怪我は?」

「だ、大丈夫です。何もされてませんっ」

「…………うん、殴られた?」

後は押し倒され、押さえつけられた傷が見える。

何もされてません発言はスルーしておく。あいつら、慣らしもせずに突っ込むつもりだったのか…とか、考えてしまったけど黙っておく。

シャツは破かれ、ズボンはナイフを入れられたのか切られ、大事な所等丸見えであった。

リュックの中から仕舞っていた方のコートを取り出して、着せる。

うん少年、私のことを男性だと思っているね?

でも男に襲われたばっかりなんだから、相手が男でも警戒した方がいいよ?

試験管を一本取り出し、コルク栓を抜く。

「ポーションって知ってる?」

「え、そんな高価なものいただけませんっ、擦り傷だし、頬も頭も平気です」

「ん?頭?」

すっと後頭部に手を回せば、ぬるりとした感触がした。

「いたっ」

手には血がついていた。

「…飲みなさい」

背後から鈍器で殴られたのだろう怪我に、私の声は固く命令形となり

少年は私の手についた血を見て、結構自分が酷い怪我をしている自覚をしたのか、頷いて試験管の中身を飲みほした。

怪我は私の想像通り、淡く光る光りの粒が生まれ跡かたもなく消えた。

少年はその効果に目を丸くする。

…RPGなら、似たようなのあっても可笑しくないと思ったんだけど…

と、反応を待つ。

「これ、マジックポーションじゃないじゃないですか………」

「普通のポーションとは違う?」

「普通のポーションはこんな、あっとゆう間に癒えたりしませんし、値段だって桁が違いますっ」

少々顔色を悪くして、そんなお金僕持ってませんと訴える少年に苦笑した。

「弁償しろなんて言わないから、安心して。私が飲めと命じたんだから、気にしなくていい」

頭を撫でて…怪我は治っても残っていた血と汚れに立ち上がる。

「向うに川があった。そこで汚れを落とそう」

「あ、はい」

何となくぼーとした少年の様子に首を傾げ、一応手を繋ぐ。

…まぁ、大泣きしたし疲れたんだろう。

「…と」

行きかけて足を止める。峰打ちして倒した大人達が呻き声を上げたので、その存在を思いだしたのだ。

放置?しておけるわけがない。

私は、近くに生えていた木に巻きついた蔓に触れた。

「つるのむち」

うん、だって汚いモノを露出させた大人を縛りあげるの、面倒だし…ゲーム技が私の民族の魔法技術ってことで。

ファンタジーっぽい魔法呪文を唱えるのは恥ずかしいけど、「火のこ」とか「水でっぽう」ならそんなでもないし。

なんでもありな力の制限にも、丁度いいだろうし。

…ゲーム本体を実際やってたわけじゃないから、そんなに詳しくないけどね。

蔓が生き物のように伸びて、大人達をくるぐるの芋虫状態にしたのを見て、少年はやっぱり目を丸くしたけれど私の手から逃げようとはしなかったので、ちょっと安心して川へと引き返す道へと向かった。


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