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髪留めと、付与

「まぁ、ヒイラギはモテそうだし、故郷に恋人とかいるんじゃない?」

レリーフがくすくす笑いながら言う。

すっかり顔色もよくなり、普段の調子が戻ってきたようだ。

「そうだねぇ、許嫁とかいそう」

リニアさんまで頷きながら言うのに、苦笑した。

「そうですね、故郷でもよく告白されましたよ女性に」

筆頭は友人だが…後輩とかによくラブレターを貰ってた。

……共学だったし、特に勉強・運動が出来るってわけでもなかったんだけど…不思議だ。

「でも同性と付き合う気はなかったですし、恋人はいませんよ」

「ふーん」

「許嫁なんてのも、勿論いませんでした」

「そっか………」

ふと沈黙がテーブルに落ちた。

三人の動きが止まっている。

私は首を傾げた。


「「「ど、どうせい?」」」


妙に強張った声が、小さく響いた。

本当に小さな呟きだったけれど、三人の声がぴったりハモったのでちゃんと聞きとれたのだ。

「ちょっ、ヒイラギあんた女なの?!」

「うっそ、ちょっと待って」

「ヒイラギさんっ、本当ですかっ?」

三人の慌てふためいた様子に、傾げていた首を反対方向に倒した。

「別に、性別を言った覚えはありませんが」

男性扱いに、否定も肯定もしてませんでしたけどね。

「そうだけどねぇ」

「慌てることですか?」

「いやその…」

「あはは…女の人に告白しちゃった……」

私はミアリスさんの肩に、ぽんと手を置いた。

「気にすることありませんよ、友人は女性で、男性の恋人なら四人ほどいますが、女性の恋人も十二人います」

「そうゆう問題じゃないですしっ、っていうか、その友人すごっ」



なにやらぐだぐだになったまま、休憩時間を終え…私は調金作業に戻った。

見学にレリーフとミアリスさん、リニアさんもいる。

「うわー、綺麗っ」

「どうりで…男にしちゃあ繊細な細工をするとは思ってたんだよ…」

「これはもうすぐ完成ですよ、よかったらあげましょうか?」

銀細工の髪留めは、花に鳥、猫と少し似通ったデザインにしてみた。ちょうど三つだしいいだろうと思って言うと、ミアリスさんの目が輝き、レリーフも嬉しそうに微笑んだ。

「いいのかい?これはいい出来だよ?」

「初めて作った物ですし、リニアさんには場所も道具も借りてますしね」

「あ、私この鳥さんがいいですっ」

「ん、ミアリスが鳥なら」

「私は猫ね」

くすっと笑ってレリーフは自分の耳を撫でた。

「私が花か…似合うかね?」

「大丈夫ですよ」

私はリニアさんのライオンの鬣のような髪を梳いてみた、つけるとしたらこの辺だろうか?

「きっと似合います」

ん?なんで三人とも黙っちゃうかな?

それになんか顔赤い?


「…天然タラシ?」

「リージくんもやられてましたよ」

「まいったね…」

こそこそと囁き合う彼女達は放っておいて、どうせあとちょっとだから今日中に渡した方がいいだろうと作業の手を進める。

…しかし仕上げの作業を進めながら…変なことに気付く。

なんか、この髪留めたちに『力』が集まってきているのだ。

………うん、別に神しゃまが何かしているわけ…じゃ、ないな…

なんだろ?

ともかく仕上げて、三つ目を完成させた時…『力』がそれらに定着するのを感じた。

「ん?」

ぴくんっと震えて振り返ったのはリニアさんだった。

「今、何か…」

「あー…、一応完成しました、けど…」

「えっ、ちょうだいちょうだいっ」

それぞれを三人に渡して、額に浮いていた汗をタオルで拭った。

「どうですか?」

「すごく可愛いっ」

「そうだね、ありがとヒイラギ」

さっそく前髪を留めるミアリスさんに、少し猫の表面を撫でるレリーフ…そして

「どうですか?リニアさん、何か分かりますか?」

私の問いかけに、たぶん『鑑定』していたリニアさんは深くため息をついた。

「本当に貰っていいのかい?」

「一度あげると言ったことを、ひるがえしたりしませんよ」

「ん?高価な価格鑑定しちゃったの?リニア」

「確かに、初めて作ったとは思えないほど綺麗ですもんね」

リニアさんは…もう一度ため息をついて、顔を上げた。

「一個、銀貨一枚」

「ええっ、か、髪留めなのに?銀細工でも聖製加工されてる物じゃないでしょっ!?」

「そうだね、普通高くても銅貨五枚くらいだろ?」

確かに元の材料費である銀の値段は、三つ分で銅貨一枚と硬貨二十五枚だった。

魔除けの加工を施されている銀は高いらしいが、この世界では金も銀もそれほど高い物ではないらしい。

ちなみに金貨類などの硬貨は少量の金や銀などは混ざっているが、少し混ぜるだけでその色に染まる特殊な液体鉱物を加工して作られているらしい。

国の製貨スキルの持ち主達(そうゆう仕事についた人達)だけが、加工出来るもので元の液体鉱物も一応見せてもらった…と、いうか飲んだ。ちょっと白濁としていて、スポーツドリンクの味がした…一応鉱物の一種らしいが、人体に害はないらしい。

場所によっては飲み水代わりにもしているらしいくらい、珍しい物ではないのだ。

ただ贋金は作れない。鑑定スキル持ちじゃなくても、ちゃんと製貨スキルで作られた硬貨じゃないと、見ただけで違うと分かるらしい。

ちなみにスキルを持ってる人でも、ちゃんと国の行政の仕事としてではないと作れないし、場合によってはスキルを失うという。

………うん、アーサーさんきっと贋金問題とか面倒だったんだろうなーと思う。

「他の二つの持ち主へ、声を届ける効果」

暫し躊躇った後、リニアさんは呟いた。

「魔法効果が、付与されてるんだよ…魔法具は効果の小さい物でも銀貨価格よね」

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