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サンドイッチと、ケーキ。

「あ、そうだこれ」

レリーフがふと、暗さを少し消して持っていた手提げ袋から布包みを二つ取り出した。

すると、リニアさんとミアリスさんの目が輝いた。

「差し入れのサンドイッチとケーキよ」

「レリーフちゃん大好きっ」

「嬉しいわぁ、レリーフの手作り久しぶり」

「レリーフの手作りですか?」

私も椅子に腰を下ろして、彼女の手元を見た。

布包みを広げれば、薄いセロファン紙のようなものに包まれたサンドイッチと、パウンドケーキが出てきた。

「うわ、美味しそう」

「なんといってもレリーフちゃんの家事レベルはAAだもんっ、実際すっごく美味しいのよっ」

ミアリスさんがはしゃいで言うのに、リニアさんが顔をしかめて「こらっ」と叱った。

「あんた、ギルド職員が個人のスキルを勝手にばらしていいの?」

「あ」

ミアリスさんの顔色がさぁっと青くなる。

「うわぁぁんっ、ごめんなさいっ、レリーフちゃん、お母さんには言わないでぇえっ」

「別にいいよ、隠すもんでもないし」

「レリーフ、こうゆうことは反省を促すためにも、きちんとしないと。いつか困るのはミアリスだよ」

「まぁ、それより食べよ?いつも通りなら、リニアもヒイラギもご飯まだでしょ?」

確かにお昼は回ってしまっていて、二時になるかどうかという時間帯だが、作業に熱中していてご飯はまだだった。

リニアさんと私の家事レベルは一緒だったので、大抵お昼は休憩のお茶の後、のんびり食べに出ている。

小さな村だからか、生活習慣は知れ渡っているようだ。

リニアさんは仕方ないなぁという顔をしながら、サンドイッチを手に取り私にも取るよう促がした。

うん、サンドイッチ久しぶりである。

「いただきます」

一口含んだだけで、その美味しさが分かった。

パンはふかふかしっとりで中の野菜はシャキシャキ、ペースト状のディップは垂れることのない状態で野菜とパンの美味しさを引き立ててる。

メインらしい鳥肉(?)には香ばしい焼き目と仄かに柑橘系の香りがして、噛み切りやすいほどよい食感が堪らなかった。

「うわっ、弟くん並」

「弟くん?」

つい零した感想に、問いかけられる。

「うん、友人の弟くんで、友人に料理を仕込まれてる子」

まだ小学生なのに、彼の作るご飯やデザートは絶品である。

「友人が言うには、男心を掴むにはやっぱり胃袋を掴まなければ…らしい」

「ふーん……ん?弟なんだよね?」

「うん」

首を傾げるリニアさんを置いて、ミアリスさんはケーキを切り分けて食べ始める。

やはりパウンドケーキのようで、中にはドライフルーツと胡桃が入っているようだった。

「くうぅっ、生きててよかったぁっ」

「大げさな」

「レリーフちゃんは、自分の料理の腕を分かってないっ!私が男だったら、すぐさまプロポーズするのにっ」

「ごめん、ミアリス。あんたが男だったら、即答で断ってるから」

「ええっ、なんでぇっ」

「だってあんたが男だったら…軟弱そう」

レリーフは腕をさすった。想像して鳥肌が立ったようだ。

確かに、ミアリスさんの残念な性格は、女性だから許されているとこがあると思う。

「レリーフは甘ったれた男と、なよなよした男が生理的にダメだからねぇ」

「えー、じゃあヒイラギさんは何で平気なの?ヒイラギさんも外見上は細いし、物腰は柔らかいし、顔立ちも綺麗だけど」

「ヒイラギは性格がしっかりしてそうだし、心意気っていうか、敵に対する心構えとか対応が気に入ったから平気。それに立ち振る舞い、凛々しいじゃない?」

「確かにねぇ」

ミアリスさんは呻いた。

「そ、そんな、彼氏なんて興味ないって二人がっ、ヒイラギさんっ、リージくんはともかく、レリーフちゃんとリニアちゃんまで落とすなんてっ、なんて手が早いの…っ」

がしりと手を握られ、ミアリスさんは潤んだ眼差しで私を見た。

「私も恋人の一人にして下さいっ」

ずるりとレリーフとリニアさんは、椅子から滑り落ちかけた。

「あんたこそが、目ぇつけてたんかっ」

「ミアリス…あんたねぇ…」

「いや、ごめんなさい」

そっと手を外して、提案を断ると…「即答っ」と呻いてミアリスさんはテーブルに突っ伏した。

私はケーキにも手を伸ばす。

ドライフルーツのレーズンっぽいものは、実はレーズンじゃなくてダークチェリーっぽい味がした。

食感はしゃりしゃりしていて美味しい。

お菓子は久々だったので、凄く嬉しかった。

そろそろチョコとかも食べたいなと思う。アーサーさんの創造した世界だし、彼が嫌いでなければ存在していると思うんだが…



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