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対戦?と、鍛冶師

さて、唐突だが場所はギルドの裏庭…ちょっとした広場になっていて、訓練場のようになっていた。

初心者が希望すれば、簡単な護身術武器の扱いを教えてもらえるそうだ。

ミアリスさんのお母さんに。

うん、アイリーフとその下僕達で出入り口を塞いでいたから、夕飯を食べに来たり依頼を終えて帰ってきた人達の邪魔になった。それに眉を寄せたミアリスさんのお母さんが、リージを呼んで裏口を指さしたのだ。

揉め事は外でやれというわけだ。

リージを促がしたのは、アイリーフ達がからんでいるのがリージで、彼女達に言っても私達が動かなければ聞く耳ももちそうにないからだろう。

そして

「スライムも倒せない剣士どのに、稽古をつけてやるよ」

と、下僕の一人がすらりと剣を抜いて言った。

うん、スルーしたのが腹立たしかったらしい。

「ちょっ」

アイリーフは目を丸くして、止めかけたが私を見てそれをやめた。

リージが私の前に出ようとして、アイリーフは叫んだ。

「リージはどいてなさいよっ!そんなスライムも倒せない奴と、組む価値なんてないって教えてあげるんだからっ!」

「黙れ、お前こそ俺が誰と組もうと関係ないだろ」

再び精霊の力が集結しだす。

「リージ」

頭に手を置いて引き寄せる。

「え、あ」

よしよしと頭を撫でてから、一歩前に出た。

「いい加減面倒だから、私がやるよ」

リージの冷たい声に顔色を失っていたアイリーフは、私の言葉に笑みを浮かべた。

顔立ちは可愛いのに、あんまり可愛くない…嗜虐的な微笑みだった。

下僕の方は精霊の集結に気づかなかったのか、苛ただしげに舌打ちしてリージを睨む。

できるならリージも一緒に打ち負かしたかったのだろう。

実力的に出来るとは思えないが。剣とナイフではリーチ差で剣の方が有利そうだが、リージの素早さと体力からいっても下僕くんに負けるとは思えないし。

「じゃあ剣を抜いてかまえろっ」

私はわざとらしく肩をすくめて、呆れた様子でため息を吐いた。

「聞こえなかった?面倒だって、いいからおいで」

それにこれは剣じゃない、刀だ。

呟いて、素早く柄に手をかけた。

「馬鹿にしやがってっ」

わーと駆けてくる相手に腰を落とし、刀を振るった。

ぼとぼとぼとっ…と、剣のなれの果てが地面に落ちた。

下僕くんは自分の手元を見て、完全に固まって……私はその様子を見て、顔を顰めた。

「…未熟」

「なっ」

下僕くんの顔が、怒りで一気に赤くなる。

しかし別に彼に言ったわけではない。

「剣だけ、切り落とすつもりだったんだけど…うっかり首まで切り落とす所だった」

もう一人の下僕くんが気づいて、「ヒィッ」と悲鳴を零した。

うん、首からだらだらと血が零れてるから。

駆け寄ってきてたから、ちょっと間合いの把握が上手く出来なかったようだ。

「うん、でもいいよね?剣を抜いて、向けたんだ…当然殺される覚悟だってしてただろう?」

にこっと笑い、首を傾げてみせる。

下僕くんは首に手を這わせ、ぬるりとした感触に青ざめて…へなへなと座り込んだ。

おぉっーと、ギルドの建物から声が上がる。

建物の裏手にある窓には、それぞれ飲み食いしながらも冒険者達が張り付いていた。

そして、一人が、窓から転がり落ちるかのように飛び出した。

背丈はアイリーフと同じくらいの、けれどゴツイ女性だった。

「リニアさん?」

リージが首を傾げる間に、固まっていたアイリーフと下僕くんを蹴り飛ばして、へたり込んでいた方の下僕くんの襟首を掴んで放り投げ、一直線に私の前へと進んできた。

正しく、突進としか言いようのない迫力だった。

そして、ズサーッと音を立てて、私の前で正座をして頭を下げた。

「すいませんっ、その剣を見せて下さいっ」

と。

思わず見とれるほどに見事な、土下座だった。

「…リージ?」

「村の鍛冶師のリニアさんです」

雄ライオンのように広がった金茶の髪に、茶色の瞳をキラキラさせて…ゴツイけれど妙に愛嬌のある可愛い顔立ちの…たぶんドワーフっぽい女性の鍛冶師、うん、予想外だったね。

リージは苦笑を零した。

「いつか、ヒイラギさんの刀を見たら、飛んでくると思ってました」

うん。確かに飛んできた。

そして見事なスライディング土下座だった。

もしかして、スキル持ってるんじゃないだろうか?



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