スキル更新、完了。
『ちゃぶ台返しSS』(どんな重い物体でも気合いでひっくり返せる能力)
『魂生成』(死んだ人間・または死の床に臥した魂の保存・生成※正し、近しい身内、配偶者、恋人の願いが必要)
『スキル継続』(得たスキルを世界を越えても継続できる)
『異世界へのフリー切符』(自由に世界を行き来できる。※正し、始点となる世界に碇であり指針となりうる人物の任意が必要)
…うん、何だかよく分からない物もあるけど、深く探るとヤバイ気がしたので
「スキル更新」
して、水晶球から手を放した。
「…ヒイラギさんのも、なんだか凄いですね」
「なんかちゃぶ台返しは、カッコ悪いけどね」
「え、どんな重い物でもひっくり返せるって、凄そうですけど…」
「あ、もしかして、リージはちゃぶ台って知らない?」
リージは不思議そうに頷いた。
SSってことは、通常スキルに含まれているだろうし……たぶんどこかの地区に日本っぽいエリアがあるんだろうと思う。
「ちゃぶ台ってね、小さなテーブルのことだよ。うん、伝え聞いたイメージが強くて…頑固で癇癪持ちな父親が会得しやすいスキルのはずで……私が持っていても、発動出来そうにないスキルだよ」
「そうですか?」
「うん、気合いでひっくり返せるんだよ?…気合いがちょっとね…」
このスキル名で、気合いを入れられるはずがない。
「この異世界ってスキルは、僕のものと似てますね…」
「うん、たぶん効果も似てるのかもね。リージの方は結婚しないと、効果は正確に分からないみたいだけど」
スキル更新を終え、ちょっとお茶にしようか?と、リージを誘った直後…ギルドのドアが勢いよく開いた。
「あ、そういえばさっき、アイリーフちゃん達がリージくん達を探してたわよ?」
ミアリスさんが、息を切らしたアイリーフを見て、言った。
うん、見れば分かるから。
…本当に残念な天然さんだね、ミアリスさん。
アイリーフはリージに気づいて何か叫ぼうとして……リージの外見の変化に固まった。
リージは気にする様子もなく、私の手を引いた。
「いきましょう」
「お茶はどうする?」
「家で…僕がいれますよ」
「ちょっと待ちなさいよっ!」
アイリーフと下僕はギルドの出入り口を塞いだ状態で、引き攣った声を上げた。
「り、リージ、リージよねっ、なんでどうしちゃったのソレ、髪が、耳が」
リージは深々とため息を吐いた。
「なにか、用?」
「何か用って、そんなの、どうして私の質問に答えないのよっ、さっきも無視するしっ」
「くだらない、どいて、邪魔」
空気の温度が、気のせいでなく下がった気がした。うん…どうやらリージは、完全にアイリーフを見限ったようなのだが、アイリーフは杖を折られるまでされたのに、気づいてないらしい。
それが更に腹立たしいのか、リージの放つ空気がひんやりしている。
ん?これ、もしかして、精霊の力かな?
神しゃま効果か、何となく『力』の動きが分かる。
そういえば、魔法使いと精霊術師は何が違うんだろうか?
このままにしておくと、精霊の力が勝手に発動しそうな気がしたので、とりあえず落ち着かせようとリージの頭を撫でてみる。
………うん、集まりつつあった『力』がふわんと溶けた。
「リージ、落ち着いた?」
「あ、はい」
なぜだかリージは恥ずかしそうに俯く。
そしてなぜだか、アイリーフの視線が私に向いていた。
嫉妬と嫌悪の色が見える表情で。