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説明、終わりました?

胡散臭そうな表情の私に、アーサーさんは「うーん…」と唸った。

「神しゃまとしか言いようがないんだなぁ、神様って感じじゃないらしいよ」

「ないらしい…って、誰が言ったんですか?」

「アーサー」

自身を指さす青年に、思わずため息をつく。

「人事に聞こえましたが…」

「いや、俺のことだし…うーん、説明難しいな」

少し考えこんだアーサーさんは、何か思いついたかのように顔を上げた。

「よりしろって、分かる?」

「イタコとかのですか?神を宿す?」

「そう、それ」

「………嫌な予感がするんですが…」

「あー、ごめんね。もう選ばれちゃってるし、宿っちゃってるから」

「え」

アーサーはにこっと笑った。

…イイ笑顔である。

「じゃなきゃ、君も神言語使えないから」

「……使ってるんですか?私」

「日本語喋ってるんでしょ?意識的には。神言語使ってなかったら、俺に英語で伝わらないから」

一応日本語、片言理解できるけどねと苦笑され、私は喉を押さえた。

本当に何も、違和感ないのですが…

「まぁ、この世界の神様だから、この世界の住人相手の言語は自動翻訳されるから。読み書きも『理解』出来るよ」

「……あなたも、神を宿しているんですか?」

「いやいや」

半信半疑で確認をとるけれど、あっさり否定されて私は首を傾げた。

「もう、よりしろ本人のアーサーは帰っちゃったから。俺は宿ってた方」

すっと手を差し出される。

握手を求められるかのように。

たぶん意味があるのだろうと、私も手を差し出してみて……するっとすり抜けた手のひらに鳥肌を立てた。

何か…濃い濃密なモノをすり抜けた感じはあった。

固まりかけの寒天の中とか、稲田の泥水に手を突っ込んだような…

「…やどってた、ほう?」

「そ、よりしろ本人が帰れるようになる頃、宿ってた方はその人の分身みたく人格を持つんだ」

「人格を持つ…と、いうことは」

「そう、君の中に宿った神しゃまには人間の求めるような神様像はない。意識すれば分かると思うけど、自分の中にほわほわ~としてあったかくて、神様っていうより神しゃま?としか言いようのない力を」

実は自覚していた。

なんというか、小さな子犬とか子猫を腕に抱いている気分。

可愛くて可愛くて、ずっと抱いていたいような撫でていたいような気分が、気づいた時からあった。

そして子犬、もしくは子猫側からも、嬉しい大好きーみたいな…懐いているような反応がある感覚。

なんというかソレらが、アーサーと名のる存在の言葉を受け入れているのだ。

これがなければ、私の反応はもっと冷淡だったろうし、家に帰せと訴えていただろう。

家に帰せと訴えないのは、私を私の家に帰せるのは私の中に宿ったモノだけだという感覚があるからである。

「…なぜ、私?よりしろはこの世界の人でもよくない?それから、私に宿っている神…うん、神しゃまね、確かにかみしゃまとしか言いようがないわ…と、あなたは別物みたいだけどなぜ?」

「んーなぜヒイラギちゃんが選ばれたかってのは、正直分からない。俺がアーサー選んだ時も今、ヒイラギちゃんが感じているような存在なんだぜ?たまたまこう…宿りたくなって、手を伸ばして連れてきちゃったみたいな感覚じゃないかな?たぶん」

首を傾げるアーサーさんに、感覚的な問題だと言われているようで…納得した。

「あ、なぜこの世界の住人じゃダメなのかは、分かるぜ。俺の前の人とかその前の人とか世界とのしがらみが多くて、宿主ごと壊れて世界も壊しかけたから」

アーサーさんは両手を広げた。

「この世界は壊れかけてたのを俺達で修復、創造したものなんだ。俺、じゃない、アーサーが俺の宿主になったのはたまたま偶然だったけど、神しゃまにとっては宿り心地が良かったんだよ。第三者の立ち位置に立てる存在ってのがね」

で…と、言葉は続いた。

「俺で上手くいったから、また異世界に手を伸ばしたんだと思う。あと、神っていっても唯一神じゃないから俺らは、神としか言いようのない力の固まりだけど…この世界っていうエネルギーでもあるんだ。俺は俺として宿ったアーサーの個性人格があるけど、普段は世界に溶け込んでる。君の中の神しゃまとは一緒であって別物だし…」


私は片手を上げて、何とか説明しようと言葉を選んでいたアーサーさんを止めた。

なんとなく分かったし、分からないことも…何となく説明されてもされなくても、如何しようも無いことは分かった。

今切実に知るべきことは一つだろう。


「私、いつ帰れるかしら?」


「そりゃ、神しゃまが満足するまで?俺はアーサーと相性良すぎて、千年ほど引き留めちゃったけど…あ、ちゃんと浚った時と場所に帰したから…たぶん、大丈夫だよ」

根拠のない保障にため息が零れたが、自分の中の神しゃまが自分がいるのは嫌?みたいに窺う気配が可愛くて……絆された。

千年なんて先は考えられないけれど…とりあえず、嫌になるまでは付き合ってあげましょうと思ってしまうくらいには……宿った神しゃまの気配は可愛かった。


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