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【新装版】オレンジボイス 〜女装してアイドル声優になった結果、周りが地雷だらけで詰んだ件〜  作者: 乙希々


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遊園地デート(?)③

 ──それから。


 幸福な家族連れやキラキラした陽キャグループに揉まれながら、やっとの思いでゲットした高カロリーなB級グルメを抱え、全力で広場に戻ると。


 ……いた。


 開放的なテーマパークの景色から悪い意味で浮きまくっている東雲綾乃。大きなサングラス越しに僕を捉えるやいなや、高圧的に顎をクイッとしゃくり、黒タイトミニから伸びるおみ足を組み替えた。それはもう、現代に具現したリアル悪役令嬢による、下僕への無言の圧力そのもの。


 たぶんコイツの辿る未来は、追放エンドか処刑エンドの二択だろう。とっとと、ざまぁされるがいい。


「遅い。私を五分以上待たせた罪は万死に値するわ」

「くっ……。まぁまぁ、もう綾ちゃん、そう怒らないで。アツアツの焼きそばを買ってきたから、一緒に食べよ?」


 もはや生存本能に近いレベルの適応力で東雲をなだめつつ、フレアスカートのお尻を整えてベンチの端に腰を下ろす。こいつの罵詈雑言にいちいちキレていては、僕のメンタリティが闇堕ちしてしまう。いわゆるこれが大人の対応というやつだ。


「紅生姜が少ないわ」

「ああもう、うるせぇ──」


 結局、自分用に買ったたこ焼きも半分以上を徴収され、乏しい残りをモソモソと突いていた、その時。


「うおっ!」

 

 唐突に、隣で焼きそばをハフハフとしていた東雲が、僕の横顔に頬をピタッと寄せてきた。間髪入れずに、パシャリ──と、無機質なシャッター音。


 あ、肌が意外と冷たい……。じゃなくて! 僕は加工なしの平たい上半身を捻り、必死に距離を取る。


「ちょ、いきなり何を……」

「うるさいわね。ただの自撮りよ。身分不相応にも私と同じフレームに収まれることを光栄に思いなさい」


 はあ、自撮りだ? にしても急に密着してくるから驚くじゃんか……。


「……そ、それならそうで、事前にだな、被写体への撮影許可を……」

「論外ね。こういうの自然の反応が『映える』の。素人は黙ってなさい──『親友の橙華さんと遊園地デートにきちゃいました♪ 今はモグモグタイム中です♡』……と。送信」


(……おい。キャラの偽装が詐欺レベルだぞ。……って、送信?)


「ま、待て。まさか今、ノータイムでネットにアップ、したのか……?」

「そうよ。悪い?」


 東雲は得意げにフフンと鼻を鳴らす。が、気のせいか耳たぶが真っ赤……。


「──って、わ、悪いに決まってるだろ! 仮にもお前、現役のアイドル声優、だよな?」

「仮にも、は余分よ……ぁ」


 ようやく事の重大さに気づいたのか、東雲はポカンとマヌケ顔。


 名の知れた有名人が、リアルタイムで現在地を特定できる写真をネットの海に放出。それが何を意味し、飢えたネット民たちが一体どんな反応を示すか、想像するでもない。声優としての知名度が底辺な僕ならともかく、アイドル声優の東雲綾乃には、熱狂的で、かつ濃い固定ファンがたくさんいる。


 日頃の言動からして、歩く炎上案件みたいな奴だが、これはいよいよ笑えない。現に今、青のり全開のスマイルで写真投稿。絶対にバカだろコイツ。ちなみに僕はコンパクト鏡で即座に確認したが、よし。セーフ──


「……じゃなくて! と、とりあえず、今すぐここから離れるべきだよね〜。そう思わない、綾ちゃん♡」

「そ、そそ、そうね、橙華さん。あ、貴方にしては珍しく理にかなった提案かしら。賛同してあげても、良くてよ」


 ──かくして、空からポツリポツリと雨が降り出した頃、本日初めて意見が一致した僕ら、偽りの仲良しアイドル声優コンビは、周囲を最大級に警戒しながら、密やかに、かつ迅速に遊園地から撤退を開始した。

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