助けを呼べばメロディーが流れる! 正義のヒロイン、オルゴールレディー!
「助けて!」
会社の帰り、一人用のクリスマス・ケーキをぶら下げて歩いていたら、へんなやつらに捕まった。
「ウキャ、ウキャ、ウキャ! 大人シク、オマエの脳ヲ穴ボコにサセロ!」
「キャトルミューティレーション!」
「俺タチと遊ボウゼ!」
緑色の小さな怪人が3体──、もしかしたら宇宙人かもしれない。
オフィスレディーの私と小さな宇宙人──白雪姫と小人たちみたいには……見えないよね?
クリスマスの街は慌ただしく、みんなが幸せそうな笑顔で通り過ぎていく。……いや、誰か助けろよ。こんなうら若きぼっちの美女が襲われてるんだぞ?
「あなたたち、おやめなさい」
透き通るような女性の声に、小人たちの動きが止まる。
「ウキャ!? キサマは誰ダ!?」
見ると、金色のピアノに向かって腰掛ける、金色の女性がそこにいた。
いや、よく見ると、彼女自身がピアノだった。
いやいや三度も訂正して申し訳ないけど、彼女は人間大のオルゴールだった。
「わたくしは正義のヒロイン、オルゴール・レディー……。地球人類の平和はわたくしが守ります」
「ウッキャ! ウッキャ!」
小人たちがお腹を抱えて笑う。
「キサマのヨウな華奢な女に何がデキル? デキルとイウノナラ、ヤッテミロ!」
するとオルゴール・レディーは金色の長い髪を優雅に揺らし、繊細なメロディーを奏ではじめた。
ベートーヴェンの『エリーゼのために』だ──
雪のちらつく夜の街に、鳴り響くクリスマス・ソングをかき消すように、その静かで美しいメロディーは流れた。
大人しくなって聴き入っていた小人たちの頭が、突然膨れ上がったかと思うと、次々と破裂した!
ぼんっ!
「ウキャ!?」
ぼんっ!
「ウキャっ!?」
ぼぼーんっ!
「ウキャキャーッ!?」
オルゴールの音が止まり、街のクリスマス・ソングが戻ってきた。
オルゴール・レディーが優雅に微笑む。
「心に疚しさのある者がわたくしのメロディーを耳にすると、内側から破裂するんですのよ」
優しい笑顔で解説してくれた。
「それでは、ごきげんよう」
街の闇に溶けるように、彼女は消えた。
ありがとう、オルゴール・レディー!
そして、よかった……
私、心に疚しいもの、なかったみたい……。




