1-8. 関数の表し方の表による方法:The tabular method
夜が深まり、書斎のランプの灯りがスミルノフの古い頁を優しく照らしています。透は、これまで学んだ「数式(解析的方法)」や「グラフ」とは違う、『表による方法(Tabular method)』というページを見つめています。
「お母さん、これって対数表とかの話だよね。あれも関数なの?」
私は頷いて、彼のノートに簡単な表を描きました。
「そうよ、透。これは『表による方法』。数式がわからないときや、実用的な計算を急ぐときに、とっても役に立つ強力な味方なのよ 。」
「数式がわからなくてもいいの?」
「ええ。例えば、理科の実験を思い浮かべてみて。実験で測ったデータは、最初から数式になっているわけじゃないわよね? ある温度のときに、どれくらいの体積になったか。その結果を一つひとつ記録していくと、こういう『表』になる。この表こそが、まだ正体のわからない関数の最初の姿なの 。」
私は、透がよく使っている対数表や三角関数表を指差しました。
「それにね、数式がわかっていても、計算がすごく大変なこともあるわ。そんなときのために、数学者たちはあらかじめ計算しておいた結果を大きな『表』にまとめてくれたの。 や 、もっと難しい『ベッセル関数』や『楕円関数』まで。これがあれば、私たちは一から計算しなくても、表を引くだけで答えにたどり着けるのよ 。」
「でも、表に載っていない数字が知りたくなったらどうするの?」
「いいところに気づいたわね。例えば、表には 1.0 と 1.1 の値しか載っていないけれど、1.05 の値が知りたいとき。そんなときは、前後の数字から『たぶんこの辺りだろう』って推測する魔法を使うの。これを『補間法(Interpolation)』、あるいは『比例部分の規則(proportional parts)』と呼ぶわ 。まるで、点と点の間を細い糸でつなぐようにして、間の数字を見つけ出すのよ。」
私は、九九の表を思い出すように言いました。
「九九の表だって、二つの変数 x と y を掛け合わせた z = xy という関数の、立派な表による表現なのよ 。」
透は納得したように、スミルノフの頁にある数字の列を指でなぞりました。数式という「言葉」だけでなく、表という「事実」の積み重ねもまた、世界を理解するための大切な道具なのだと、彼は感じ取ったようでした。
「さあ、これで関数の三つの顔——数式、グラフ、そして表——が揃ったわね。明日はこの道具を使って、もっと広い世界へ出かけましょう 。」




