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1-7. 陰関数:Implicit functions

夕食の片付けを終え、私は透の待つ机に戻りました。彼はまだ、先ほどの関数の式を熱心に見つめています。


「ねえ、透。さっきは y = ... という形、つまり『結果がはっきり見える』関数の話をしたわね。でも、数学の世界にはもっと内気で、正体を見せるのが少し恥ずかしい関数もいるのよ。」


私はノートの真ん中に、一つの式を書きました。


** x^2 + y^2 = 1


「これを見て。この式の中には、x と y が混ざり合っているでしょう? y = ... という形になっていないけれど、これだって x を一つ決めれば、y が決まる(あるいはいくつかの候補に絞られる)立派な関係式なの。こういう、二つの変数が方程式の形で結ばれているものを『陰関数(Implicit function)』と呼ぶのよ。」


透は不思議そうに式を覗き込みました。「隠れているから、『かげ』なの?」


「そう、よく分かったわね! 普段は x と y が対等な関係で一つの式に閉じ込められているけれど、必要があれば、そこから y を主役として引っ張り出すことができるの。でも、いつも簡単に引っ張り出せるとは限らないのが、陰関数の面白いところね。」


私はコンパスを取り出し、その式の正体を描いて見せました。


「この式が表しているのは、この美しい『円』なの。もし、私たちが円の上の点 x を選んだら、それに対応する高さ y が決まるわよね。ただ、この場合は上半分と下半分で二つの y が出てきちゃうから、関数として扱うときは『上の半分だけ』というふうに、場所を限定して考えるのよ。」


透は円の線を指でなぞりました。


「さっきの明示的な関数が『命令』だとしたら、陰関数は『約束』みたいなものかな? 二人の間にはこういうルールがありますよ、っていう……。」


「素敵な表現ね、透。まさにその通りだわ。この世界には、はっきりと式に表せないけれど、お互いに縛り合って形を作っている関係がたくさんあるの。惑星の軌道や、複雑な曲線の美しさも、多くはこの『隠れた関係(陰関数)』の中に眠っているのよ。」


私は透のノートの端に、小さな星を描きました。


「いつか、その隠れた関係を解き明かして、自分だけの美しい図形を見つけられるようになるといいわね。」

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