1-4. 区間:Interval
窓の外は、夜の帳がゆっくりと降りてきました。私は透が描いた数直線の「0」を指先でなぞりながら、少しだけ声を低くして言いました。
「透、さっき変数が駆け回る『公園のフェンス』の話をしたわね。数学ではそのフェンスの中、つまり変数が動ける範囲のことを『区間(Interval)』って呼ぶのよ 。」
「フェンス……。どこからどこまで、っていうこと?」
「そう。例えば、ある変数 x が a という数から b という数までの間の、どの実数にもなれるとするわね。これを『区間 ( a, b ) 』と書くの 。でもね、数学者はとっても細かいところまで気にするのよ。その『端っこ』を含めるか含めないかで、名前が変わるの。」
私は透のノートに、二つの数直線を描き加えました。
「もし、端っこの a と b も含めていいなら、それは『閉区間(Closed interval)』 。記号では [ a, b ] って書くわ。でも、端っこはダメ、その内側だけよっていうときは『開区間(Open interval)』 、つまり ( a, b ) ね。片方だけ含める場合もあるのよ 。」
「それって、何か違いがあるの?」
「ええ、大違いよ。例えば、最高気温を考えるとき、その『区間』の中に最大の値がちゃんと含まれているかどうかは、科学者にとって死活問題だわ。もし端っこを含まない『開区間』だったら、いくら最大に近い数字を探しても、その先にまた別の数字が見つかってしまって、一番高いところにたどり着けないんですもの 。」
透は不思議そうにノートを見つめています。
「変数の動き方は、それだけじゃないわ。時間はマイナスの無限からプラスの無限まで、どこまでも続いていくでしょう? そんな風に制限がない場合もあれば、人口みたいに『整数しかとれない』飛び飛びの変数の場合もある 。でもね、私たちがこれから学ぶ『微積分』の世界では、この『区間』の中を隙間なく、滑らかに動く変数が主役になるのよ。」
私は透のペンケースを片付け、彼の手を優しく握りました。
「さあ、今日はここまでにしましょうか。世界は止まっているように見えても、あらゆる『変数』がそれぞれの『区間』の中で、絶え間なく動き続けている。明日、透が目覚める時も、時間はまた新しい区間を刻み始めているはずよ。」




