1-3. 定数と変数:Constants and variables
窓の外の群青色が少しずつ深まっていく中、私は透のノートに、大きく「C」と「x」という二つの文字を書きました。
「透、数学の世界にはね、二つの役割を持った数字たちがいるの。一つは、どんなことがあっても自分を変えない、意志の強い『定数(Constants)』。そしてもう一つは、周りの状況に合わせて自由に姿を変える、しなやかな『変数(Variables)』よ。」
透は「C」の文字を指でなぞりました。
「定数は、さっきの『1』とか『2』みたいな、決まった数字のこと?」
「そう。一度その研究や計算の中で『これ』と決めたら、最後まで動かない値のことね。例えば、地球の重力とか、円周率の π とか。でもね、面白いことに、何が定数で何が変数かは、私たちが『何を調べたいか』によって変わることもあるのよ。」
私は透のペンケースから一本の鉛筆を取り出しました。
「例えば、この鉛筆の長さを測るだけなら、長さは『定数』よね。でも、もし部屋の温度がすごく上がって、鉛筆がほんの少しだけ伸び縮みするのを精密に調べるなら、長さは『変数』になっちゃう。数学は、その時々の状況に合わせて、何が動いていて、何が止まっているのかをはっきり区別するところから始まるの。」
「じゃあ、変数はどうやって動くの? 好き勝手な数字になれるの?」
「いい質問ね。変数が動ける範囲のことを『区間(Interval)』と呼ぶわ。」
私は数直線を描き、その一部を太い線で囲みました。
「例えば、ある変数 x が a から b までの間の数字ならどれにでもなれるとき、それは『区間 ( a, b ) 』で動くと言うの。端っこの a と b を含めるなら『閉区間』、含めないなら『開区間』。まるで、変数が遊べる公園のフェンスみたいでしょう?」
「時間は? 時間も変数なの?」
「ええ、時間はもっとも特別な変数ね。過去から未来へ、途切れることなく流れていく。だから、時間はあらゆる実数の値をとることができる『連続的な変数』の代表選手なのよ。」
透は、自分のノートに小さな をたくさん書き込みました。一つ一つの x が、まるで生き物のように、決められた区間の中を自由に駆け回っているように見えました。
「止まっているもの(定数)と、動いているもの(変数)。この二つが組み合わさって、世界の仕組みが数式という物語になっていくのよ。」
私はそう言って、まだ白いページが続く教科書を、そっと閉じました。




