2-12. 無限小、無限大の比較:Comparison of infinitesimals and of infinitely large magnitudes
夜も深まり、灯火の光がノートの上に静かな影を落としています。透は、これまでに学んだ「無限小(0に向かうもの)」と「無限大(どこまでも大きくなるもの)」の性質を思い出していました。
「透、これまでは個々の変数がどこへ行くかを見てきたけれど、それらを『比べる』という知恵を学びましょう。これが『無限小と無限大の比較(Comparison of infinitesimals and of infinitely large magnitudes)』よ。同じ『0に向かう』ものでも、その速さには違いがあるの」
私はノートに二つの無限小、α と β を書きました。
「例えば、α も β も 0 に向かうとき、その比 β/α の極限を考えてみて。これには4つのドラマチックな結末があるわ」
無限小の比較(Orders of infinitesimals)
1. 同位の無限小:
極限が 0 でない定数になる場合。
> 二つは同じくらいの『速さ』で 0 に向かっている。
2. 高位の無限小:
極限が 0 になる場合( β が α に対して高位)。
> β の方が、α よりもずっと速く 0 に消えてしまうの。記号では β = ο(α) と書くこともあるわ。
3. 低位の無限小:
極限が無限大になる場合。
> β の消える速さが、α に追いつけない。
4. 等価な無限小:
極限がぴったり 1 になる場合( β ~ α )。
> さっき見た {sin( x )}/x → 1 がそうね。x が 0 に行くとき、sin( x ) と x は実質的に『同じもの』として扱えるのよ。
「お母さん、無限大の方も同じように比べられるの?」
「ええ、その通りよ、透。無限大 lim X = ∞ と lim Y = ∞ を比べるときも、その比 Y/X を見るの。例えば、指数関数 2^x は、冪関数 x^2 よりも圧倒的に速く無限大へ駆け上がるわ。これを『指数の増加はどんな冪よりも高位である』なんて言ったりするのよ」
「『速さ』を比べることで、複雑な式の支配権がどこにあるかが見えてくるの。例えば、たくさんの項が並んだ式でも、一番『強い』無限大や、一番『遅い』無限小が全体の運命を決めてしまう。まるで、オーケストラの中で一番声の大きな楽器がメロディを支配するようにね」
透は、数式の中に潜む「勢い」の差を感じ取ったようでした。
「ただの 0 や無限じゃなくて、そこには競争があるんだね」
「そう。この『位(Order)』の考え方は、これから学ぶ『テイラー展開』や近似計算で、とても大切な役割を果たすことになるわ。小さなものをどこまで無視していいか、その基準を教えてくれるのよ」




