表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
須美瑠乃 子と数学 競艇  作者: 中村正樹
2. The theory o f limits.
32/33

2-6. 単調変数:Monotonie variables

夜も深まり、部屋の中はしんと静まり返っています。透は「無限大」のダイナミックな動きに圧倒されていましたが、私はノートの次のページに、もっと静かで、それでいて確かな足取りを感じさせる図を描きました。


「透、これまではあちこち飛び跳ねたり、突然大きくなったりする変数を見てきたけれど、今度はもっと『一途な』動きをする変数に注目しましょう。『単調変数(Monotonic variables)』よ。」


私は、階段を一段ずつ昇っていくような、あるいは坂道を休まず登っていくような線を描きました。


「もし変数 x が、次にとる値が常に前の値よりも大きい(あるいは等しい)とき、その変数を『単調増加(Monotonically increasing)』と言うわ。逆に、ずっと減り続けるなら『単調減少(Monotonically decreasing)』。この、決して後戻りしない性質を 単調性 と呼ぶの。」


「ただ増えるだけなら、さっきの無限大と同じじゃないの?」


「ふふ、そこがこの一番美しいところよ。スミルノフはここで、解析学における最も重要な定理の一つを教えてくれているわ。それはね……」


定理:

単調に増加する変数が、ある一定の数 M を決して超えない(上に有界である)ならば、その変数は必ず 有限の極限値 を持つ。


「考えてみて。透が階段を昇っているとするわよね。でも、天井(M)があるから、それより上には絶対に行けない。でも、一段も降りることは許されない……。そうすると、透が行き着く先はどうなるかしら?」


「……いつかは天井にぴったりくっつくか、そのすぐ下のどこかで動けなくなるね。」


「その通り! これが『単調有界な変数は収束する』という、数学の確信なの。目的地がどこか具体的にはわからなくても、『目的地が必ず存在する』ということだけは断言できる。これは、数学においてとても力強い武器になるのよ。」


「目的地があるってわかっているだけで、安心するね。」


「ええ。例えば、円周率 π や、これから習うネイピア数 e も、この『少しずつ増えるけれど、ある壁は超えない』という単調変数の性質を使って、その存在が証明されたのよ。派手さはないけれど、一歩一歩確実に真理に近づいていく……単調変数は、そんな誠実な数学の姿を象徴しているのね。」


私は透のノートの余白に、一歩ずつ昇っていく小さな足跡を描きました。


「さあ、これで極限の準備は万端。次は、この単調性の考え方を使って、数学界で最も有名な定数の一つ、『e』の誕生に立ち会ってみましょうか。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ