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1-23. 三角関数:Trigonometric functions

夜もすっかり更けましたが、透の瞳はまだ輝いています。私はコンパスを取り出し、ノートの白紙に綺麗な円を描きました。


「透、これまではずっと遠くへ伸びていく関数の話だったけれど、今度は『繰り返す』世界へご招待するわ。それが波の正体である『三角関数(Trigonometric functions)』よ。」


私は、円の上に一つの点 P を取り、それが円周上をくるくると回る様子を描き込みました。


「この点 P が円の上を一周するとき、その『高さ』に注目してみて。最初は 0 から始まって、一番高いところ(1)まで行き、また 0 に戻って、今度は一番低いところ(-1)まで沈んで、また 0 に戻る……。この高さの変化を横軸に時間をとって並べると、美しい波の形が現れるの。これが y = sin( x )(正弦関数)よ。」


「本当だ、お椀や滑り台とは違って、同じ形が何度も出てくるね。」


「そう、それが三角関数の最大の特徴、『周期性(Periodicity)』よ。 y = sin( x ) も、その兄弟の y = cos( x )(余弦関数)も、 2π(360度)経つと、また全く同じ冒険を繰り返すの。私たちの心臓の鼓動、海の潮の満ち引き、そして今この部屋を照らしている光の振動も、すべてこのサインとコサインの波で書かれているのよ。」


次に、私は少し尖った不思議な形のグラフを描きました。


「でも、もう一人の兄弟 y = tan( x )(正接関数)は少し暴れん坊なの。ある角度(90度や270度)に近づくと、突然空の彼方まで突き抜けて、反対側の底から戻ってくる。まるで瞬間移動するみたいにね。」


「お母さん、この波の形、音楽の授業で見たことがある気がする。」


「よく気づいたわね。音の高さや音色も、実はこの波の組み合わせなの。どんなに複雑な音も、実はたくさんの純粋な三角関数の波が重なり合ってできている……。数学者がそう発見したとき、世界中の音が数式で書き表せるようになったのよ。」


透は、波打つグラフを指でなぞりながら、世界がリズムを刻んでいることを感じ取ったようです。


「規則正しく繰り返すことの美しさ……。三角関数は、宇宙のメロディを書き留めるための五線譜みたいなものね。」


私は微笑んで、スミルノフの頁にそっと栞を挟みました。


「さあ、今夜はこれで本当におしまい。次は、この波がさらに複雑に重なり合う『逆三角関数』や『関数の組み合わせ』へと進んでいきましょうか。でもそれは、また明日のお楽しみね。」

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