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1-20. 逆関数:Inverse functions

窓の外は深い静寂に包まれ、机の上のランプがスミルノフの開かれた頁を優しく照らしています。透は、さっき学んだ冪関数の「家族」たちの余韻に浸りながら、次のページをめくりました。


「ねえ、透。これまでは、x を決めれば y が決まる、という一方通行のお話をしてきたわね。でも、数学の世界には、その関係を『逆さま』にして眺める魔法があるの。それが次のテーマ、『逆関数(Inverse functions)』よ」


私は、透のノートに一つのシンプルな式を書きました。


** y = x^3


「例えば、この3次の放物線を考えてみて。x が 2 なら y は 8 よね。じゃあ、逆に『 y が 8 になるような x はなあに?』って聞かれたら、どう答える?」


「それは…… 2 だね。 8 の3乗根を計算すればいいんだ」


「その通り! そうやって、y から x を導き出す関係 x = y^(1/3) のことを、元の関数の『逆関数』って呼ぶの。立場を入れ替えて、x を y の関数として見るということね」


私は、座標平面に y = x^2(ただし x ≧ 0)とその逆関数 y = √ x を描いて見せました。


「グラフで見ると、とっても面白いことがわかるわ。元の関数と逆関数のグラフは、あの y = x という『まっすぐな鏡』に対して、ちょうど反対側に映し出したような、鏡合わせの形になるのよ。 x と y の役割をそっくり入れ替えるから、形も入れ替わるのね」


「でも、お母さん。どんな関数でも逆さまにできるの?」


「いいところに気づいたわね、透。実は、逆関数が作れるのは、元の関数が『ずっと増え続ける』か『ずっと減り続ける』ときだけなの。例えば、お椀の形の y = x^2 全体だと、y が 4 になる x は 2 と -2 の二つあるでしょう? 答えが二つあると、逆関数としては困っちゃうの。だから、場所を半分に限定して考える必要があるのよ」


私は透のペンを借りて、ノートの隅に小さな矢印を描きました。


「逆関数を知ることは、ある結果から原因を遡るということ。原因と結果が、一対一の固い絆で結ばれているときだけ、私たちはこの『逆さまの道』を通って、真実に辿り着くことができるのよ」


透は、鏡合わせになった二つの曲線を見つめながら、数字の結びつきには「行き」だけでなく「帰り」の道もあるのだと、不思議な満足感を覚えたようでした。

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