1-14. 等速運動のグラフ:Graph of uniform motion
窓の外では、遠くを走る電車の音が規則正しく響いています。私は透が描いた「一次関数」の直線の上に、小さな模型の車を置きました。
「ねえ、透。さっき学んだ『まっすぐなグラフ』が、現実の世界でどんな風に役に立つか見てみましょう。それが一番シンプルで美しい動きの形、『等速運動(Uniform motion)』のグラフよ。」
私は、横軸に「時間 t」、縦軸に「道のり s」と書きました。
「ある車が、ずっと同じ速さ v で走り続けているとするわね。時間が 1 秒、2 秒……と経つにつれて、走った距離はどうなるかしら?」
「ええと、速さが変わらないなら、同じ分だけ増えていくよね。2倍、3倍って。」
「その通り。それを式にすると s = vt になるわ。もし、最初から少し進んだ場所(s_0)にいたなら、式は s = vt + s_0。これ、さっきの一次関数の式 y = ax + b とそっくりでしょう?」
私はノートに、原点を通る斜めの直線を描きました。
「見て。このグラフの『傾き』こそが、車の『速さ v』なの。もしグラフが急な坂道なら、それは短時間でたくさん進む『速い車』。逆にゆるやかな坂道なら、のんびり進む『遅い車』を表しているのよ。」
私はさらに、もう一つのグラフを描きました。今度は縦軸を「速さ v」にしてみます。
「じゃあ、速さそのものは時間とともにどう変わるかしら? 等速運動なんだから……」
「ずっと変わらない! ずっと横ばいだね。」
「正解! 真横に伸びる直線になるわ。そして、この『速さのグラフ』と横軸に囲まれた長方形の『面積』を計算してみて。縦(速さ v)× 横(時間 t)……それは、車が進んだ『道のり 』になっているの。不思議だと思わない? グラフの形が、そのまま移動した距離を教えてくれるなんて。」
透は、時間と距離、そして速さが、一次関数という一本の糸で固く結ばれていることに驚いたようです。
「お母さん、一次関数って、ただの算数じゃなくて、物の動きそのものなんだね。」
「ええ。この『一定の動き』を基準にして、私たちはもっと複雑な『加速する動き』や『止まる動き』を理解していくのよ。基本がわかれば、世界の見え方が変わるわ。」
夜の静寂の中、透は自分のノートに一本の力強い直線を書き加えました。それは彼にとって、宇宙の法則を書き写した最初の一行になったのかもしれません。




