1-12. 一次関数:Linear functions
窓の外は静かな夜が深まり、透のノートには、数直線や座標軸が誇らしげに並んでいます。
「ねえ、透。関数の世界にはたくさんの種類があるけれど、その中で一番シンプルで、かつ一番大切な基本となる関数があるの。それが『一次関数(Linear functions)』よ」
私はノートに、定規を使って一本のまっすぐな線を描きました。
「一次関数っていうのはね、グラフに描くと必ず『直線』になる関数のこと。式で書くと、こんな形をしているわ」
** y = ax + b
「この a と b には、それぞれ魔法のような役割があるの。まず b を見て。これは x が 0 のときの y の値、つまりグラフが縦の軸( y 軸)を横切る場所を教えてくれるのよ。これを『切片』と呼ぶわ」
透は y 軸の上の点 b を指でなぞりました。「ここがスタート地点なんだね」
「そう、いいところに気づいたわね! そしてもう一つの a。これが一次関数の性格を決める一番大事な数字で、『勾配(Slope)』あるいは『傾き』と呼ばれるものよ。 x が 1 つ進んだときに、y がどれくらい増えるかを表しているの」
私は a の値を変えて、いくつかの線を描き足しました。
「 a が大きいほど坂道は急になり、a が 0 だと真横に平らな道になる。もし a がマイナスなら、右にいくほど下がっていく下り坂になるわ。つまり、この二つの数字 a と b さえわかれば、その直線の正体は完全にわかってしまうのよ」
「一次関数はね、この世界の『一定の変化』を表す言葉なの。例えば、一定の速さで歩くときの道のりや、一定のペースでお湯をためるときの水位。変化の割合がずっと変わらないものは、すべてこの一次関数の美しい直線で描けるのよ」
透は自分で描いた直線を見つめながら、ぽつりと呟きました。
「まっすぐな道は、ずっと先まで予測しやすいね」
「そうね、透。この『まっすぐ』という性質は、これからもっと複雑な曲線を学んでいくとき、その曲線の『ある一瞬』の姿を捉えるための大切なヒントになるの。一番単純なものが、実は一番強力な武器になる。それが数学の面白いところなのよ」
私はスミルノフの重厚な表紙をそっと閉じました。
「さあ、変数から始まった長い旅も、今日はここでおしまい。」




