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1-10. 座標:Coordinates

夜も更けて、家中がしんと静まり返っています。机の上には、さっき描いた一本の数直線。私はそこに、もう一本、垂直に交わる線を書き加えました。


「透、さっきは『線』の上で点を探したけれど、今度はもっと広い『平面』の上で点を探してみましょう。これで主役になるのが『座標(Coordinates)』よ。」


私は、横の線を 軸、縦の線を 軸と名付け、その交点を「O(原点)」と呼びました。


「いい? 透。平面の上のどこかに点 P があるとするわね。その場所を正確に伝えるには、二つの数字が必要なの。まず、点 P から y 軸に平行な線を下ろして x 軸とぶつかった場所の数字 x。そして、x 軸に平行な線を引いて y 軸とぶつかった場所の数字 y。この ( x, y ) というペアが、その点の『住所』になるのよ。」


透は、方眼紙のようなマス目を見つめて言いました。

「地図みたいだね。横にどれくらい行って、縦にどれくらい行くか。」


「その通り! これを考え出したのはデカルトという哲学者で、ベッドで天井を這うハエの位置をどう表すか悩んでいて思いついた、なんていう伝説もあるのよ。この二つの数字 x と y のことを『直交座標(Rectangular coordinates)』、あるいは『デカルト座標』って呼ぶわ。」


私は、座標平面を四つのエリアに区切って見せました。


「右上が第1象限、左上が第2象限……という風に名前がついているの。例えば、左下の第3象限にある点は、x も y もマイナスの数字になるわね。」


「お母さん、座標が決まれば、さっきの『関数』も絵に描けるの?」


「ええ、鋭いわね、透。ある関数 y = f ( x ) があったとき、いろんな x に対して決まる y をペアにして点 ( x, y ) を打っていくの。その点を全部つなげると、関数の正体である『グラフ』が浮かび上がってくるわ。数式という目に見えないルールが、座標という魔法のフィルターを通すことで、美しい曲線という『形』に変わるのよ。」


透は自分の手元のノートに、小さな点をいくつか打ち、それを慎重に線で結び始めました。


「形が見えてきた……!」


「そう。これが解析幾何学の第一歩。数字と形がひとつに溶け合う瞬間よ。さあ、今日はもう遅いから、この座標の続きは夢の中で探検してみてね。」


私はランプを消し、透の頭を優しく撫でました。暗闇の中でも、彼の瞳にはまだ、無限に広がる座標平面の光が見えているようでした。

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